はいどんも。
今日はディズニーの原点である短編映画シリーズ語り。
「ミッキー・マウスシリーズ」や「ドナルド・ダックシリーズ」等と並ぶディズニーの代表的な短編作品群である「シリー・シンフォニー」シリーズの登場です。
ディズニーは元々短編カートゥーンが主戦場の小さな映画制作会社でした。
その中で、キャラクターを中心として展開したミッキーやドナルドのシリーズとは違い、音楽とアニメーションを精密に融合させた単発作品のシリーズとしてスタートしたのがシリー・シンフォニーです。
ウォルトの友人であった音楽クリエイターのカール・スターリングが提案した「アニメーションに合わせた音楽」ではなく「音楽に合わせたアニメーション」という発想から始まった今シリーズは独自の発展を遂げていき、ウォルトとディズニースタジオにとって、新しいアイデアや技術・手法等を試す最良の実験の場として機能することになります。
その過程の中で、【初のカラーアニメーション】や【マルチプレーンカメラの導入】【ドナルドダックの誕生】等映画界に様々な影響を与えながら多数の名作を生み出していきました。
このシリーズでのディズニーの実験の数々は、やがて初の長編アニメーション映画制作という偉業へ直接結びついていく事になります。
アカデミー賞受賞作品もとても多く、シリー・シンフォニーシリーズとしては実に7本の作品が受賞を成し遂げました。
今回はそんな作品群の中から、シリーズ三本目のアカデミー賞受賞作品となったこちらの一本について語っていきます。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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うさぎとかめ
(原題:The Tortoise and the Hare)
1935年
監督
ウィルフレッド・ジャクソン
データ
1935年に公開されたシリー・シンフォニーシリーズ第49作目(諸説により前後あり)となる短編アニメーション映画。
同名のイソップ童話を原作とした教訓的童話コメディ。
日本を含め世界的に有名なうさぎとかめの徒競争を描いた物語で、基本的なプロットは原作を踏襲していますが、細かなオリジナル要素も多分に盛り込まれています
監督は後に『シンデレラ』『ふしぎの国のアリス』『ピーター・パン』 『わんわん物語』等錚々たる作品の監督を務めることになるウィルフレッド・ジャクソン。
ファンタジアの有名な【禿山の一夜〜アヴェ・マリア】のシーンを手掛けた事でも知られる人物です。
ストーリー制作はディズニー初期アニメーターの一人ラリー・クレモンズ。「ジャングル・ブック」や「おしゃれキャット」「ビアンカの大冒険」等のストーリークリエイターとしても活躍しました。
音楽は「白雪姫」「ダンボ」「バンビ」等の錚々たるディズニーミュージックを手掛け、名曲「狼なんかこわくない」を手掛けた事でも知られるフランク・チャーチル。
マックス(うさぎ)役にはネッド・ノートン。
トビー(かめ)役にエディ・ホールデン。
他にもスターター役でグーフィーの専属声優ピント・コルヴィグ、バニーガールズ役でミニーの専属声優マーセリット・ガーナーも出演をしています。
シンプルな童話コメディながらも一般評価・批判家レビュー共に高評価を獲得し、見事シリー・シンフォニーシリーズ3作目となるアカデミー賞も受賞しました。
さらに【うさぎとかめ】の物語を世界の子供達に広く浸透させることに貢献し、今作及び登場人物であるうさぎのマックスは、後に一世を風靡するワーナー・ブラザーズの人気シリーズ「ルーニー・テューンズ」とそのキャラクターバッグス・バニーに大きな影響を与えたとも言われています。
現在でもシリー・シンフォニーシリーズの中では比較的有名な作品の一つとして認知されており、特にビデオやDVDでの再リリースにおいて多くの人々の子供時代定番カートゥーンとして世界中から愛され続けています。
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あらすじ
今日はうさぎとかめのビッグレースの日。
沢山の観客達が2人のレースを観戦する為に集まった。
自身の足の速さに絶対的な自信を持つうさぎのマックスと堅実な走りでゴールを目指すかめのトビー。
一着でゴールテープを切るのはいったいどちらだろうか…。
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感想
数ある
ディズニーの童話原作映画の中でも上位に入るであろう、
原作に忠実なアニメーションの一つと言えると思います。
大筋のプロットや作品に込められたメッセージも基本的には原作通りです。
そんな今作の中でディズニーならではの個性を大きくアピールしているポイントとしては、やはり絶妙なキャラクター付けというのが一番でしょう。
うさぎのマックスは、より自信過剰で不真面目な性格に、そこに陽気でお調子者という特徴も追加されました。
