西武鉄道は9日、2024年度の鉄道事業設備投資計画を発表しました。この計画の重点テーマの一つ「沿線価値向上」の中で、西武新宿線の特急列車の車両を新型車両に置き換えること、西武新宿線の有料着席サービスの刷新に取り組むことの2点が明言されました。今回はこれについて考察します。

https://www.seiburailway.jp/file.jsp?newsroom/news/file/20240509_setsubitoushi.pdf

 

<チャプター>

1.西武新宿線 有料列車概要

2.特急列車 新型車両置き換え

3.有料着席サービスの刷新とは何か

4.まとめ

 

1.西武新宿線 有料列車概要

 西武新宿線は、西武新宿駅から田無・小平・所沢・狭山市などを経由し、本川越駅までを結ぶ路線です。そんな西武新宿線ですが、有料列車が2種類走っています。

 

(1)特急「小江戸」

 特急「小江戸」は西武新宿~本川越間を通して走り、途中停車駅は高田馬場・東村山・所沢・狭山市となっています。車両は10000系(愛称:ニューレッドアロー)が使用されています。

 特急料金は区間に応じて400~500円です。運行本数は平日は下り26本、上り29本、土休日は上下25往復となっています。川越への観光客の利用もありますが、通勤での利用がメインとなっており、運行本数にも表れています。

 

(2)拝島ライナー

 拝島ライナーは、西武新宿~拝島を結ぶ有料列車で、西武新宿~小平間は西武新宿線、小平~拝島間は西武拝島線を走ります。途中停車駅は高田馬場・小平と小平~拝島間の各駅です。

 使用車両は40000系です。この40000系はデュアルシートとなっており、通常時はロングシート(横並びの車両)、ライナーとして走るときはクロスシートとして運用されます。有料列車だけでなく、急行や準急などの一般列車としても使えるというわけです。

 

 

 

 

 運行本数は朝に西武新宿行きが3本、夕夜間は拝島行きが6本運行されます。朝の西武新宿行きは平日のみの運行ですが、夕夜間の拝島行きは毎日運行されています。ライナーは全車指定席で、運賃とは別に400円の指定席料金が必要です。こちらは完全に沿線住民の都心への通勤や買い物、用務客のために運行されています。

 

2.特急列車 新型車両置き換え

 西武新宿線の有料列車の概要を確認したところで、設備投資計画で明言された2つのプランについて考察します。1つ目は特急「小江戸」の新型車両投入です。

 特急「小江戸」には、前述の通り10000系(ニューレッドアロー)が使用されていますが、デビューしたのは1993(平成5)年と既に車齢30年になっており、車両が古くなってきています。

 池袋線の特急「ちちぶ」「むさし」でも10000系は使用されていましたが、2019(令和元)年に一足先に新型車両001系(通称:ラビュー)が投入され、2020(令和2)年3月をもって10000系は「ちちぶ」「むさし」の運用からは退いています。

 しかし、新宿線については現在も10000系を使用したままになっており、その去就が注目されていましたが、ついに新型車両への置き換えることとなりました。新型車両は「ちちぶ」「むさし」と同じ001系を追加投入するのか、それとも新形式の車両を入れるのかは不明です。

 

3.有料着席サービスの刷新とは何か

 設備投資計画で明言されたもう一つのプランが、「有料着席サービスの刷新」です。具体的なことは設備投資計画では一切言及されていないので、これについては完全に筆者の推測で記していきますが、内容は恐らく「ライナー列車の拡充」にあると思います。

 特急「小江戸」は速くて快適性がありますが、高田馬場~東村山間はノンストップで走るので、途中駅の田無や小平、及び拝島方面へ向かう乗客は利用することができません。

 一方拝島ライナーは、特急「小江戸」が通過する小平に停車します。しかし、「拝島ライナー」は西武新宿~拝島を結んでいるので、東村山・所沢・本川越方面との往来には小平で乗換が必要です。小平駅で「拝島ライナー」と本川越方面の列車と乗り換えられるようなダイヤになってはいますが、乗客とすれば乗り換えが必要というのは不便です。そのため、西武新宿~新所沢・本川越を結ぶライナー列車を新設し、所沢方面への乗客にも着席サービスを受けるチャンスを拡大させるのではないかとみています。

 設備投資計画では、従来車両より省エネ化、低騒音化されている40000系を3編成導入することも明かされています。どの線区に投入されるのかは不明ですが、ライナー列車拡充という目的とあわせて新宿線へ投入されるのではないかとみています。

 ライナーに使用される40000系車両は、前述のとおりデュアルシートなので、ライナーの運行がない日中には一般列車(急行・準急・普通)に充当させることができ、とても効率よく車両運用をすることができます。

 以上の点から、「所沢方面へのライナー列車新設」が、設備投資計画でいわれている「柔軟な運行形態やお客さまの着席機会拡充など、サービス向上を図る」という内容に最も合致すると考えます。

 

4.まとめ

 いかがでしたでしょうか。「有料着席サービスの刷新」の具体的な内容がとても気になりますが、近年どの鉄道事業者も有料列車のサービス拡充を行っていること、拝島ライナーも2018(平成30)年から運行されていて利用が定着していることを踏まえると、少なくとも有料着席サービスを拡充させる内容であることは間違いないでしょう。

 「小江戸」への新型車両投入、有料着席サービスの刷新は、2025年度以降に実施される予定ですが、新型車両による「小江戸」の運行が2026年度中に開始されることを踏まえると、この前後で新しい有料着席サービスも開始されるとみています。

 今後、具体的な内容が明らかになっていくと思われるので、続報が出たらまた考察していきたいと思います。今後の展開に注目です。