JR西日本は22日、山科駅を京都の東の玄関口として改良工事を施し、工事完成後は関空特急「はるか」を京都発着から山科発着へ延伸することを発表しました。今回はこれについて考察します。

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1.工事の概要

 JR西日本は京都市と連携し、山科駅の改良工事を実施します。駅の北側にホームを1面新設し、さらに引き上げ線や渡り線を設けることで、関空・大阪方面からやってきた電車が山科駅で折り返せるような構造に変更されます。

 工事完了後は、関西空港と京都を結ぶ特急「はるか」の運転区間を東へ1区間延長し、山科発着となります。

 

2.プレスリリースや記事からみる疑問点

 プレスリリースなどを見る限り、「山科駅を京都の東の玄関口、乗り換え拠点として整備し、山科駅で乗り換える人を増やすことで、京都駅の混雑集中を緩和する」ことが目的というように読み取れます。しかし、これについて疑問を抱いた人も多くいるのではないでしょうか。

 ではここで、山科駅の位置関係を確認しておきましょう。

 山科駅は京都駅の1つ東にある駅で、山を隔てて約5km離れています。山科駅近辺や醍醐寺へ行くならともかく、関西空港と京都市中心部を行き来する場合は、山科駅乗換では相当大回りになることが地図から読み取れます。特急「はるか」が山科まで延伸されても、京都駅で乗り換えていた人が山科駅乗換にシフトする動きはごく小規模でしょう。

 

3.特急「はるか」延伸 真の目的は?

 この工事の目的は、山科駅を乗換拠点化することではなく、特急「はるか」を京都発着から山科発着へと延伸することにあります。それでは、なぜここまでの工事をして特急「はるか」を延伸する必要があるのでしょうか。そのカギは、特急「はるか」が通る線路と、発着するホームにあります。

 まず、京都駅の構内図からみていきましょう。(JR西日本おでかけネットから引用)

 京都発着の特急「はるか」は、30番線に発着しています。この30番線は、山陰本線の特急が発着するホームであり、山陰本線と共用で使われています。

 山陰本線は、京都駅を起点に山陰地方を結ぶ路線です。近年は宅地化の進行や、嵯峨嵐山へのアクセス路線ということもあり、特に京都~嵯峨嵐山間は非常に混雑しています。近年利用者が多いということもあり、「嵯峨野線」の愛称がつけられている京都~園部間は2009年に複線化がなされました。しかし、実は京都駅近辺だけは単線のままになっていて、列車の行き違いができません。

 特急「はるか」は、30番線に発着するために、京都駅付近で山陰本線の線路を少しだけ走行します。残念なことに、特急「はるか」が通る部分は単線の部分となっています。

 京都駅から発着する山陰本線の列車は、特急が1時間1本、快速と普通が1時間計5本、そして特急「はるか」が1時間2本となっています。1時間あたり上下各8本の列車がこの”単線”部分を走行しており、山陰本線のダイヤのネックとなっているのです。

 特急「はるか」が山科駅発着となれば、30番線に出入りする必要がなくなり、山陰本線の線路を走る必要もなくなるため、山陰本線のダイヤをより柔軟に設定できるようになり、山陰本線の列車の増発もしやすくなります。特急「はるか」延伸の真の目的は、山陰本線の混雑緩和にあるというわけです。

 

4.山科駅を東の玄関口とすることを強調する理由は?

 それではなぜ、山科駅を京都の東の玄関口とするいう部分がことさらに強調されているのでしょうか。

 例えば、「山科駅の折り返し設備新設工事と特急「はるか」の延伸」という名目であれば、沿線自治体である京都市が整備費用を負担する理由がありません。しかし、「山科駅を京都の東の玄関口として整備する」という名目であれば、京都市が整備費用の一部を負担する理由となります。要は、自治体が事業連携を行う上での大義名分というわけです。

 

5.まとめ

 いかがでしたでしょうか。ポイントとしては

〇山科駅を東の玄関口として整備することよりも、特急「はるか」を山科発着に延伸させることの方が重要である。

〇特急「はるか」を延伸させるのは、山陰本線の線路容量に余裕を持たせ、柔軟なダイヤ設定ができるようにすることで山陰本線の混雑を緩和する

 

という2点になると思います。山陰本線の京都~嵯峨嵐山間は、テレビや新聞で報道されるほど慢性的な混雑が問題となっており、この部分を根本的に解決するための策という見方が一番しっくりきます。

 とはいえ、空港アクセス特急「はるか」が山科発着となることで、山科が京都の副都心の一つとして発展する可能性は十分に秘めています。だからこそ、京都市もJR西日本と連携してこの事業に参画しているのだと思います。

 工事完了は2029年と少し先ですが、特急「はるか」が山科発着となることで山科がどのように変わっていくのか、そして京都駅、とりわけ山陰本線の混雑解消やダイヤにどのような効果が出るのか、注目です。