JRの3月ダイヤ改正の分析、ラストはJR西日本 山陰エリアの分析です。

211217_05_yonago.pdf (westjr.co.jp)

 

1.特急列車関係

(1)特急「スーパーはくと」1往復(6号・9号)、特急「やくも」3往復(12・13・16・17・28・29号)が臨時化され、金曜・土休日・多客期のみの運行となります。なお、「やくも」については、この臨時化に伴い、一部列車で停車駅が変更となります。

(2)スーパーおき1号の浜田~新山口間の所要時間が短縮されます。新山口では「のぞみ3号」への乗り継ぎが可能となり、小倉や博多へ14分早く到達できるようになります。これ自体は非常にいい改正なのですが、普通列車の減便による行き違い待ちが減少したことで速達化された面もあるので、手放しでは喜べません。

 

2.普通列車関係

山陰本線・境線で以下のとおり運行本数が減少します。山陰本線は浜坂~益田間と、鳥取・島根の全域で減便となります。

(図はJR西日本プレスリリースから引用)

 

 ご覧の通り、本数が減少します。境線は毎時1本確保されていましたが、改正後は2時間運行がない時間帯が発生します。山陰本線の浜坂~鳥取も毎時1本体制が崩れ、2時間以上列車の運行がない時間帯があります。こうしてみると山陰本線の減便が目立ちますあせるあせるあせる

 

3.まとめと考察

 今回のダイヤ改正では、山陰の広い範囲で減便となりました。これに伴い、鳥取~米子を結ぶ快速「とっとりライナー」は平日1往復、土休日は上り1本までに減り、米子~益田を結ぶ快速「アクアライナー」は全廃となってしまいました。

 これにより懸念されるのが、マイカーとの競争力の低下です。島根県の浜田と出雲市の間を移動する場合を例に考えてみます。

(マイカーの所要時間とガソリン消費量はナビタイムの検索結果による、ガソリン代は2月28日の全国平均レギュラーガソリン代172.8円を用いて算出)

 

普通:約120分(列車により大きく変動あり) 運賃:1,520円

快速:約95~100分(速達タイプ) 運賃:1,520円

特急:約65~80分 運賃・自由席特急料金合計:2,720円

マイカー(山陰自動車道経由):約1時間55分 ETC高速料金410円+ガソリン代172.8×6.64ℓ=1,567円

 

 所要時間は特急が圧倒していますが、料金的にはマイカーより優勢とはいえません。所要時間と料金を考えると、マイカーに最も対抗できるのは快速列車であるといえるでしょう。

 しかし、快速アクアライナーは今回の改正により廃止され、普通と特急しか走らなくなります。同区間は普通列車で約2時間、乗り継ぎが悪いとさらに数十分もかかるため、マイカーの対抗馬としては弱いです。

 また、山陰本線と並行して、高規格道路である山陰自動車道の整備が現在も進んでいます。今後山陰自動車道が新規開通していくにつれ、マイカーがさらに優勢となることが見込まれ、鉄道がマイカーに対抗できる余地がなくなることが懸念されます。

 山陰本線は2000年代初頭に、島根県や鳥取県、沿線自治体も費用を負担し、山陰本線の高速化事業を実施したことで、両県の東西の移動の利便性が大きく向上しました。これにより、特急だけでなく快速もスピードアップが図られ、特急を補填する役割、マイカーへの対抗馬としての役割を果たしてきました。

 快速を減便、廃止して普通列車だけにしたのは、普通列車の本数をできる限り守るためと思われますが、マイカーへの対抗馬を失うことになり、その代償は決して小さくありません。今回の改正は、JR西日本にとって苦渋の決断だったといえるでしょう。