読売新聞は9日、西武池袋線とJR武蔵野線が2028年度をめどに初の直通運転を行うことを検討していることを報じました。今回はこれについて考察します。

 

 

 

1.JR武蔵野線・西武池袋線の概要

 JR武蔵野線は、府中本町駅~西船橋駅間を、東京都心をぐるっと囲むように通っています。大半の列車は西船橋駅から京葉線に乗り入れ、海浜幕張や南船橋、舞浜や東京へ直通しています。

 西武池袋線は、池袋駅を起点に所沢、飯能方面を結んでいます。西武秩父線と線路が繋がっており、両線あわせて池袋~知秩父間の広域輸送も担っています。そのため、有料特急列車も設定されています。

 JR武蔵野線には新秋津駅、西武池袋線には秋津駅があり、乗り換えが可能となっていますが、両者は400mほど離れており、4~5分ほど歩く必要があります。

 

 

2.”秘密の線路”を活用

 一見、JR武蔵野線と西武池袋線には何のつながりもなさそうですが、実は両者をつなげる”秘密の線路”が存在しています。JR武蔵野線の新秋津駅の南側から単線の線路が分岐していて、西武池袋線の所沢駅付近で合流しています。営業列車はこの線路を通ることはなく、新造された車両等を輸送する(甲種輸送)貨物列車が主に使用しています。

 今回の試みは、この”秘密の線路”に旅客列車を通し、両者のさらなる利便性向上を図ろうというものです。

 

3.運行形態は?

 具体的な運行形態については、まだ具体的には決まっていないようです。せっかくなので、どのような直通列車が設定されそうか、考えてみたいと思います。

 

 (1)一般列車

 一般列車(普通や急行など、運賃だけで乗れる列車)であれば、大宮駅と所沢駅、飯能駅、西武秩父駅を結ぶ列車が有力でしょう。乗りものニュースの記事にもある通り、同じ埼玉県内でありながら、さいたま市の中心駅である大宮駅と所沢駅、飯能駅、西武秩父駅を一本で結ぶ列車はありません。もし大宮からの直通列車が実現すれば、埼玉県内の東西移動が円滑になるというメリットがあります。また、武蔵野線は千葉方面へ通じているので、海浜幕張や舞浜方面への直通という考え方もできます。

 しかし、一般列車で直通列車を設定するには、課題も少なくありません。

 

①運行本数が多い

 JR武蔵野線は毎時6往復+貨物列車、西武池袋線は日中でも毎時14往復の列車が行き交っており、そこに直通列車を設定するのは簡単なことではありません。また、西武池袋線には東京メトロ・東急・横浜高速鉄道からの直通列車も多数運行されているため、ダイヤ調整はかなり大変なことになるでしょう。

 

②連絡線が単線である

 JRと西武をつなぐ連絡線は単線です。そのため、設定できる列車に限りがあります。

 

③配線上の問題

 配線上の問題もJR,西武双方にあります。まずJR側ですが、連絡線は府中本町駅方面からまっすぐ進めるように敷設されています。JRの大宮や海浜幕張方面~西武池袋線所沢方面を行き来するには、現状の設備だと一度新秋津駅構内で運転停車し、進行方向を変える作業があります。乗り換えなしというメリットはあるのですが、速達性はあまり期待できません。

 また、この連絡線は西武池袋線の所沢駅付近で合流しているのですが、西武線からJR線へ直通する場合、所沢駅付近はホームのない線路を通る必要があり、所沢駅を通過せざるを得ません。(興味のある方は、廃線略図net様の下記リンクもぜひご覧ください)

 

 

 

 一般列車として高頻度運行するのであれば、線路や駅の設備改修が必要になると思われ、2028年までに運行開始するのは難しいのではないかと考えます。

 

(2)有料列車・臨時列車

 そう考えると、特急やS-TRAINのような有料列車、臨時列車を設定する可能性が高いと思われます。車両の乗り入れができるかはさておき、大宮~西武秩父間の直通特急列車や「52席の至福」のようなイベント列車の運行、ベルーナドームで野球開催日に大宮~西武球場前間を直通する臨時列車の設定などが考えられます。

 最初は臨時列車を中心に直通列車を設定し、需要を図ったうえで本格的に直通列車を設定するという流れを考えているのではないかとみています。

 

4.まとめ

 いかがでしたでしょうか。配線やダイヤ上で制約がかなりあるうえ、当記事で触れてはいませんがどちらの車両をどのように充当するのかという問題もあり、一筋縄ではいかない点も多くあります。

 しかし、せっかく線路でつながっているところに着目し、新たな移動需要を喚起しようという取り組みは非常に良いと思います。前述の通り、同じ埼玉県にありながら、西武沿線は大宮から一本で行けない場所が多く、その点が改善されれば非常に画期的なものになるでしょう。また、千葉方面とのアクセスが向上すれば、埼玉~千葉を行き来する新たな需要が生まれる可能性もありそうです。

 今後どのような直通列車が設定されるのか、それにより新しい移動需要がどのように発生するのか、これからも目が離せません!!