魔王71 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、櫻井さん、

色々とお時間をいただき

感謝します。

お大事に。」

 

二人の刑事は、

事件が解決したせいか、

なんだか楽しそうだったが、

俺は心底疲れはてていた。

何が何だかわからず、

頭がショートしたように

考えがまとまらない。

丸メガネで童顔のサトが、

切れきれのダンスを見せながら

透き通る声で歌う姿と、

引き込まれるような危ない微笑みをみせて、

俺の胸に指を這わせる妖艶な姿の成瀬さんが

同一人物だとは、どうしても思えない。

 

あれがサトだとしたら、

なんて完璧な変装なんだ。

誰も気づけない・・・

そして俺は弄ばれただけなのか?

サトと、カズの関係って?

二人はグルなのか?

でも・・・

悶々と考え続けて一睡もできず・・

俺は朝方になってやっと眠りについた。

 

 

 

「翔ちゃん、翔ちゃん!」

 

肩を揺り動かしながら、

俺の名を呼ぶ声が聞こえる。

うるさいなぁ、

俺は疲れてるんだよ。

 

「ねえ、寝てないで起きてよ。」

「う・ううん・・ねむ・・」

 

眠いんだ。

離せよ。

 

「起きろ!」

「わぁ!な、なんだ?」

 

耳元で大声を出され、

俺は飛び起きた。

 

「翔ちゃん、ほら、服着替えて。

帰るよ。

もう会計は済ませたからさ。

帰ったら、ちゃんとお金返してよ。」

「ああ、雅紀か。

俺は怪我人だぜ、

もう少し優しくできない?」

 

俺の前に居たのは、

喜多川物産同期入社の友人である

相葉雅紀だった。

すでに、俺の荷物を抱えている。

とは言っても、紙袋一つだけど・・

 

「よくなったから、

退院するんだろ?」

「まぁ、そうだけど・・

わかった、わかったよ。

すぐに着替えるよ。」

 

俺は急いで病院着を脱いだ。

 

「それにしても翔ちゃん

どうして怪我なんかしたの?

どこを怪我したの?

まさか、色恋沙汰?

そんなことは絶対にないか・・

大方酔っぱらって階段から落ちたか、

風呂場で転んだかのどっちだろう?」

 

運転しながら、

勝手なことペラペラと話し続ける雅紀。

 

そんな理由で、

どうして腹に切り傷や、刺し傷を負うかよ!

おまけに、怪我の理由は

絶対に無いと断言された色恋沙汰だ。

そう口から出かかったが、

はっと思い出す。

 

「友達にもくれぐれも口外しないように。」

 

課長に言われた言葉。

 

たしかに、刑事事件になりかけたが、

不慮の事故となったんだ。

会社にも内密にしてもらっているんだ。

迂闊に口にしない方がいい。

 

忘れていたけど、

なにしろ、俺はカズに

脅されている身だった。

 

そうだ、

カズはどうしてるんだろう?

井ノ原さんは、

ストームのことを教えてくれないけど。

地獄耳のカズが何も言ってこないのは変だ・・

 

なにかあったのか?

 

「翔ちゃん、もう着くよ。

大丈夫さっきから、

眉間に皺寄せてさ。

痛いの?」

 

雅紀が心配そうに俺を覗き込む。

真剣に悩んでいたから、

難しい顔をしていたらしい。

痛い訳じゃないんだけど。

 

「翔ちゃん、そんなに痛いんじゃ、

夕食食べに行こうかなって思っていたけどさ、

早く休んだほうがいいね。」

「えっ、でも家には何もないし・・」

 

心配してくれるのは嬉しいけどさ・・

 

「じゃあ、翔ちゃん降ろしてから

俺が買い物に行ってくる。

夕ご飯、俺が作ってやるよ。」

「えっ、雅紀作れんの?」

「勿論、中華料理屋の息子だよ。

さっ、着いたから降りて。」

 

俺は、マンションの前で

車から降ろされた。

 

そして、走り去る車を見送った時、

誰かが後ろから俺の肩を叩いた。