天使を見た記憶 いつか秒針の合う頃 A4 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

描かれていたのはたしかに俺だった。

俺だけど、今の俺ではない・・・・

遥か遠い日の俺のような気がする。

 

この絵は、贈られても

今の俺には受け取れない・・・

誰にも見せられない。

見せたくない。

誰も知らない俺。

 

唯一知っているのは

あの人だけ。

 

やっとわかった。

馬鹿なのは、あの人じゃなくて、

俺だ。

世界一の大馬鹿野郎だってことが。

 

必死に俺に謝ろうとしていたあの人。

あの人の言葉が真実だったのに。

悪意をもって

あの人を排除しようとする人間の嘘を

俺は信じ、あの人を憎んだ。

あの人を庇うメンバーたちや、

柳田院長は

そんな俺に愛想をつかして離れていった。

そんなことをされても、

俺は自分が正しいと信じていた。

 

俺は、こんなにもあの人に・・・・

貴方に愛されていたのに。

俺のため、

すべては俺のためだった。

それなのに、

自分が悪者になって身を引いた貴方を、

俺は・・

俺は・・・非難し、罵り、拒否した。

 

俺にはこの絵を見る資格がない・・・

俺は絵の前で、

息を止め、拳を固く握りしめていた。

 

 

 

バン、ガラガラガラ。

 

後ろで大きな音がして、

俺は我に帰り、振り向いた。

 

ドアの前に、

貴方が立っていた。

そばに重そうなキャンバスが

倒れていて、

その周りには、

鞄から零れ落ちたのだろう、

絵の具や筆が散乱していた。

 

 

「しょう・・・・

さ、櫻井さん・・

どうして・・ここが・・」

 

目を見開いて驚きを隠せない貴方。

 

櫻井さんと呼ばれるのが、

こんなにも切ないってことを

初めて知った。

 

俺は貴方を大野さんと、

呼んでいたくせに・・・

でも、俺がいまさら、

智君なんて呼べるはずもない・・・

 

「大野さん・・」

 

自分でも驚くほど

掠れた声が出た。

不機嫌な顔になっているのは

わかっていた、

でも、ただ、涙が出てくるのを

こらえただけなんだよ。

怒っている訳じゃない。

俺は、怒れない・・

 

「話があるんだ、

少し時間がある?」

 

俺は、必死に冷静を装った。

 

「靴が無いから、

誰もいないと思ったのに・・・

櫻井さんには

俺のサンダル履けない・・・・から・・か」

 

俺の足元を見つめながら

ぽつりとつぶやく貴方。

そんな貴方の足元は

いつものように裸足だった。