JR関西本線の利用促進を図るため、名古屋~奈良間を直通運行する列車の実証運行を、今年秋に実施予定であることが、1月4日のNHKニュースにより報じられました。今回はこれについてみていきます。

 

 

1.JR関西本線の概要と課題

 JR関西本線は、大阪市のJR難波駅と名古屋市の名古屋駅を結ぶ路線です。全線を直通運行する列車はなく、JR難波~奈良~加茂間(愛称:大和路線)、加茂~亀山間、亀山~名古屋間の3つに運行系統が分断されています。

 JR難波~奈良~加茂間と加茂~亀山間はJR西日本、亀山~名古屋間はJR東海の管轄です。大都市近郊のJR難波~加茂間、亀山~名古屋間は電化されており、通勤通学等の利用も多いですが、真ん中の加茂~亀山間(伊賀エリア)は山間部で沿線人口も少ないことから、非電化となっており、利用者も減少傾向にあることが課題となっています。

 そこで、名古屋~奈良間を直通運行する列車の実証運行の実施を目指すことが、昨年末に沿線自治体(伊賀市、三重県など)とJR西日本が参加した会議で決まりました(詳細は下記記事をどうぞ)

 

 

 このたび、今年秋に名古屋~奈良間の実証運行を実施するめどがたったというわけです。

 

2.実証運行について

 報道によると、名古屋~奈良間の直通列車は、2日以上運行されるということです。ただ、それ以外のことは全く分かっていません。気になる点を挙げてみましょう。

 

(1)JR東海の了承

 名古屋~亀山間はJR東海、亀山~加茂~奈良間はJR西日本の管轄です。実証運行の実施を目指すことを決めた会議には、JR西日本は参加していましたが、JR東海は参加していませんでした。

 JR東海にとっては、亀山以西は管轄外なうえ、名古屋~奈良間に臨時列車を走らせるメリットも薄いため、「JR東海の了承がとれるのか?」という声が多数挙がっていました。

 今回の報道でも、JR東海のことについては触れられていませんが、この秋に実証運行する方向で調整しているということは、了承がとれたものとみられます。

 

(2)具体的な運行スケジュールおよび運転形態

 現時点では、「秋ごろに2日以上運行する」ということしか分かっていません。ここからは私の推測ですが、恐らく連休シーズンに観光客向けに2~3日ほど運転するのではないかとみています。

 また、快速列車として運行されるのか、急行や特急など有料列車として運行されるのかも不明ですし、使用車両についても不明です。特に使用車両については、「充当できる車両があるのか?」という声が多くあがっており、この点をどう解決しようとしているのか気になります。

 

3.実証列車の運行形態を考えてしてみる

 ここでは、運行形態について予想したいと思います。

(1)種別:一部指定席の急行列車 かつて同区間で運行されていた急行「かすが」とほぼ同じ設定にするとみられます。

(2)車両:これもかつての急行「かすが」同様、キハ75系を使用するのではないかと思います。ただキハ75系はJR東海の車両なので、車両をJR西日本が用意するとなると、充当できる車両があるのかは少々懸念されるところです。

(3)停車駅:名古屋・桑名・四日市・亀山・柘植・伊賀上野・奈良 急行「かすが」と全く同じ停車駅にするのではないかとみています。ただ個人的には、観光客を取り込む目的で走らせるならば、関駅と木津駅に停車させるのがよいのではないかと考えています。

 関駅の近くには、東海道五十三次の関宿があり、昔ながらの街道宿らしい景観が保存されているため、観光利用が見込めます。また、木津駅はJR奈良線との乗換駅であり、京都と伊賀方面を行き来する乗客を取り込むために停車させるのがよいのではないかと考えています。

 

4.まとめ

 いかがでしたでしょうか。

 三重県の一見知事は「乗り換えがなくなれば、非常にスムーズになり、関西本線の使い勝手のよさを感じられるようになると思う」とコメントしています。また、沿線自治体の伊賀市も、「伊賀市の中心駅、伊賀上野駅から関西本線を利用すると、乗換が必要になる。だから関西本線の利用が伸びていないのではないか」という問題意識を持っています。

 そのため、名古屋~奈良間の直通列車を運行し、名古屋や奈良と伊賀エリアを直結させることで、通過需要及び伊賀エリアから各地へ往来する利用者を取り込み、関西本線の利用者を増やしたいという意図を持っていました。

 名古屋~奈良間の直通列車の実証運行実施については、JR東海の姿勢と使用車両の2点で、本当に実施できるのか懸念の声が上がっていましたが、この秋に実証運行を実施予定ということで、一定のめどがたったとみていいでしょう。

 あとは、実証運行にあたり、いかに鉄道マニア以外の利用を取り込むかがポイントだと思います。観光客を取り込むのであれば、この直通列車にあわせてどのような観光ルート・プランを作り、伊賀に足を運んでもらうかがカギを握っています。

 まずは実証運行のめどがたったのは好材料です。どのような列車が走るのか、とても気になります!!