留置場から拘置所、拘置所から刑務所、刑務所から刑務所など拘禁中や受刑中は移送されるケースがある。
私は移送を5回経験した。
その中でも一番きつかった移送のお話し。
留置場から拘置所、拘置所から刑務所のケースでは、ほぼ護送車での移動。
5回目の移送も護送車だと当日まで信じ込んでた。
移送されること知るのは基本前日、引き込みと言って前日に移送者用の居室で待機する。
移送は私服に着替えるのだが、数年間洗濯もしていない私服の匂いは強烈
当日は、手錠に腰縄でオヤジから「手錠隠すカバーいるか?」と。
護送車だと思い込んでた私と一緒に移送されるメンツは「必要ないっす」と。
刑務所を出発、その時は護送車で長旅になるなと感じてた。
ところが護送車はものの10分程度で停車、最寄りの駅に着き「ハイ降りろ」
思わず連行のオヤジに「ここで降りるんっすか?」
オヤジ達は当然のように「当たり前ったい、JRで移送になるけん」と。
移送の際、連れがいるとその連れと腰縄が繋がってる。
仕方なく降りたが、受刑者3名が腰縄で繋がっているので歩きにくいのなんのって
改札どうやって通るの?と。
つーか、手錠丸出しなんっすけど
オヤジは「だけん言ったろうが、手錠隠すカバーいらんね?って」
あのー。。。移送手段教えてくれてれば
しかも。。。バリバリ通勤ラッシュですが?
時間帯間違ってません?
どー見ても手錠に腰縄はサラリーマンに溶け込めないっすよ
そのまま通勤ラッシュの博多駅を通過、一般の方々はもちろん受刑者がその中を移送中とは知らず、繋がれた腰縄の真ん中を通過する方も
その時のリアクションは想像とおり
こちらは手錠に腰縄で謝るのみ
新幹線に乗り込む際も、手錠丸出しの人間が乗り込めば視線は当然。。。
一般の方からすれば、極悪人に感じるだろうと。
一応、指定席でしたが、誰かがトイレに行きたいと言えば腰縄で繋がれた3名に連行のオヤジ達が同時に移動。。。
完全にさらし者
娑婆の匂い、音、タバコの香り、何もかもがつきかった。
オヤジが途中で食べたい弁当あるか?って。
久しぶりの娑婆弁当に喜んだのもつかの間、ムショの薄味に慣れ過ぎて食べきれない
途中で連行のオヤジは隣で寝るし。
ソンナニシンヨウシナイデネ
と心の叫び。
ただ久しぶりに見る娑婆の景色はなんとも言えない気持ちになった。
本当に別世界に感じた。
なんて言うか、娑婆の時間がスローモーションのように感じ、娑婆で生きてる人々が映画のスクリーン越しに見えている感じだった。
たった2年程度でこの感覚、無期懲役など本当に浦島太郎だろうななんて思ったりした。
そして移送先となるムショの最寄り駅に到着、そこからは護送車でムショへ。
不思議とムショに着いた時ホッとした。
本当にホッとした。
たかが2年程度でムショ暮らしが染み付いてた。
それが良いのか悪いのか。
その時感じた。
俺、まだ娑婆に出る覚悟ないんだって。
娑婆に戻ることが怖いんだって。
満期を1年切った時だった。
出所後の未来と向き合うことをしてなかった。
向き合うことに目を背けてた。
その移送で思った。
出所後の未来に向き合わなきゃって。
待ってる待ち人たちのためにと。
本気で思った。
あれから10年近くの時間が流れた。
移送のことは鮮明に覚えてる。
二度と経験はしたくはないが、私には良い経験だった。
なんか最近疲れてるからムショのこと色々思い出すのかな。笑。
今後、刑務所に入る予定の方は、移送の際は手錠カバーをお忘れなく
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