1.まえがき

 上野と仙台(厳密には日暮里~岩沼)を結ぶ常磐線。東京から土浦・水戸・日立などの茨城県各地や、いわきや相馬などの福島県浜通りエリアのアクセス路線です。

 常磐線の上野~水戸・勝田間は、普通列車(上野~取手間快速)と特急列車が運行されています。 この区間は特急が毎時2本と高頻度に走っており、普通列車はその特急を1,2回待避するため、大半の普通列車は同区間を1時間50分台、列車によっては2時間以上かかってしまいます。

 今回ご紹介する列車は、水戸8:13発→上野10:00着の普通列車354Mです。 この354M、特急が毎時2本運行されている時間帯にありながら、水戸から上野までなんと1度も特急に追い抜かされず、上野に先着してしまうのです!!

 普通列車の最速列車は、上野~水戸間117.5kmを下り最速1時間47分、上りは最速1時間46分で走破します。下りの最速列車は上野発の一番列車(上野5:10→水戸6:58)、上りの最速列車は水戸からの上野行き最終列車(水戸21:56→上野23:42)となっています。

 1時間40分台で走り切るのは、上記の最速2本と354Mの合計3本のみ。しかし最速の2本は、特急が運行されていない時間帯の列車です。   

 この354Mのすごいところは、特急が運行されている時間帯に関わらず、水戸~上野間を1時間47分と、最速に近い速さで走破していることです。

 

2.すごい普通列車の走りっぷりを検証する

 354Mと前後の特急の時刻を下に示します。なお、このダイヤは3月11日までのものですのでお気を付けください。

 

ひたち4号  水戸8:10発→友部(通過) →石岡(通過) →土浦8:39着、8:39発→柏(通過)  →上野 9:31着

354M普通    水戸8:13発 →友部8:28発 →石岡8:42発  →土浦8:56着、  8:57発→ 柏9:32発  →上野10:00着

ときわ64号   水戸8:48発→友部8:59発→石岡9:10発→土浦9:19着、9:20発→柏9:42発→上野10:04着

474M普通    水戸21:56発→友部22:10発→石岡22:24発→土浦22:38着、22:39発→柏23:14発→上野23:42着   ※上り最速普通列車

 

 354Mが水戸を発車するのは8:13。特急ひたち4号の発車3分後に、特急の後を追うように走っていきます。次の特急は水戸8:48発の「ときわ64号」で、354Mは水戸発車時点で35分のリードを持っています。

 常磐線は普通列車でも一部で130km/h近く出すので、普通列車の中ではかなりのスプリンターです。この354Mも普通列車ながら飛ばしていきます。

 しかし、最初は35分あった「ときわ64号」からのリードも、土浦発車時点で23分、柏発車時点で10分と、じわじわ追い上げられます。常磐線の特急も在来特急屈指のスプリンターなのです。

 それでも、354Mは上野まで特急から逃げ切ります。上野到着時点でときわ64号からのリードはわずか4分。何とか逃げ切れるという感じですねニコニコ 

 上り最速普通列車の時刻も掲載しておりますが、この列車と比較しても遜色ありませんね。

 

3.なぜ354Mは特急から逃げきれるのか

 理由は大きく3つあります。

 1つ目は、常磐線の普通列車に使用されるE531系が、最高時速130km/hと高速で走ることができる点です。2005年にデビューしたこのE531系により、常磐線の普通列車のスピードアップが図られています。

 2つ目は、後続の特急からのリードが大きいことです。日中の上り普通列車の場合、リードは23~27分となっています。ほぼ最速の普通列車である354Mでも、特急からのリードが30分以上縮まっているので、リードが30分未満だと逃げ切れず、途中駅で待避ということになります。

 3つ目は、土浦で長時間停車をしないことです。土浦は運行拠点の1つになっていて、特急の待避がない場合でも、運転間隔調整や車両の連結切り離しなどで5分以上長時間停車する列車も少なくありません。しかし、354Mは土浦でも停車時間1分と、すぐに発車しています。もし5分以上停車していれば、上野まで逃げ切ることはできないでしょう。

 

4.ダイヤ改正後の354M

  ダイヤ改正後も水戸発8:13の列車は存在しますが、列車番号は1152Mとなり、品川行きに延長されます。そして土浦駅で12分停車するようになり、特急にも抜かされて上野着は10:23(土休日は10:21)と、2時間以上かかる列車になってしまいます。

 しかしこの1152Mは、土浦で土浦始発の特別快速品川行き(3150M)に乗り換えられることができます。

 

1152M普通→3150M特別快速

 水戸8:13発 →友部8:28発 →石岡8:43発  →土浦8:58着(乗り換え)9:00発→ 柏9:32発  →上野9:57着→東京10:04着→品川10:15着(土休日は10:14着)

 なんと、上野まで1時間43分で到達できるようになり、これが特急を使わないで水戸から上野まで行く最速の乗り継ぎ、ということになります。2本の列車のリレーにより、さらに逃げ足が速くなりますねニコニコ

 

 いかがでしたでしょうか。今回は少しヲタクっぽい記事でしたが、面白い列車があればそうした紹介もしていけたらと思いますので、よろしくお願いします。