リフレイン 透明な光9 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日を境に財前先生はとても、優しくなった。

そして、とても機嫌がよかった。

僕もそんな財前先生を見ていると

幸せな気持ちになった。

 

だが、そんな日は長くは続かなかった。

ある日、事務所が閉まる時間に

先生が突然にやってきた。

 

ここに来るのが本当に久しぶりで、

事前に連絡さえなかった

 

「財前先生、どうされましたか?

ご連絡いただければ、

僕が伺いましたのに。」

「いや、今日は東郷に話がある。」

 

 

先生は僕にそっけなく言うと

東郷所長と所長室に入っていった。

僕が先生の担当なのに・・・どうして?

あっ、そうか、しばらくしたら

僕も呼ばれるのかもしれない・・・

自分のデスクで資料を読んで待っていよう。

僕が、資料の束に手をかけた時だった。

所長室のドアが開いて東郷所長が首を出した。

 

「皆、今日はお疲れ様でした。

鍵は私が閉めるから、帰りなさい。」

「えっ・・・・でも財前先生は・・」

「いいんだよ、彼は私と話があるんだ。

二人でゆっくり話をしたいから、

今日は仕事を終わりにして帰りなさい。」

 

僕の言葉に所長はにべもない。

 

「お疲れ様でした。」

「お先に失礼します。」

 

職員が次々に帰っていく。

僕も仕方なく、出した資料を片付けると、

事務所を後にした。

 

 

 

その日何を財前先生が所長に話をしたのか

知るすべはないが、

翌日の所長はかなり疲れた顔をしていた。

 

「東郷先生、だいぶお疲れのようですが?

お休みされたほうがよろしいのでは・・」

 

何時も精力的に仕事をこなしている所長だが、

今日はぼんやりとしている。

大丈夫なのかと心配していたら、自分から帰ると言って

机を整理し始めたので僕は少し安心した。

そう、そう、たまには所長も休まないと、体によくないよ。

しかし、そんな所長をみていたら、

ふと、財前先生は大丈夫だろうかと、急に心配になった。

 

所長が帰ると僕は財前先生の携帯に電話をかけた。

もしかしたら、診察中かもしれないけど、

出なかったらまた掛けよう。

 

しかし、3回目のコールで先生は電話に出た。

 

「先生、領です。」

「どうしたんだ?領。

こんな時間に電話なんか掛けて。」

「すみません、今、大丈夫ですか?」

「大丈夫なければ、電話には出ないぞ。」

 

いつもの先生の口調だった。

僕は少し安心して、東郷所長が疲れていたこと、

夕べ遅かったと聞いたので、先生も大丈夫ですかと聞いた。

 

「そうか、心配してくれたんだな。

ありがとう、領。

いつもわしのことを気遣ってくれて。」

 

どうしたんだろう?先生がこんなこと言うなんて・・

やっぱり何かあったんだ。

そしてそれを東郷所長に相談して・・・

 

「財前先生、何かあったんですか?

僕に力になれることはありませんか?

僕はいつも先生にお世話になるばかりだから

僕も先生のために何かをしたいんです。」

 

僕は電話口で必死に先生を心配していると伝える。

すると、先生は、あははといつものように笑った。

 

「領、何を心配しているんだ?

わしが東郷に昨日相談したのは、大学のことだ。

近々学長選もあるし、経営のこともある。

信頼できる東郷に顧問弁護士を依頼したんだよ。

東郷のやつビビッて悩んでいた。まだ返事をもらっていない

あいつ、態度は大きいが案外ビビリだからな。あはは。」

 

そうだったんだ。

帝都大の顧問弁護士ってすごい話だ。

所長、おめでとう。

 

「財前先生、ありがとうございます。

所長なら絶対にやれますよ。」

僕も嬉しくなっていた。

 

「わしは3日後台湾に行く。

国際腫瘍学会の学会長を務めることになっている。

領、明日の夜、家に来い。

わしの壮行会をしろ。」

「先生も凄いですね。

勿論です、先生。」

 

この時の僕は、財前先生の言葉をただ信じていた。