京阪電気鉄道は6月26日、8月26日(土)に実施するダイヤ変更の概要を発表しました。今回はこれについて分析します。

(記事中の画像の一部は、京阪電鉄プレスリリースから引用しています。また時刻表は、乗換案内サイトをもとに自作)

https://www.keihan.co.jp/corporate/release/upload/230626_keihan-railway.pdf

 

 結論からいうと、今回のダイヤ変更の軸は、「有料列車のテコ入れ」「減便」の2点に集約されます。順にみていきましょう。

 

※注:下りは(大阪)淀屋橋・中之島方面、上りは(京都)出町柳方面です。大阪市内のターミナル駅は淀屋橋・北浜・天満橋・京橋駅であり、京橋駅が利用客数第1位、淀屋橋駅が第2位です。また、京都市中心部のターミナル駅は出町柳駅、三条駅、祇園四条駅、七条駅となっています。下の停車駅表も併せてご覧ください。(出典:京阪電鉄サイト)

https://www.keihan.co.jp/traffic/station/pdf/rosenzu.pdf

 

 朝ラッシュ時は下り大阪方向、夕方ラッシュ時は上り京都方向の利用が多くなっています。また、京阪の大半の列車は運賃だけで乗れますが、「ライナー」だけは運賃のほかにライナー料金が別途必要です。

 

1.有料列車「ライナー」の増発及び一部「ライナー」の停車駅追加

(1)平日朝ラッシュ時間帯に樟葉発淀屋橋行き「ライナー」が1本増発されます。また、この増発分を含め、樟葉始発2本、枚方

市始発1本、合計3本が新たに香里園、寝屋川市に停車します。

 

 香里園、寝屋川市は利用者が多く、特急通過駅の中では2位、1位の乗客数を誇っています。その多くは大阪への通勤通学客となっていますが、この2駅を始発とする下り列車はなく、朝ラッシュ時に大阪方面へ行くには、非常に混雑している快速急行や通勤準急に乗るしかありません。それがライナーの新規停車により、この2駅から乗る人の着席チャンスが増えるわけです。

 お金を出してでも座って快適に移動したい人にとっては朗報ですが、一方で寝屋川市駅から京橋駅までは10分少々、香里園駅から淀屋橋駅まででも20分少々なので、どれほどライナー利用へ推移するかは微妙なところです。

 

(2)平日夕ラッシュ時間帯に、淀屋橋発出町柳行き「ライナー」が2本増発されます。なお、淀屋橋21:00発の列車は廃止となります。

 17,18時台の混雑する時間帯での設定のため、特急列車を「ライナー」に置き換えるだけでなく、特急か快速急行をその前後に設定して救済を図ると思われます。

 

(3)平日夕方の下りに、出町柳発淀屋橋行き「ライナー」(出町柳17:55発→淀屋橋18:55着)が1本増発されます。ラッシュと逆方向ではありますが、通勤帰りの客と観光帰りの客の需要を見込んでの設定と思われます。

 

2.一般列車(平日・土休日共通)

(1)上り淀5:06発普通出町柳行きが廃止となります。

(2)下り出町柳5:34発快速急行淀屋橋行きは、出町柳5:36発普通三条行きとなり、三条から特急淀屋橋行きとして運転されます。こう書くと複雑ですが、神宮丸太町駅にも停車する特急に変更すると考えれば分かりやすいでしょう。

(3)下り三条5:52発準急淀屋橋行きは、淀6:21発準急淀屋橋行きに短縮されます。

 

(1)~(3)の情報を踏まえ、変更前後の早朝時間帯のダイヤをみてみましょう。ダイヤは平日のものです。

 

◇下り大阪方面

 

◇上り京都方面

 

 (2)の変更の理由は、その後を走る普通列車を出町柳発から三条発に短縮させることの救済措置と考えられます。こう考えると、出町柳~淀がちょうど1往復分減便することになり、辻褄があいます。

