昨年12月15日にJR西日本が発表した、今年3月のダイヤ改正の概要について、今回は中国地方のダイヤ改正を解説します。

https://www.westjr.co.jp/press/article/items/231215_00_press_daiyakaisei_chugoku.pdf

 

※記事中の図については、JR西日本プレスリリースから引用しています。

 

1.特急「やくも」(岡山~出雲市)

(1)特急「やくも」7号の発車時刻が、岡山10:05発から10:13発に変更となります。これにより、のぞみ7号(東京6:51発→岡山10:05着)から新たに乗り換えることができるようになります。これにより、

 また、特急「やくも」10号の発車時刻が繰り下がり、岡山での「のぞみ20号」への乗換時間が19分から11分に短縮されます。この結果、出雲市からは3分、松江からは7分、米子からは13分、京阪神や首都圏への所要時間が短縮されます。

(2)特急「やくも5号」の発車時刻が、岡山9:05発から9:13発に変更となります。これにより、品川からの初発「のぞみ」99号から乗り換えることが可能になります。また、特急「やくも28号」の発車時刻が繰り下がり、岡山で東京行き最終「のぞみ」64号に8分で乗り換えられるようになります。これにより、首都圏から山陰エリアへ旅行した場合の、山陰エリアでの滞在時間が約1時間拡大します。

(3)臨時列車の定期化

 コロナ禍を機に金曜・土休日・多客期のみの運転となっていた臨時「やくも」3往復が、毎日運転の定期列車に復活します。これに伴い停車駅も一部変更となり、根雨・生山には2時間に1本の交互停車となるほか、総社駅に停車する「やくも」が一部変更となります。詳細は記事末尾の特急「やくも」全列車時刻表をご覧ください。

 

(4)新型車両273系投入

 4月6日から、新型車両273系が投入され、特急「やくも」15往復中6往復が新型車両での運転となります。なお、6月までに全列車が新型車両での運転となります。これにより、特急「やくも」の快適性が向上します。

(5)3月16日のダイヤ改正をもって、特急「やくも」は全車指定席に変更され、自由席が廃止されます。

 

2.特急「スーパーはくと」(京都・大阪~鳥取・倉吉 智頭急行線経由)

(1)大阪~鳥取間で1往復増発し、特急「スーパーはくと」は1日7往復から8往復となります。一方で、京都発着の列車は7往復から2往復に大幅縮小され、8往復中6往復は大阪発着で運転されます。2往復を残すことにしたのは、時間帯からして京都~大阪間の通勤利用を取り込むためと思われます。

(2)姫路駅での「スーパーはくと」と「のぞみ」との接続が改善されます。

 スーパーはくとは全般的に時刻変更がなされており、7・8号以外にも、5・9・15・10・12号が、姫路駅での「のぞみ」接続を考慮したダイヤに変更されます。

 

3.特急「スーパーいなば」(岡山~鳥取)、「スーパーまつかぜ」「スーパーおき」時刻変更

 特急「スーパーはくと」「やくも」の時刻変更に伴い、その他の特急列車の時刻が変更となります。

 特急「スーパーいなば」7号、11号の時刻が大きく変わるので注意が必要です。

 こちらについては、時刻が大きく変わる列車が多いのが特徴です。また、この改定により、新山口駅で特急「スーパーおき」3号から「のぞみ」23号博多行き(新山口14:34発)への乗り継ぎ、及び博多12:36発「のぞみ」30号(新山口13:10着)から「スーパーおき」4号へ乗り継ぐことができなくなります。

 

4.赤穂線

 夜間帯の岡山~備前片上間を走る普通列車1往復が、岡山~長船間に短縮されます。これにより、長船~備前片上間が上下1本ずつ減便となります。

 夜間帯で利用が少ない時間帯ということでの減便と思われますが、減便が続く赤穂線でまた減便という形になりました。

5.宇野線

 宇野線の茶屋町~宇野間の列車間隔を見直し、発車時分が分かりやすくなります。日中の運行本数は残念ながらコロナ禍以前(毎時1本)には戻りませんでしたが、運転間隔は少し是正されています。

