リフレイン 透明な光21 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、僕は何度か

櫻井さんと連絡をとった。

だけどいつも事務的に仕事の話だけ。

 

聞きたかった・・

どうしてあの夜

あの公園を歩いていたのですか?

櫻井さんの家は近いのですか?

僕の部屋はすぐ近くなんですよ。

そう伝えたかった。

 

でも、何もできず、時は過ぎて

書類上の手続きも無事に済み、

後は、寄贈された別荘の、

鍵を渡すだけとなった。

もうこれが最後かもしれない・・

だったら、勇気をだして言ってみよう。

僕は櫻井さんに

事務処理が終わったことを告げ、

別荘に案内できればと、

遠慮がちに話の最後に付け足した。

だが、僕が予想もしなかったことが起きた。

櫻井さんは僕の提案に瞬時に同意してくれ、

おまけに家まで迎えにくるとまで言ってくれた。

僕は動揺を隠すのが精一杯だった。

 

 

当日は快晴だった。

自宅まで迎えに来るという櫻井さんを

どうにか断り、

駅前での待ち合わせにする。

 

前日、眠れなくて

寝坊した僕が駅まで走っていると、

反対側から櫻井さんが手を振るのが見えた。

普段見慣れたスーツ姿とは違い、

お洒落なジャケットに

赤いシャツの櫻井さんが素敵で

走ったせいではない

胸のドキドキが苦しかった。

 

 

 

櫻井さんの運転で伊豆に向かう。

車中では、彼の仕事の話や、

陶芸家の大野紅嵐と

知り合った事件のことなど、

驚くような話も聞けた。

そんな怖い目に遇ったんだ櫻井さん・・

良かった、助けた人がいい人で・・

そこで息子の大野智と知り合ったんだね。

 

でも、まだまだ話足りない・・

もっともっと櫻井さんのこと知りたい・・

 

しかし、高速道路を順調に進んだ車は、

予定よりもだいぶ早く別荘に到着した。

 

財前先生が、

僕に別荘の寄贈を依頼した時に

庭や建物の手を入れた別荘は、

見違えるように綺麗になっていた。

櫻井さんも中を見ながらニコニコしてくる。

 

「すごく良いですね、気に入りました。

紅嵐先生も気に入ると思います。

予想外でした。」

 

櫻井さんが、

満面の笑顔で僕の手を握った。

 

良かった・・・

気に入ってくれて・・

先生、財前先生、

僕が先生から頼まれた仕事が

やっと終わります。

先生、遅くなってごめんなさい。

でも、こんなにも

喜んでくれたからいいよね・・

先生・・僕は、先生の役に立てた?

先生・・

会いたい・

領って呼んでよ・・

おまえはちゃんと仕事をするから、

信用できる・・

お前は偉いぞって・・

僕を褒めてよ・・先生

約束守ったんだから・・

先生・・

 

いきなり、想いが溢れてきて

僕は櫻井さんがいるのに泣いていた。