新快速―東海道・山陽本線の主力列車であり、鉄道好きでない人も、お世話になったことがある方は多いのではないでしょうか。今回はこの「新快速」に関するお話です。
新快速が誕生したのは1970年(昭和55年)のこと。誕生から50年ほど経過しています。当初は西明石~京都間での運行で、停車駅も明石・三ノ宮・大阪のみと非常に少なく、本数も1日数往復でしたが、徐々に停車駅や本数は増え、スピードアップも図られて今の形となりました。今や運行範囲は、西は姫路・上郡・播州赤穂、東は米原や近江塩津、さらには敦賀まで乗り入れており、関西の端から端までを駆け抜けています。
そんな新快速は、なぜ人気なのでしょうか。
1.速い、とにかく速い
大事なことなので2回言いました。新快速の魅力は、なんといっても速いことです。所要時間を並行私鉄と比較してみましょう。(日中比)
(1)姫路~三ノ宮
JR新快速 41分 山陽電鉄・阪神 直通特急 61~65分
(2)三ノ宮~大阪(梅田)
JR新快速 21分 阪急神戸線特急 27分 阪神本線特急 31分
(3)大阪市~京都市
JR新快速(大阪~京都 42.8km) 29分 阪急京都線特急(大阪梅田~烏丸 46.8km) 41分
京阪本線(淀屋橋~七条 47.0km) 快速特急「洛楽」 41分 特急 45分
御覧の通り、新快速の速さが際立っていることがわかります。3については、大阪駅と京都駅に比較的近い駅どうしの所要時間を比べています。駅間距離が私鉄のほうが長いですが、表定速度にすると新快速のほうが上であることが分かります。
新快速は、この圧倒的なスピードにより、並行私鉄から乗客を奪うことに成功しました。最高時速130km/h、表定速度(平均の速さ)も80km/h以上と、凄まじいスピードを誇ります。
この速さを支えている点は3点あります。1つは、最高時速130km/hと高速走行が可能な車両が投入されていること。運行当初の新快速は最高時速100km/hでしたが、新型車両が投入されるに伴い、110→120→130とスピードが上がっていきました。
2つ目は、線形がよいことです。大きなカーブが少なく、スピードが出せる区間が多いのが特徴です。
3つ目は、長い複々線区間の存在です。神戸・大阪・京都を挟む、西明石~草津間は複々線となっていて、線路が1方向当たり2本、合計4本通っています。2本のうち1本は主に普通や快速が走る線路、もう1本は新快速や有料特急が走る線路に分かれています。
新快速は快速や普通と別の線路を走るので、快速や普通の影響を受けずに高速走行を行うことができます。新快速が快速や普通を走りながらごぼう抜きするのは、なかなか爽快です
2.運賃だけで乗れる乗り得
凄まじい速さの新快速は、なんと有料特急と同等もしくはそれ以上のスピードで走っています。それでいて、運賃だけで乗車できるので、非常に乗り得な列車となっています。というわけで、青春18きっぷでも乗れるので、乗り鉄にも大人気、18きっぷシーズン以外でも常に多くの人が利用しています。私も何度も新快速にはお世話になりました。
3.車内が快適
車内は転換クロスシートとなっており、列車の進行方向に向かって座ることができます。また、背もたれを動かすことができ、座席の向きを変えることもできます。最近では、「Aシート」といわれる指定席車両を連結した列車も1日2往復設定されており、快適性が向上しています。ただし、Aシートを利用する場合は、指定券840円が別途必要です。
4.本数が多い
姫路~三ノ宮~大阪~京都(~山科)間は、新快速が毎時4本、15分間隔で運行されています。速達列車の割には高頻度で運行されていることも、魅力の一つです。
5.課題
こうしたことから、乗り鉄だけでなく沿線民の支持を集めている新快速ですが、近年は運行規模が若干縮小されています。
2015年には、日中に毎時1本設定されていた播州赤穂発着の新快速が、姫路発着に短縮されました。播州赤穂~姫路間は、普通列車を別途設定したため、同区間の減便はなかったのですが、当時沿線自治体からは、新快速乗り入れの継続を求める声が上がりました。
2021年秋のダイヤ見直しでは、北陸本線の長浜発着の新快速が米原発着に短縮され、長浜へ乗り入れる新快速が毎時2本から1本に減りました。このときも、滋賀県や長浜市からは撤回を求める声が出ました。
そして、先日実施された2022年3月のダイヤ改正では、その米原発着の新快速が草津発着に短縮されました。京阪神のダイヤ改正分析でも触れましたが、わずか半年で長浜発着から草津発着に短縮されてしまったわけです。
それでも、新快速は多くの利用者を乗せて、今日も走っています。快速列車の一種でありながら、いまや「新快速」はJR西日本の看板列車、ブランドとなっています。これからも新快速は、JR西日本の屋台骨となり、関西地区の輸送を支えていくことでしょう。