テレビ東京の人気企画、「ローカル路線バス乗り継ぎの旅W 第5弾」が5月10日(土)に放送されました。今回はこれについて、出題ポイントと感想を書いていきたいと思います
なお、この記事はネタバレ100%の記事ですので、必ず本編をご覧の上でお読みください。 また、ルート検証については、タビリスの鎌倉先生が丁寧に解説をされていますので、こちらをご覧くださいね
今回のお題は、和歌山県にある名勝「那智の滝」から、愛知県北部にある「犬山城」まで、3泊4日で到達するというものです。例によって、使えるのは一般路線バス(有料道路を経由しないバス)のみで、その他の交通手段は使用禁止、バスがないところは徒歩で切り抜ける必要があります。もちろん、ネット検索も禁止です。
4日目に一行が購入したバスの一日乗車券に「4.10-」と日付があったことから、今回のロケは4/7(月)~4/10(木)に実施されたことが分かりました。これを前提に振り返っていきたいと思います。
1.1日目
那智の滝をスタートしたのは9:44発のバス。最初は素直に新宮へ乗り継けばOKです。最初に乗ったバスに那智勝浦まで乗らず、那智駅で乗り継ぎ、序盤から手堅く攻めていきました。
最初の大きな選択は、新宮にありました。那智の滝から犬山城へ行くうえで、紀伊半島の東海岸沿いを北上するか、内陸に転じて奈良県方面へ進むか、一行は悩みに悩みました。 今年の3月末までは、熊野~松阪間を1本で結ぶ長距離バス(愛称:熊野古道ライン)があったのですが、現在は廃止となっているため、乗り継ぎの難易度が格段に上がりました。
一行は「八木新宮特急」の情報を得て、内陸部を攻めることを考えるも、大和八木行きのバスは9:59発が最終。どう頑張っても1日目に八木新宮特急に乗ることはできない設定となっていました。その点も、新宮での選択をさらに難しくしていたと思います。
そして情報収集をしているうちに、11:15発の熊野市行きのバスを逃してしまいました。ただ、新宮駅には熊野御坊南海バス・奈良交通・三重交通と3社もバス路線が乗り入れており、初見で効率よく情報収集するのは難しく、仕方ない部分もあったと思います。
結局、いったんは海沿いに熊野市へ進むも、先へ進めそうにないと判断して新宮へ引き返すこととなりました。ただ、大和八木へ行くバスはどのみち翌日までないので、熊野市へ行って情報収集したことは無駄ではなかったと思います。新宮で宿泊せず、川湯温泉まで進んでおいたことも、少しでも翌朝の出発を遅くし、休養をとるという点でよかったと思います。
ただ、1日目にほとんど進んでいない状態で17時に移動を終了するというのは、一行には相当なプレッシャーがかかったと思います(^^;;;
2.2日目
(1)八木新宮特急
2日目は川湯温泉から大和八木まで一気に北上しました。八木新宮特急はバス旅初登場ではなく、実はZ第15弾(高野山→潮岬)でちょろっと出てきていたりしますが、本格的に取り上げられたのは今回が初めてでした。奈良県橿原市の大和八木駅と、和歌山県新宮市の新宮駅を結ぶ、有料道路を通らないバス路線では最長の路線としてマニアには有名な路線です。
十津川村を中心とした山村の風景から、街中も走り、景観に富んだルートでした。1日目の川湯温泉宿泊も相まって、2日目昼までは珍しく普通の旅番組の様相を帯びていましたね 私も八木新宮特急、いつか完乗したいです。
(2)大和八木駅でのファインプレーはなぜ生まれたか
大和八木駅での情報収集の結果、明日香村を経由して桜井に至る乗り継ぎルートを見つけました。ここで、発車時刻が近いバスを事前に野口さんが確認していたおかげで、バスにすぐ乗ることができ、乗り継ぎも見事にはまりました。
大和八木から桜井へは徒歩で6kmなので、歩いて行った方が早い可能性もありますが、野口さんのファインプレーにより徒歩を回避し、体力を温存できたことは大きかったと思います。
新宮駅で熊野市行きのバスを乗り逃してしまいましたが、それを機に3人の間で「情報収集の前に、すぐ発車しそうなバスがないかをチェックする」という意識が共有されていました。1日目に失敗していたからこそ生まれたファインプレーといってもよいでしょう。
(3)奈良駅での選択 ~ここでもファインプレー その要因は?~