原作では昼寝で寝過ごしてしまっただけでしたが、今作ではせっかく途中で目を覚まし亀を一度抜き返したにも関わらずうさぎガールズ達の誘惑で再び調子にのり、レースをそっちのけで特技自慢を始めてしまいます。
かめのトビーは原作の真面目で堅実な面よりも【勝負に徹する姿勢】というのが強調されています。
原作と違い寝ているうさぎを明らかにわざと起こさないないように横を通りすぎたり、ゴールの瞬間首をめいっぱい伸ばして尺を稼いだり、、、
可能な限りの能力と知恵を使って必死に勝ちにいってるのがわかります。
これらの追加要素によってより両者の【物事に真剣に取り組む姿勢】の差が強調されていて、【最後まで諦めない事の大切さ】というメッセージが原作よりも万人に伝わりやすくなっているんですよね。
たまたま勝てた原作に対して、今作ではカメが非常に泥臭く勝ちにいってるというのが大きな違いかなと思います。
さらに王道のアメリカンギャグも趣旨がぶれない絶妙な塩梅で大いに盛り込んでいて、単純な教訓童話だった原作が、大元は変えることなく見事なポップカートゥーンコメディに生まれ変わっていて、この辺はホントに流石の職人芸です。
特に前半のギャグの畳み掛けとかはホントにすごくて。冒頭のギャラリー達の小ボケから、どのシーンにも画面の中央から端まで何かしらのギャグが常に発生しているという…
そこに来てさらにディズニー1930年代の化け物級のアニメーション力の素晴らしさ。画面の端まで動きまくってますからね。これほんと凄い。
よくこの作品はシリー・シンフォニーのアカデミー受賞作の中ではクオリティ的に地味な作品だと言われる事も結構あるのですが、受賞も充分頷ける圧巻の出来栄えだと思いますね。
何よりも、あえて難しい事をせず、これまでのノウハウをフルに駆使して子供が楽しみながら学ぶ事のできるポップで直球なキッズコメディカートゥーンとして振り切って作られているのが素敵です。
これは1933年の大ヒット作品である「三匹の子ぶた」等からしっかり継承した作風でもありますね。
そもそもこの
シリー・シンフォニーは、基本的には
【史上初の長編アニメーション映画制作】を
見据えた様々な
表現や手法を
試す為の
実験の場として、そして
アニメーションや
アクション先行型ではなく
【音楽とアニメーションのシンクロ】という
コンセプトのもとにスタートしたシリーズ。
実際にこのシリーズにおいて、初のカラー化やマルチプレーンカメラ等アニメーションの可能性を探る様々な実験が行われてきました。
なので必然的に、少々マニアックでクセのあるどちらかと言えば大人向けな作品が多いラインナップになっているんですよね。
しかし、ディズニースタジオの凄いところはそんなシリーズの中にも、要所にアニメーション本来のターゲットである子供の心を掴む為の素晴らしいスタンダードコメディカートゥーン作品をちゃーんと織り交ぜているということ。
特にこの時期は最初の長編アニメーションである【白雪姫】を具体的に見据えたマニアックな実験作品が増えていました。
そんな中でもこの作品や三匹の子ぶた等の王道ポップカートゥーンによって子供の心をしっかりと捉える事にちゃんと成功してるんですよね。
この振り幅の広さこそが、ディズニーのアニメーションスタジオとしての底力に繋がっていると個人的にはおもっています。
シリー・シンフォニーの実験作の積み重ねで「白雪姫」を成功させたディズニー。
しかしこの路線のみにもし振り切っていたら、ここまでの会社にはなれていなかったでしょう。
実際に白雪姫後のディズニーは写実性や技術性、芸術性を意識した作品達でことごとく収益的失敗を記録してしまいます。(「バンビ」や「ファンタジア」など。。)
そんな時にディズニーを救ったのはまさに今作のようなスタンダードポップカートゥーンで培ったノウハウを目一杯使用した「ダンボ」やそれに続くオムニバス作品達でした。
そして以降もこの先進性と古典性の両輪を合わせ持つことこそがディズニーの大きな武器となっていたんですよね。
今でこそこんな1930年代の古い単純なカートゥーンを好んでみる子供なんてほとんど居ないのかもしれませんが、こういうハイクオリティな古典的作品があり、さらにそれがしっかりと世間に評価されてきたからこそ、ピーター・パンやプーさんがうまれ、リトル・マーメイドやライオン・キングがうまれ、さらにズートピアやアナ雪が生まれ…
エンターテイメントの覇者ディズニーが形作られていった…というわけですね。
前にも語りましたが、ディズニーの作品というのは100年分、例外なくその全てが繋がっているんです。
だからこそ、本当に面白いんですよね。
というわけで!
「うさぎとかめ」は現在ディズニープラスで配信中です♪
子供の頃一度は観たことかある方も多いとは思いますが、たかが短編映画と侮らず機会があれば是非大人の視点で、もう一度改めて観てみるのもオススメですね。
もちろん現代のお子様にだってしっかりオススメです!
はい。
というわけで今回はこの辺で!
今回も長文駄文にお付き合い頂きありがとうございました♪
また次回!
しーゆーねくすとたぁいむー。