6.山口線

 朝8時台の新山口→山口方面の列車の時刻が変わります。普通宮野行きの運転時刻が繰り上がり、通勤通学に使いやすくなります。

7.山陽本線

 朝時間帯の下関~小月間の普通列車2往復が、毎日運転から土休日運休(平日のみ運転)に変更されます。通勤通学以外の利用が芳しくなかったためとみられます。

8.考察

(1)陰陽特急(やくも・スーパーはくと)

 今回は特急列車の変更が中心のダイヤ改正となりました。特急「やくも」は岡山駅で新幹線との接続をより意識したダイヤとなっていることが分かります。

 また、特急「スーパーはくと」については、これまではあまり新幹線接続は考慮されておらず、鳥取と京阪神を結ぶ役目に特化していましたが、今回の改正により姫路駅での「のぞみ」との接続を最優先にするダイヤに変更されており、鳥取~首都圏の連絡特急としての役割を強めることとなりそうです。

 「スーパーはくと」は増発される一方で京都発着は2往復にまで減ることになったこと、姫路駅での「のぞみ」との乗り換え時間が、標準乗換時分ぴったりの8分に設定されているところをみても、より首都圏との行き来を重要視するという意思が見て取れます。

 ここで思い起こされるのが、スーパーはくとに関する要望です。以前、自民党鳥取県連では、スーパーはくとを姫路折り返しにして、相生でのぞみと接続する案を提言したことがあります。また、鳥取県はスーパーはくとの増便を昨年要望していました。

 

スーパーはくと姫路止まり、相生乗り換え構想。自民党鳥取県連に提出された陰陽特急再編構想資料を全て公開以前サブチャンネルで取り上げた、スーパーはくとの運行区間を姫路までに短縮し、のぞみを相生に停車させて乗り換えとして、時間短縮を図るという構想について、その立案者であるライトレール社の阿部様より、自民党鳥取県連に提出された資料を提供いただき、それを全面公開します。動画内でも触れておりますが、これは私の発言が一方的で...リンクwww.youtube.com

https://www.jimin-tottori.jp/wordpress/wp-content/uploads/2022/08/%E2%97%AFR4.6.17-%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%E6%9C%80%E7%B5%82%E7%89%88houkoku2206.pdf

 

 

 

 鳥取県としては

・スーパーはくとを増発してほしい

・新幹線との接続を改善して、首都圏や中京圏からのアクセスをよくしたい

・全て姫路折り返しにしてしまうと、JRから智頭急行への車両使用料が減少してしまう恐れがある

 

という思惑があるとみられます。

 ここで補足しておくと、スーパーはくとは、智頭急行の所有車両を使って運行されているため、JR線を走ると車両使用料を智頭急行へ支払う必要があります。智頭急行は鳥取県などの沿線自治体が出資している第三セクターの会社であるため、智頭急行の収入減少は鳥取県にとってダメージとなってしまいます。

 

 一方、JR西日本としては

・特急「スーパーはくと」の利用者を増やしたい。首都圏や中京圏からの乗客の利用も取り込みたい

・特急「スーパーはくと」のJR線乗り入れを減らし、車両使用料を抑えたい

 

という思惑があるとみられます。

 ここで興味深いのは、定例記者会見での「一切その増便に向けて工夫ができないのかということを、もう一度頭をさらにして考えた場合に、今、全便京都[駅]始発になっているものを、そうしたところを若干工夫をする余地まで我々否定する必要はないのかもしれないと」という知事の発言です。

 鳥取県とJR西日本の思惑を照らし合わせながら、お互いの妥協点を探った結果が、今回の改正内容である「スーパーはくとの増発」「京都乗り入れの大幅縮小」「姫路駅での『のぞみ』との接続改善」だったといえるのではないでしょうか。

 

(2)在来線については、ここ数年大規模な減便が続いてきたこともあってか、今回は変更自体が小規模でした。しかし、減便された列車の復便はならず、赤穂線はさらに減便となってしまいました。減便が続いている原因が、JR西日本の経営状況にあるのか、人出不足にあるのか、利用者が実際に減っているのか、どこにあるのかは気になります。

 

 スーパーはくとについては、今回の改正でスタンスが変わることとなりますが、利用の在り方がどう変わるか注目です。