今回、勝敗を分けるポイントの1つとなったのが、奈良駅での選択でした。京都方面へ進むか、伊賀上野方面へ進むべく石打行きの最終バスに乗るか、奈良で宿泊して情報収集するかー。石打行きの発車時刻が迫る中、一行が出した答えは「石打行きの最終バスに乗る」でした。
京都方面へ進んでいたら、バスが繋がらず失敗していたでしょう。そして、奈良で宿泊してしまった場合も、ゴールはかなり厳しいものとなっていました。なので、石打行きに乗るのが唯一の正解でした。
石打行きの最終バスはJR奈良駅17:17発。石打バス停周辺に宿泊施設はない中、その時間から山間部に分け入るのはものすごく勇気のいることだったと思います。それでも石打行きバスに乗る決断をしたことは、ファインプレーでした。
なぜその決断ができたのかーそれは髙木さんが初めてバス旅に出演した、バス旅W第3弾(愛知・伊良湖岬→長野・善光寺)にあると思います。
このとき、一行は豊橋を経て愛知県東部の山間部へ進もうとするも、山間部は宿泊施設がないことを心配し、バスがまだあったにも関わらず山間部のほうへ進まずに岡崎で宿泊しました。この遅れが、ゴール失敗の遠因となったのです。
髙木さんは恐らく、その記憶があったのでしょう。バスがあるうちは進むー 過去の失敗を教訓として生かした結果だったと思います
また、近年のバス旅では珍しく、2日目夕方まで全く歩かずに来ることができていました。石打から伊賀上野まで歩くことが想定されていましたが、体力を温存できていたことが、決断を後押ししたという面もあったと思います。
3.3・4日目
(1)高速バス活用ルートを見つけた髙木さんの慧眼
3日目、というよりは2日目の夜ですが、上野市駅でバスに関する情報を探していた時、髙木さんが目をつけたのはなんと名古屋行きの高速バスでした。
ローカル路線バスの旅では高速バスは利用禁止ですが、下道を走る区間は利用可能です。伊賀上野と名古屋を結ぶバスは、伊賀上野~関バスセンターまでは名阪国道を走行します。名阪国道は自動車専用道路ですが、通行料は無料で、高速道路ではないため利用可能です。三重県内を東西に移動する場合、山を越えなければならないのですが、ここも見事にクリアしました。
凄かったのは、案内所での聞き込みなしに即座にこの高速バスに目をつけたことです。高速バスと書かれていれば、それだけでスルーしてしまってもおかしくない中、なぜ髙木さんは目をつけることができたのでしょうか。
それは、地図を読み込み、先々のルートを常に予想する髙木さんの姿勢にあると推測します。恐らく、石打へ向かうバスの中で、髙木さんは上野から先、関を経て亀山へ行くルートを候補の1つとして考え、関までは高速道路がないことも突き止めていたのでしょう。でなければ、あれだけ早く名古屋行きの高速バスに目をつけることはできなかったと思います。常に先の一手を考える、髙木さんの慧眼が素晴らしかったです。
(2)阿下喜行きか、桑名行きか
以降も順調に乗り継いだ一行。次に大きな選択を迫られたのは六把野バス停でした。ここから桑名へ向かうか、阿下喜へ向かって岐阜県方面へ進むか。阿下喜行きのバスがすぐに来ましたが、迷った末に阿下喜行きには乗らず、桑名へ向かいました。
迷った理由としては、阿下喜から先のバスの情報がなかったからでしょう。阿下喜から岐阜県へ向かう場合、峠を越えないといけないので、もし長距離の徒歩が発生しようものなら目も当てられません。確実性を考えて桑名へ向かった判断は正しかったと思います。
(3)ポイントは桑名にあり
もし岐阜県方面へ北上するのであれば、桑名から北上するのが最もよかったでしょう。以下の通り繋がります。
候補1
桑名駅14:54、15:05→(桑名市コミュニティバス)→神馬の湯15:52…(徒歩5.8km)…石津南17:02→海津市役所17:24,17:42→岐阜羽島駅18:21
候補2
桑名駅14:54、16:47→今島町17:26…(徒歩7.6km)…石津小学校口18:54→海津市役所19:17,19:30→岐阜羽島駅20:04
4日目
岐阜羽島駅7:57→三ツ柳8:21…(徒歩1.6km)…濃尾大橋口8:47→一宮駅9:07、9:30→岩倉駅9:54、10:13→小牧駅10:37、10:56→味岡駅11:24、12:53→(以降、実際ルート通り)
