魔王3 | 青のパラレルワールド物語

青のパラレルワールド物語

青さんが登場する空想小説を書きます。ご本人様とは一切関係ありません。
腐話もありますので苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

必死に頑張って,

総合商社喜多川物産に

入社してから7年。

 

営業部で働いていた俺は、

社内公募された新規事業案にダメ元で応募し、

自分でも信じられないが採用されて

念願の企画部に異動した。

 

企画案を出した俺は当然のことながら、

プロジェクトメンバーとなり、

新しい事務室に引っ越ししたのが

昨日のことだった。

長年やりたかった仕事につけただけでなく、

企画部は社内でも美人が多いことで有名だ。

ミス喜多川もここにいる。

あわよくばミス喜多川を射止めて、

なんてさ、

俺の輝かしい未来が開かれていくはずだった。

 

なのに・・

何故・・

俺の今の状況をだれかわかるように教えてくれ。

この感情の無い口調の男は、誰なんだ?

俺を、

このノーマルな俺を、

勝手に男色?の道に落とそうとした

細身のこいつは誰なんだよ。

 

 

 

「あ、ごめん、邪魔だったね。出るよ。」

 

スマホをいじりながら、黒シャツの男は、

俺の足元に座り込んだままの男に声をかけると、

浴室を出て行った。

俺のほうも、座りこんだ男のほうも見ないまま。

 

ドアが閉まる音を確認すると

座り込んだ男は立ち上がって

俺のほうに近づいてきた。

 

「な、なんだよ・・」

 

俺が尻をずらすようによけると、

男は俺の頭の上にあるシャワーの蛇口を全開に開けた。

 

「わあ~、ちょっと、」

 

頭から湯を浴びて騒ぐ俺を

まるで無視して自分の体を洗いだす男。

片足を浴槽の縁にかけると、

あそこに自分の指を入れ始めた。

何をしているんだ・・・

あっ・・理由が分かった俺は、

恥ずかしさに目を閉じて顔を伏せた。

シャーシャーという音だけが響き渡る浴室。

俺はただ身動きもできず、

じっと男の気配をうかがっていた。

 

キュキュ。

降り注いでいた湯がとまった。

何の音もしない。

俺は、顔を上げて目を開いた。

目に入ったのは、

俺の前に仁王立ちした男。

濡れた髪をかき上げて

俺を見下ろすそいつはぞっとするほど妖艶で、

氷のように冷たい目をしていた。

 

「あ、あんた、な、なんで俺を。」

 

緊張で言葉がうまく出てこない。

しかし、相手からの返事はなかった。

 

そのまま、向きを変えると浴室を出て行った。

 

 

 

10分ほど経ったころか。

 

カチャという音がしてドアが開いた。

そこにはさっきのスマホ男が立っていた。

もう一人はいない。

 

「あんた馬鹿じゃないからわかるだろうけど、

俺たちの事を詮索したり、

今日のことを誰かにしゃべったりしたらさ、

さっきの動画ネットに流すよ。

あんたの個人情報付きでね。

 

じゃあさ、

今から鍵渡すけどさ、

15分間はこの部屋から出ないでね。

あっ、忘れてた。

この部屋あんたのカードで宿泊してるからね。

後で請求がくるよ。

さ・く・ら・い・しょ・う・さん。」

 

言いたいことを一方的に話すと、スマホ男は

ポンと俺を繋いだチェーンのカギを

放り投げた。

 

「グッバイ、」

 

ドアを閉めながら、

手を振るスマホ男の向こう側に

俺をじっと見つめる

もう一人の男が見えた。