リフレイン 透明な光 2 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事務所の前に着いたのは

約束の時間の5分前だった。

よし、ちょうどいいな。

俺は腕時計で時間を確認すると、

ドアを開けた。

 

 

 

 

 

「財前教授の資産ですが、

大きく分けて現金、

有価証券、

貴金属

不動産です。

そのうち不動産については、

都内の自宅、

大阪のマンション、

伊豆の別荘、

長野の山林、

海外にも2か所のマンション・・・・」

 

書類を広げながら、

淀みなく資産項目を

読み上げている相手を

俺は瞬きもせずに見つめていた。

 

紀子さん、

あなたは知っていて

俺をここに寄越したのですか?

 

「櫻井さん、

お疲れなのではないですか?」

 

ぼんやりとしている様子を心配したのか、

声をかけてくる相手。

 

「あっ、大丈夫ですので、

続けてください。」

 

俺は慌てて背筋を伸ばして

椅子に座りなおした。

 

「財前教授から

大野智さんに寄贈されたのは、

不動産のうちの伊豆の別荘と

有価証券の中の○○製薬の株1000株と、

現金が・・・

別荘は3年前に

大規模なリフォームを施していますので・・・・・。」

 

どうして・・・

智・・・俺は・・・

 

「櫻井さん。

やはり今日はここまでにされたほうが

よろしいのではないですか?」

「あっ、いえ・・」

 

相手にしてみれば

俺の様子はかなりおかしいのだろう。

自分をじっと見つめて、

瞬きさえしない。

説明を聞いているのかさえ

怪しいんだからな。

 

 

「失礼します。」

 

応接室のドアがノックされて

若い女性が入ってきた。

 

「お客さま申し訳ございません。

成瀬さん、

急ぎの電話が入っています。」

「そうですか。

櫻井さん、

申し訳ありません、

すぐに戻りますので。」

 

彼は深く頭を下げると

静かに部屋を出て行った。

俺は、力が抜けて

椅子の背に身を預けた。

 

 

 

 

 

 

―今から20分前―

 

 

 

「15時に約束した

櫻井と申しますが・・」

 

受付で名乗った俺が、

通された応接室で会った相手は

少し長めの髪をふんわりと73に分け、

ブラックスーツを

完璧に着こなした、

細身で小柄な男性だった。

年は俺と同じくらいだろうか・・

 

「はじめまして、成瀬と申します。

財前家の財産管理を

させていただいております。

よろしくお願いします。」

 

よく通る声で挨拶をしながら

彼が目の前に差し出した名刺には

弁護士 成瀬領と書かれていた。

 

俺は自分の名刺を出すのも忘れて

ただ茫然と彼の顔を見つめた。

 

彼は智に瓜二つだった。