桑名駅で10分の乗り継ぎを成功させるか、今島町~石津小学校口の7.6kmを1時間28分で踏破できれば、3日目に岐阜羽島駅まで到達でき、4日目が俄然楽になりました。もっと言えば、3日目のうちに一宮まで到達することも可能で、そこまでしていれば圧勝に終わったでしょう。
たとえ乗り継ぎに失敗したとしても、海津市役所の手前にある海津温泉に宿泊できれば、
海津温泉7:30→海津市役所7:44、8:32→岐阜羽島駅9:06、9:23→三ツ柳10:07…(徒歩1.6km)…濃尾大橋口10:37→一宮駅10:56、11:10→岩倉駅11:34、11:51→小牧駅12:12、13:09→味岡駅13:27、13:59→田県神社前駅14:07、15:16→犬山駅16:09、17:00→城前広場17:07
と乗り継いでゴールできたので、チャレンジしてみる価値は大いにあったと思います。
犬山城を目指すうえで、名古屋を突っ切っていくか、名古屋を迂回するように進むかというのも、今回の格r多ポイントでした。髙木さんは3日目の三重県にいる時点で、「名古屋に入り込むと、細かな乗り継ぎがいくつも必要になる」として、名古屋を迂回して岐阜羽島方面から攻められないかということを検討していました。
地図を見ると、岐阜県へまっすぐ北上する道と鉄道(国道258号と養老鉄道)は、いずれも桑名から伸びています。もっと言えば、桑名や岐阜羽島、一宮、さらに言えばゴールの犬山城は木曽川の近くにあります。「木曽川を遡上するように進めないか」という点からみても、見つけられなくもないルートだっただけに、今回唯一のもったいなかった点だと思います。
とはいえ、4日目はほぼ歩きなしでゴールしているので、実際ルートも決して悪いルートではない、という点は補足しておきたいと思います。
(4)名古屋への道のり
結局、桑名から海沿いに名古屋方面を目指した一行は、徒歩とコミュニティバスを織り交ぜて弥富に至りました。コミュニティバスは営業所がないことも多く、情報を得るのが難しいこともある中、近隣住民から津島~名古屋のバス路線の情報を得られたのは幸運でした。この路線はバス旅初登場だったので、その点もよかったです
(5)大都会の難しさ
一行は3日目のうちに名古屋へ到着。しかし、4日目は膨大なバス路線網を前に、乗り継ぎルートや乗り場を見つけるのに苦戦しました。髙木さんが3日目に口にしていた不安が的中してしまった形です。
大都会のバス路線は、本数は充実している代わりに、路線距離が短い路線が多いという特徴があるので、乗り継ぎは意外と難しいです。それでも、比較的早く無事にルートを見つけることができました。3日目までに時間的な”貯金”を作れたこと、乗り場を3人で手分けして探すチームプレーが良かったと思います
4.勝因
今回の勝因は、大きくみて「2日目夕方まで徒歩を回避して体力を温存したこと」「2日目に伊賀上野まで到達したこと」「伊賀上野からの足取りで、早々に高速バスの下道利用に思い至ったこと」の3つだったと思います。
2日目夕方まで歩かずに済んだのは、大和八木駅でのファインプレーあってのことでしたし、2日目に伊賀上野まで到達できたのは、夕方から山間部へ進むという思い切った決断ができたからでした。この2つは、いずれも以前のミスを糧にしてプレーした結果であり、失敗を見事に活かしきったところが光りました。
高速バスの下道利用という発想に至ったのは、地図を隅々まで読み込んでいたことがもたらした結果でした。常に努力を怠らず、失敗を次に活かすーそれが髙木さん参戦後に2勝1敗という好成績につながっていると思います。
5.総評 ~今回の難易度は?~
難易度としては、「やや難」といったところでしょうか。序盤でいきなり大きな選択を迫られること、沿岸部から行っても内陸部から行っても乗り継ぎが決して容易ではなく、大きな川を3つ越えたり大都会の路線バス網を攻略したりと、内容の違う難しい課題が並んでいました。ただ、今回歩いた距離は総合計で30km弱、1回の最長歩行距離も10kmと近年にしては短めだったので、「やや難」としました。
それでも、難しいお題という事は間違いなく、一度のミスが致命的にもなっていました。ミスしてはいけないところでミスをせずに勝ち切った三人に、心から拍手を送りたいです
次回はもっと難しいお題が出される予感もしますが、どのような展開になるでしょうか、楽しみです。