魔王61 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

広い部屋の真ん中にある

高級そうな革張りのソファの向こう側

人の足がみえる。

争っている?

 

「や・・いや・・」

「離せ、離すんだ・・」

 

成瀬さんと、もう一人誰かの声が・・。

芹沢社長?

 

「成瀬さん!」

「さ、さくらい・・さん」

 

苦しそうな声が

俺の名前を呼んだ。

 

俺が、ソファの向こう側に回りこむと、

激しくもみ合う彼と、

中年の男性が見えた。

ガラステーブルに体がぶつかり、

派手な音を立てる。

芹沢社長の手には、

果物ナイフが握られている。

そのナイフを成瀬さんも

一緒につかんでいた。

 

「う・・う・・さくらいさん」

「離せ!」

 

二人のもみあいがさらに激しくなって、

どちらかの足がソファを蹴り飛ばした。

成瀬さんばかリ見ていた俺は、

それにぶつかり、仰向けに倒れた。

 

「さ、さくらいさん」

 

「う・・痛って・・」

 

強かに後頭部を打ち付けた俺は、

頭を押さえて立ち上げる。

 

くみ敷かれた成瀬さんが、

苦しそうに

ゼイゼイと息を切らしている。

それを見た芹沢社長が、

いきなり、グイッと腕を引き上げた。

 

ナイフを持つ成瀬さんの手が外れたと思ったら、

その手が成瀬さんのほうへ。

 

「あ、危ない」

 

俺は、後ろから芹沢社長の体に

体当たりした。

が、社長が、間一髪体を捻ってよける。

 

「う・・・・」

 

何かが腹にあたり、

その衝撃で俺はドスンと

今度はうつ伏せに床に倒れた。

 

「ひっ・・」

 

薄れていく俺の視界に

ナイフを持って狼狽する社長が、

振り返って逃げようとした瞬間

そのまま、床に倒れるのが映った。

 

「成瀬さん・・・」

 

俺は横にいる彼に

手を伸ばそうとしたが、

彼は俺の手を取ってはくれなかった。

 

「何故?」

 

そんな俺の言葉は、

バタン・・バタバタという

ドアを開け放つ音と

人間の足音にかき消されていた。

俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

カズ

 

 

 

 

さては、サトが何か仕掛けたか?

櫻井翔が加わって大乱闘なんてね。

 

でも、あいつ喧嘩は弱そうだけどな。

 

俺は、天井に視線を向けて呟く。

まあどんな方法でもいいからさ、

なるべく長引かせてくれよ。

ぶつぶつつぶやきながら、

俺は、また作業を再開した。

まだ、4か所目。

サトの送った画像が

微妙に読みにくいから

案外時間が掛かっている。

もう10分が過ぎた、

早く終わらせないと。

計算よりも時間が掛かったことに焦り、

夢中になって作業を進めていた俺は、

いつの間にか部屋に入ってきていた数人の男に

気が付かなったんだ。

 

「そこで何をしている?

お前は何者だ?」

「ど、どうして・・」

 

予想もしなかった事態に

俺はそれしか言葉が出てこなかった。