リフレイン 白い雨 114 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

「すみません、今テレビをご覧になっていましたか?」

 

紀子さんの謝罪が聞こえる。

 

皆、今夜が芸術大賞の表彰式だと知っているし、

智を見ているはずだから・・

 

「いえ、大丈夫です。

最優秀新人賞はさっき発表されましたから。」

「えっ、もう?

それで大野さんは?」

「ダメでした・・。

でも、素晴らしい演技だったと

コメントを貰いましたから・・」

「そうですか。

残念でしたね。

でも、評価はされたのですね。

たしかに素晴らしかったですから。

正当な評価をされたならよかった・・・」

 

喜んでいるのがわかる。

この人も智のファンの一人だ。

そんなに素晴らしかった智の演技を

俺は見なかったことを改めて後悔する。

 

「櫻井さん、それでは少しお時間いいですか?」

 

急に声の調子がガラリと変わった。

話難いこと?

まさか、智のこと?

智の主治医が治療を受けにこない智に怒り、

治療を拒否したとか?

 

「何か起きたのですか?

智に何か?」

「違います。

大野さんのことは何も聞いていませんが・・」

 

呆れている?

 

「櫻井國比呂さんのことです。」

 

何をとぼけたことをって響き。

先日救急搬送されたばかり・・

どこで大野智って発想にすり替わるかって・・

 

そうだよ、危ないのは伯父だ。

 

「伯父がどうかしましたか?

まさか・・危篤?」

「そこまでとはいいませんが、

悪いのは事実です。

 

ホスピスに入ることも検討しましたが、」

「えっ、ホスピス?」

「ご自宅に戻られることになりました。」

「だって、教授の家にいましたよね。」

 

そうだ、あのお屋敷で二人仲良く・・

 

「財前先生が付きます。」

「へっ、どういうことですか?」

「教授が最後を看取ると決められました。

仕事はこの先2か月すべてキャンセルしました。」

「仕事をやめて・・・・」

 

2か月休みということは

教授の診断でそれくらいしか持たないってこと・・

嘘だろう・・

早すぎる・・

だってあんなに元気だった・・

 

 

箱根の旅館で会った時の伯父の笑顔が

脳裏に浮かんですぐに消えた。