「コレステロール」 コレステロールは人体に必要なもの
次に取り上げるのは「コレステロール」の問題です。
「コレステロールは良くないものなので減らさなければいけない」ということが言われ始めたのが1950年代、戦後すぐのことですからもうすでに70年が過ぎています。
70年もウソが続くわけはないので、2015年には厚生労働省が「食事におけるコレステロールの規制は撤廃する」というステートメント(声明)を出しています。
それでも70年間にわたって「コレステロールは悪い」と言い続けてきたものですから、一度くらいの厚生労働省の発表では国民全体に伝わるわけはありません。だから
今でもコレステロールを気にしている人もいますし、医師でもあまり勉強をしていない人だといまだにコレステロールが悪いと思っていたりもします。
歴史を振り返ると、戦後すぐに欧米からコレステロールに関するデータが入ってきます。そのデータは横軸にコレステロールの量、縦軸に血管障害や心臓障害といったものの頻度が書いてあるものでした。これによると血中のコレステロールがだいたい150から400ぐらいに設定されていました。
実は、日本人はいくらコレステロールを摂取しても280ぐらいまでしかいかないのですが、北米やさらに北の国では400ぐらいの人もいるのです。
そして、このデータでは「コレステロール値の低いほうが血管障害などが少ない 」となっていました。それで医師でもアホな人がそのグラフをかざして「コレステロールは少ないほうがいい 」と言い出したのです。
そのために、動物の油だとか卵に多く含まれているコレステロールを控えようという運動が始まりました。
こういう問題が提起されたときにはいつもそうなのですが、そういった不合理なことを社会に勧める側はある事実を隠します。
では、そのときに何を隠したのかというと「コレステロールというのは人間にとって非常に大切なものだ」ということでした。
人間の細胞の外側の膜はほとんどがコレステロールでできています。脳の中にはコレステロールが35%もあって、頭の機能を正常に保つためにはコレステロールが大量に必要になるのです。
ところが食品から摂取できるコレステロールはそれほど多くはなくて、毎日卵を20個食べるとか、そのくらいしないと人間に必要なコレステロールを補給することはできません。食品から摂取できるのはだいたい必要分の20%だと言われます。
しかし、どうしても人間に必要なものですから残りの80%程度のコレステロールは体内で合成されます。主に肝臓でつくられるのですが大変に複雑な化合物で、つくるのが大変なのです。
そのときに食品としてコレステロールが入ってくるとその分肝臓は働かなくていいから非常に楽になります。
また、コレステロールを摂ることで肝臓の機能を節約できますから、お酒を呑む人ならばもっと多くの量を呑めるということになります。
『フェイクニュースを見破る 武器としての理系思考』武田邦彦 (ビジネス社刊) R060619 P133