 上りについては、普通列車1本を減便し、その後の列車(現行は淀6:19発)の時刻を変更して運転間隔を調整すると考えられます。

 

(4)上り淀屋橋22:19発準急出町柳行きが、準急淀行きに短縮されます。

(5)下り出町柳23:39発特急枚方市行きが、出町柳23:37発急行淀行きに変更されます。

 

(4)(5)を踏まえ、変更前後の深夜帯のダイヤを考えてみましょう。

 

◇上り京都方面

 

◇下り大阪方面

 

 普通や準急は、丹波橋や三条で特急に追い抜かされる形で接続するのですが、今回短縮される淀屋橋22:19発の準急は、丹波橋、三条のいずれにおいても特急と接続しない列車であり、特急との接続については支障が小さい列車となっています。そのために減便対象とされたのでしょう。

 また、(5)で挙げた今回廃止される特急枚方市行きですが、代替として設定される急行淀行きが、淀で先行する寝屋川市行き普通列車に追いつく形で接続することで、救済措置が図られます(時刻表上の赤い囲み部分)。

 なお、現在出町柳23:36発普通淀行きが設定されていますが、この列車は時刻変更がなされるか、廃止となるでしょう。現に上り列車で淀~出町柳間が1本減便となるので、廃止の可能性が高いとみています。

 

3.一般列車(平日)

(1)快速特急「洛楽」1往復(上り淀屋橋10:00発出町柳行き、下り出町柳17:41発淀屋橋行き)を特急に変更し、混雑緩和を図ります。

 快速特急「洛楽」は停車駅が非常に少ないため速いものの、前後を走る特急や快速急行に、通過駅を利用する客が集中してしまうというデメリットもあります。そのあたりは利用状況を踏まえての変更でしょう。

(2)平日13~14時台について、中之島~枚方市間を走る普通列車毎時2本が、中之島~出町柳間の運行となります。これに伴い、淀屋橋~出町柳間を運行する準急は、毎時4本から2本に減便されます。

 

 

 こうなると、香里園・寝屋川市に停車する優等列車(快速急行+準急)が毎時4本に減便されることになりますが、前述したとおり香里園・寝屋川市は利用者の多い駅であり、果たして毎時4本で捌けるのかという点が懸念されます。

 

(3)7~9時台、15~17時台、19時~20時台についても、列車種別や運転区間、時刻の変更が行われます。具体的な内容については言及されていませんが、恐らくは減便ベースの変更と考えられます。

 

4.一般列車(土休日)

(1)7~10時台の区間急行の一部列車が減便となります。始発駅基準で7~10時台の区間急行は、下り5本、上り6本設定されていますが、何本減便されるかは不明です。

(2)枚方市5:52発普通中之島行きが、5:58発準急淀屋橋行きに変更となります。中之島へ向かう普通列車については、萱島始発の普通列車を別途設定するものと思われます。

 

(3)淀屋橋6:18発急行出町柳行きが、6:21発特急に変更となります。特急の停車しない急行停車駅(伏見稲荷など)の利用が少ないゆえの変更と思われます。

 

5.まとめ

 いかがでしたでしょうか。京阪は2年前に大規模な減便を伴うダイヤ変更を行いました。現在は、コロナ渦による制限が解除され、利用客が少し戻りつつある中ですが、今回のダイヤ変更においても復便する気配はなく、逆にまたしても減便ベースの変更が行われることとなりました。

 SNS上で物議を醸しだしていたのは、平日日中の準急減便についてでした。利用者が多いとされる区間、列車の減便とあって、落胆の声も聞かれました。

 コロナ渦による大幅な減収だけでなく、沿線自治体の人口減少もあり、京阪も苦境に立たされています。それゆえの「有料列車をテコ入れして客単価の増加を図る」「影響を最小限にしつつも列車を減らす」という変更に繋がっているのでしょう。

 明るい見通しがなかなか立ちづらい状況ですが、利用状況が回復することを願うばかりです。