JR西日本が12月15日に発表した2024年3月ダイヤ改正の概要、今回は近畿地方のJR線について分析します。

https://www.westjr.co.jp/press/article/items/231215_00_press_daiyakaisei_kinto.pdf

https://www.westjr.co.jp/press/article/items/231215_00_press_daiyakaisei_honsya.pdf

 

※記事中の図については、JR西日本プレスリリースから引用しています。

 

1.関西本線(大和路線)・おおさか東線

(1)特急「らくラクやまと」新設

 平日朝夕時間帯に、新大阪と奈良を結ぶ特急「らくラクやまと」が新設されます。

 この「らくラクやまと」は、おおさか東線ではなく、関西本線(大和路線)経由で運行されます。大阪駅は大阪環状線ホームではなく、「はるか」などが停車する地下ホームから発着します。

 

(2)「うれシート」設定拡大

 2023年10月に開始された有料座席サービス「うれシート」の対象列車が拡大されます。

 現行の「うれシート」は平日のみの設定で、大和路線経由(Q:区間快速)とおおさか東線経由(F:直通快速)が2本ずつ設定されていますが、新たに奈良6:12発、6:42発の直通快速にも「うれシート」が設定されます。

 また、改正後は土休日にも「うれシート」が設定され、大和路線経由(Q:大和路快速)3本、おおさか東線経由(F:直通快速)4本で「うれシート」サービスが展開されます。土休日の「うれシート」は夕方時間帯にも設定されているのが特徴で、奈良から大阪方面へ帰宅する行楽客をターゲットにしているとみられます。

 「うれシート」はサービス開始からわずか2か月ですが、早くもサービスが拡充されることとなり、利用が堅調であることがうかがえます。

 

(3)おおさか東線を走る直通快速全列車が、新たに城北公園通駅に停車します。この城北公園通駅付近は、平日朝に2分間隔で路線バスが行き交うほど居住者が多いエリアということもあり、より乗客を取り込めると判断したとみられます。

 

2.東海道・山陽本線 特急列車関係  ※スーパーはくとについては、中国エリア編で別途解説します。

 

(1)らくラクはりま 運転区間延長

 平日の朝夕に姫路~新大阪間で運行されている特急「らくラクはりま」の運転区間が、網干~京都間に延長されます。

 延長区間については、網干~姫路間は各駅に停車し、新大阪~京都間はノンストップで運行されます。

 

(2)大阪から姫路方面 座席指定車両連結列車の時刻変更

 

 大阪発19:00~21:30の姫路方面行きについては、新快速「Aシート」、特急「スーパーはくと」をあわせると、指定席が設定されている列車が5本から6本に増加となります。

 

(3)特急列車の名称変更

 大阪~米原間を結ぶ特急「びわこエクスプレス」は、「らくラクびわこ」に名称が変更されます。通勤利用に特化した特急については「らくラク~」に名称が統一され、分かりやすくなります。

 

(4)大阪から京都・米原方面 座席指定車両連結列車の時刻変更

 

<現行>

<改正後>

 米原行きの特急「びわこエクスプレス4号」は、改正後は「らくラクびわこ2号」となり、大阪19:20発に変更されます。19時台のサンダーバードが毎時1本に変更となることから、その時間帯を穴埋めするための変更と思われます。

 

3 特急「くろしお」和泉府中停車拡大

 平日夕夜間の和歌山・新宮方面行き特急「くろしお」6本が、新たに和泉府中に停車します。

 現在の「くろしお」は、夜間帯の和歌山止まりの2本が停車するのみとなっていますが、今回の改正で大阪発17時台以降は全て停車となります。「くろしお」の通勤利用を取り込み、客単価の増加と「くろしお」の稼働率を上げることが狙いとみられます。

 

4 嵯峨野線 本数復便

 日中時間帯の嵯峨野線の京都~嵯峨嵐山間に普通列車6往復12本を増発し、普通列車が毎時3本から毎時4本に拡充されます。

 この運行本数は、コロナ禍寸前の2019年時点と同じであり、増発というよりは厳密にいえば復活というほうが正しいです。嵯峨野線ではコロナ禍の影響を受け、普通列車を減便していましたが、インバウンド客を中心に行楽利用が回復したこともあり、激しい混雑が問題となっていました。現在は臨時列車を設定して対処していますが、問題の抜本的解決を図るため、本数を戻すこととなりました。

 

5 桜島線(ゆめ咲線)

 平日朝の通勤時間帯(7:30~8:30頃)の運転本数が、8本から10本に増発されます。

 もともとこの時間帯は通勤利用者が多いのですが、桜島線沿線にあるUSJでは、2024年春に新エリア「ドンキーコング・カントリー」が開業予定であり、USJへ向かう乗客が増える見込みであることから、通勤客と行楽客が混載する朝時間帯の増発に踏み切ったようです。

 

 

6 奈良線 運転区間延長

 京都19:23発の普通宇治行きが、城陽行きに延長されます。

 現行ダイヤでは、京都からJR小倉・新田・城陽へ向かう場合、19:11発の普通城陽行きを逃すと19:35発の快速奈良行きまで待つ必要があり、日中時間帯より運転間隔が空いていますが、これが是正されます。

 

7 その他

(1)関空特急「はるか」は、インバウンド需要の回復等を踏まえ、全列車が定期列車として運行されます。

(2)和歌山駅・和歌山市駅・橋本駅において、JR線どうし及び他社線との接続が改善されます。具体的な内容は不明です。

(3)平日の紀勢本線、和歌山17:50発の普通御坊行きは、和歌山18:00発に変更となります。これにより前後の運転間隔が概ね30分に揃うため、覚えやすく混雑緩和にもつながります。

(4)山陰本線 園部17:26発普通福知山行きは、17:38発に変更となります。京都からの接続時分に余裕を持たせること、園部~福知山間の列車の運転間隔を均等化することが狙いとみられます。

(5)平日の和歌山線、五条5:51発の快速JR難波行きは、普通王寺行きに短縮されます。その代替として、王寺駅で奈良発JR難波行き快速列車に同一ホームで乗り換えることが可能となり、大阪方面への所要時間は短縮されます。

 

8 まとめ

 いかがでしたでしょうか。ここ数年減便の嵐でしたが、今年は少し落ち着いたかな、というところです。ただ、今回の改正も、有料座席サービスの拡充がひときわ目立つ内容でした。

 山陰本線(嵯峨野線)では、京都~嵯峨嵐山間で本数がコロナ禍以前に戻ったものの、それ以外の線区では本数減のままとなりました。裏を返せば、列車に乗り切れずホームに乗客が多く残るくらいの状況にならないと、本数の復便はされないという見方もでき、減便された列車の復便が難しいことを痛感させられます。

 今後、有料座席サービスの利用動向がどう変化するのか、そして山陰本線(嵯峨野線)の混雑が解消に向かうのか、今後も注視するポイントは多くありそうです。