2024年3月ダイヤ改正の前後を比較しながら考察するコーナー、今回はJR西日本の京都・滋賀エリア編ということで、山陰本線(嵯峨野線)・湖西線・草津線について取り上げます。

https://www.westjr.co.jp/press/article/items/231215_00_press_daiyakaisei_kinto.pdf

 

1.山陰本線(嵯峨野線)普通列車増発

 日中時間帯に京都~嵯峨嵐山間で普通列車が毎時1本増発されます。これにより、同区間の普通列車の本数は毎時3本(20分間隔)から毎時4本(15分間隔)となります。改正前後のダイヤを比較してみましょう。

 

<下り 亀岡・園部方面>

<上り 京都方面>

 山陰本線の京都~嵯峨嵐山間は、インバウンド需要の高まりもあって、嵐山に向かう観光客の利用が多くみられました。そのため、2017年のダイヤ改正で京都~嵯峨嵐山間の普通列車を増発しました。

https://www.westjr.co.jp/press/article/items/161216_00_keihanshin.pdf

 

 コロナ禍により観光客が激減したため、2021年のダイヤ改正で2017年以前のダイヤに戻されていたのですが、コロナ禍が明け、国内外の観光客が戻ってきて、山陰本線は大混雑を見せるようになり、ホーム上の安全確保も問題となりました。これを受け、2017年改正の体制に戻すこととしたようです。そのため、増発というよりは復便という表現のほうがより正しいでしょう。

 

2.湖西線 スピードアップ

 北陸新幹線の延伸により、特急「サンダーバード」が大阪~敦賀間の運転に短縮され、一部ダイヤも変更されます。しかしその陰で、しれっと普通列車のダイヤも変更されることとなりました。

 下表は改正前後の普通・快速列車の平日ダイヤを掲載しています。(黒:普通 橙:快速 水色:新快速)

 

<下り 近江今津・敦賀方面 改正前>

<下り 近江今津・敦賀方面 改正後>

 

<上り 京都方面 改正前>

<上り 京都方面 改正後>

 

 ここでご注目いただきたいのが、普通列車の所要時間です。区間ごとに見ていくと、京都~堅田間で約2分、堅田~近江舞子で1~2分、近江舞子~近江今津間で約1分程度、所要時間が短くなっていることが分かります。これは土休日も同様です。(快速や特急の通過待ちを行う列車を除く)

 京都~近江今津間では4~6分程度短縮されるので、体感的に「速くなった」と利用者が感じるレベルでの速達化といっていいのではないでしょうか。

 

3.東海道線(琵琶湖線)・草津線 スピードアップ

 草津線では、東海道線(琵琶湖線)との直通列車がスピードアップされます。改正前後の所要時間を比較してみましょう。

 

<下り 草津・京都方面>

<上り 貴生川・柘植方面>

 

 草津線は草津駅(滋賀県草津市)と柘植駅(三重県伊賀市)を結ぶ路線です。基本的には線内完結の普通列車が走っているのですが、朝夕は東海道線(琵琶湖線)と直通し、京都発着で運行される列車も設定されています。(平日朝は網干行きも1本あり)

 今回スピードアップされるのは東海道線~草津線を直通する列車で、東海道線の京都~草津間で所要時間が2分程度短縮されます。今までは東海道線の普通電車と比べ、草津線直通列車は停車駅が同じにも関わらず所要時間が多くかかっていましたが、改正後は東海道線の普通列車と同等の走りを行うこととなります。

 なお、草津線内(草津~柘植)については、全線で1~2分ほど所要時間が短縮される列車もあるものの、現行ダイヤから大きな変更はありません。(理由は後述)

 

4.なぜ湖西線と草津線でスピードアップされるのか

 さて、湖西線と草津線直通列車のスピードアップがなぜなされるのかということに疑問を持った方もいらっしゃるでしょう。理由はずばり、使用車両の変化にあります。

 湖西線や草津線の普通列車に使用される車両は、今までは国鉄時代から活躍している113系・117系という古い車両も充当されていました。しかし、前回のダイヤ改正の直後の昨年4月に、113系・117系は両線の運用から退き、現在はJR世代の車両(221系・223系)が使用されています。

 現行車両は113系・117系と比べて速く走ることができ、最高時速120km/hで走ることが可能になったため、所要時間が短縮される、というわけです。特に湖西線は、関西~北陸の短絡ルートとして、特急が高速で走れるように建設されているので、普通列車のスピードアップの効果も大きくなっています。

 ちなみに、草津線で所要時間の短縮に至らなかった理由は、最高時速が95km/hに抑えられていることと、全区間が単線であり、行き違い待ちが発生するためと考えられます。

 

5.まとめ ~復便とスピードアップ、でも…~

 いかがでしたでしょうか。山陰本線(嵯峨野線)・湖西線・草津線については、増発(復便)やスピードアップが行われ、利便性が向上するといえるのではないでしょうか。それ自体は非常に喜ばしいことなのですが、2点ほど指摘を追記しておこうと思います。

 

(1)山陰本線(嵯峨野線)の亀岡~園部間、湖西線の近江舞子~近江今津間、草津線の草津~貴生川間では、2021年及び2022年のダイヤ改正で、日中の運行本数が毎時2本から1本に半減してしまいました。(草津線は平日のみ)

 今回復便されたのは山陰本線の京都~嵯峨嵐山間のみで、その他の区間は復便されませんでした。山陰本線の混雑はニュースで取り上げられるほど問題になっていましたが、逆に言えばあれくらい利用者が急増しない限りは復便されることはないという見方もでき、今後も厳しい状況が続くことが予想されます。また、車両や人員を削減した関係で、復便したくてもできない状況に陥っている可能性もあります。

 

(2)今回の湖西線を中心とした普通列車のスピードアップは、利便性向上に資するダイヤ改正と言って間違いありません。しかし、JR西日本のダイヤ改正プレスリリースには、スピードアップによる利便性の向上については一切記されていませんでした。

 同日にダイヤ改正される中央西線では名古屋~多治見間(36.2km)で所要時間が1分、名古屋~中津川間(79.9km)で所要時間が3分短縮されるのですが、こちらはスピードアップについて大々的なアピールをしています。

https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000043113.pdf

 

 湖西線では、京都~近江舞子間(37.7km)で2~3分、京都~近江今津間(58.7km)では4~6分程度短縮されるので、中央西線以上にスピードアップが図られるにもかかわらず、何も言及がありませんでした。せっかく利便性が上がる施策を打つのであれば、もっとアピールしても良かったと思います。

 

 ダイヤ改正により山陰本線の混雑緩和はなされるのか、そして利用者増加につながるかー。今後も注目です。