天使を見た記憶 いつか秒針のあう頃 46 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一体どうしたんだよ、

こいつは。

いつだって

本心なんか表さないし、

口を開けば

天邪鬼なことばかり言うおまえが、

何を決意したんだ。

 

あの人が愛した相手、

櫻井翔は

すでに長年つきあっていた女と

よりを戻して結婚した。

多分子供もいる。

おまえは、

いまさら何を考えているのか?

 

ホテルの窓から見えていた

綺麗な夕陽は

すでに海に沈みこみ、

空に星が見え始めている。

 

俺は、

ただぼんやりと波の音を聞く。

 

「まちゅじゅんはさぁ、

スターだよなぁ。

オーラが違うって・・

俺はただのおじさんってね・・

ふふふ・・」

 

楽しそうに

顔を真っ赤にして

グラスを持ち上げて

乾杯って叫ぶあんた。

酒に弱いくせに

すぐに寝ちゃうくせに・・

饒舌になるんだよ、

回らない呂律でさ・・

 

俺は、

まちゅじゅんじゃないって・・・

 

ライブの後の打ち上げは

いつも楽しそうだった。

本番前、

あんたは普段と変わりない顔をしてたくせに

本当はすごく緊張してたんだ。

だから終わってほっとしたから

酒が旨かったんだろうな。

 

「リーダー、

大野さん、

智・・・・」

 

海に向かって呼んだ。

どこにいったんだよ。

あんたに

こんな知恵があったのか?

あっ・・

誰かが手助けしてる?

 

ふいに浮かんだ考えが、

妙に気になる。

 

誰かが助けているなら、

すべてがうなずける。

 

あんたは馬鹿だったけど、

スターとか、

売れっ子タレントとは

一線を画していたけど、

いや、

自分から身を引いていたけど、

スタッフや、

裏方さんとは仲が良かった。

俺や、

櫻井翔のように、

自分が特別だって

偉ぶることがなかったからな。

 

そいつらの誰かが、

助けているなら、

俺も方向を変えていかないと。

 

あんたがいるはずの島は

ここじゃないかも・・

いくらあんたが好きでも

この島は小さすぎる。

あんたが隠れられない・・

じゃぁどこだ・・

 

俺は、ベッドサイドに置いたタブレットを

立ちあげた。

 

 

 

「お世話になりました。

とてもきれいな海が

堪能できました。」

「松本様。

ぜひまたいらっしゃってくださいませ。

季節が変われば海もかわりますので。」

 

チェックアウトの手続きをする俺に

フロントがにこやかに挨拶する。

俺は、小さなキャリーケースを転がしながら、

じゃあと軽く手を上げた。

 

フェリーがゆっくりと動きだした。

俺は、船室に荷物を置くと、

デッキに立った。

 

あんたが好きだった場所。

多分、もう来ることはない島を、

じっと見つめる。

 

大野さん、

おれはもう当たりを付けたぜ。

あんたは宮古島にいるはず。

 

今はとりあえず帰るけど、

必ず探しにくるから。

あんたにありがとうを言うために、

絶対にね。

 

どんどん小さくなっていく島とは逆に

俺の気持ちは晴れやかだった。

 

だから、

東京で待ち受けているだろう問題を

すっかり忘れていた。