JR西日本は23日、JR木次線の一部区間について、沿線自治体と公共交通の在り方を考える協議を行う意向を示しました。今回はこれについて考察します。
<チャプター>
1.JR木次線について
2.存廃協議オファーに驚きなし
3.沿線自治体の反応
4.今後について
5.追記 ~地方自治体の心理~
今回は割と思いつくままに書いています。5は完全に推測で書いているので、その点を踏まえてご覧ください。
1.JR木次線について
JR木次線は、島根県松江市の宍道駅と広島県庄原市の備後落合駅を結ぶ路線です。数十年前はは山陰~山陽の連絡ルートとして、有料急行列車が運行されていた時期もありましたが、高速バスや高規格道路の整備により島根~広島間の移動という役目は高速バスやマイカーに譲り、今は地域輸送に特化しています。
南側の出雲横田駅~備後落合駅間は、中国山地を越えていくために急こう配が多く、三段スイッチバックという、いまや珍しい形で山道を上り下りしており、木次線の最大のハイライトとなっています。
坂を上り切った三井野原付近では、眺めがとてもよいです![]()
今回、公共交通の在り方についての協議に挙げられる区間は、この三段スイッチバック区間を含む出雲横田駅~備後落合駅間です。この区間は2022(令和4)年度の輸送密度が54と非常に悪い数値をたたき出しており、芸備線の東城駅~備後落合駅間に次ぐワースト2位となっています。
昨年までは臨時観光列車「奥出雲おろち号」が全線で運行されていましたが、現在運行されている観光列車「あめつち」は、三段スイッチバック区間を擁する出雲横田以南には乗り入れておらず、令和4年度よりさらに利用者が減っている可能性もあります。
この区間についてJR西日本は、「できるだけ早いタイミングで地元に伺い、持続可能な地域交通体系を、前提を置かずに今後の進め方を含めて相談したい」としています。
2.存廃協議オファーに驚きなし
木次線の出雲横田~備後落合間が、公共交通の在り方の協議対象に上がったことには驚きはありません。理由としては、「ワーストの芸備線について、公共交通の在り方協議が始まっていること」「同区間が芸備線に次ぐワースト数値をたたき出していること」「木次線の南端は芸備線と接続しており、芸備線が廃線となると行き止まり路線になる」「豪雪地帯のため冬季は運休、ジャンボタクシー代行輸送で賄われている日が多い」などが挙げられます。
現在、木次線と接続している芸備線が公共交通の在り方について協議がなされていることを踏まえれば、このタイミングで木次線についても将来の在り方を考えるのがよいと思います。木次線や芸備線を、自治体が言うところの「広域鉄道ネットワークを形成する路線だ」というのであれば、なおさらです。
3.沿線自治体の反応
出雲横田~備後落合間の沿線自治体は、島根県奥出雲町と広島県庄原市です。今回のJR西日本の協議の申し出に、各自治体は反発しています。
特に島根県や奥出雲町などは、木次線の存廃に危機感を持っており、これまでもいろいろな取り組みをしていただけに、公共交通の在り方に関する協議を求められたことについては、モヤモヤとした思いを感じているのでしょう。
島根県、広島県ともに、「廃止を前提とした協議には応じられない」としています。
4.今後について
とはいえ、現状を見てみれば、出雲横田~備後落合間の鉄道存続はきわめて難しいと思われます。自治体もそれを感じているからこそ、「協議の場に立てば廃止の方向で話が決まってしまう」と身構えているのでしょう。
かといって、いつまでも将来の交通体系を考えない、と言って協議に応じないというのも、その地域にとって最適な移動手段を構築するという観点からはふさわしくない姿勢だと考えます。
芸備線にしても、木次線にしても、存続が難しそうであれば、鉄路としての廃線は容認する上で、バスやデマンドタクシーなどの他の交通モードへの転換についての支援を最大限に引き出せるよう交渉を進める作戦に転換していくのがよいのではないでしょうか。
木次線は前述の通り、三段スイッチバックという観光資源も持っているため、観光鉄道としての利用というのも一つの手です。既存の路線バスやデマンドタクシーなども含め、どのような交通体系を作り上げるのかーそこをきちんとやっていれば、廃線になったとしても将来その地域にとってプラスになると思うのですが、いかがでしょうか。
5.追記 ~地方自治体の心理~
地域の公共交通の維持確保は、地方自治体の大切な役目ですし、地方自治体がやるべきこと、できることはあります。だからこそ、とある県のように「ローカル線の維持は国とJRの責任だ」と言って、全く何もしないというのは間違っていると思います。
しかし、あえて沿線自治体の言い分をみると、次のような思いがあるように思います。ここからは完全に一個人の推測ということを踏まえてご覧ください。
(1)新たに交通空白地域ができても、代行バスやデマンドタクシーなどの移動手段の確保をする余裕も財源もない。だからローカル線はJRに維持してほしい。
(2)これまで通り、JRは大都市圏の収益を使って、ローカル線の維持をしてほしい。なぜ今まで通りのこのやり方ではいけないのか。(この仕組みがなくなってしまうと、都会と地方の格差がさらに広がってしまう、格差是正という観点でも必要な仕組みなのではないか?)
(3)国はローカル線の存廃について、積極的に関わろうとせず、地域の努力に任せきりにしているが、地域の努力だけではどうしようもない。全部全部地域の問題にして、地域に押し付けないでほしい。
完全に私の推測ですが、こうしたことを思っているのではないかな、と思います。先日、消滅する可能性がある自治体が取り上げられましたが、これについても「人口問題は国全体での問題なのに、地域の問題にすり替えられている」と、批判の声が上がりました。
恐らくローカル線の存廃問題についても、「全部が全部地域の問題にされてしまっている」ことに対して、不満を募らせているのではないかと感じています。
自治体は自治体で、どうしようもなさを感じている、そんな風に思われてなりません。





