はいどんも。
今日はディズニーの原点である短編映画シリーズについて1本語っていきたいと思います。
ディズニーは元々短編カートゥーンが主戦場の小さな映画制作会社でした。
「白雪姫」の大成功後そのメインは長編アニメーション制作へと移行していく事になります等のキャラクターシリーズやシリー・シンフォニーシリーズ等をはじめ、数は減っていきながらも原点である短編アニメーションの制作は今日まで継続して行われ続けています。
最近ではディズニーの長編作品と併映という形でコンスタントにリリースされていますよね。
何かのシリーズや続編も多いのですが、そのどれにも属さない単発の短編作品の中にも、あまり知られてはいませんが素晴らしい物が沢山あります。
特に2000年代〜の短編作品は、メインである長編アニメーション浮き沈みとは裏腹に非常にクオリティと評価の高い物がとっても多いんです。
アカデミー賞受賞作品もいくかあったりするんですよ。
今回はそんな作品群の中から、ディズニーのもう一つの顔であるサイケ・ダーティーを全面に押し出した、レジェンドクリエイターの遺産でもあるこちらの1本について語っていきます。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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ロレンゾ
(原題:Lorenzo)
2004年
監督
マイク・ガブリエル
データ
ディズニーが2004年にフロリダ映画祭で初公開した短編アニメーション映画。
後にDVD「ディズニー・ショートフィルム・コレクション」に収録されてリリースされました。
原案はディズニーのレジェンドクリエイターであるジョー・グラントが1940年代に発案した、実体験をもとにしたタンゴをベースとするアニメーション企画。
当時は作品化には至らず、2000年代に入りファンタジアの続編「ファンタジア2006」の為に「デスティーノ」等と共に再発案・制作された作品。
なのでフォーマットやアニメーション形式はファンタジアシリーズのそれに準じています。(BGMは音楽のみでボイスやSEは一切なし)。
監督は「ポカホンタス」の監督でも知られるマイク・ガブリエル。
彼は原案者のジョー・グラントの協力を得ながらストーリークリエイトも兼務で行いました。
ジョー・グラントはこの作品の公開の翌年に他界。そのギリギリまで制作に携わっていたといいます。
使用楽曲はフアン・ホセ・モサリーニによるタンゴナンバー「Bordoneo y 900」。
今作の為に彼とそのバンドを招き、同曲の新バージョンを新たにレコーディング・使用しています。
全体的に劇場公開の規模が小さく、特に日本では正式な劇場公開が無かったため認知度は低いですが、公開直後から他方から非常に高い評価を獲得し続けている作品であり、その高いアニメーション技術と音楽のシンクロ、往年のディズニーサイケデリック作品を彷彿とさせる奇抜な演出や展開等が絶賛されました。
アニー賞も受賞しています。
ディズニーのレジェンドクリエイターであるジョー・グラントが遺した最後の代表作という事もあり、数あるディズニー短編作品の中でも知る人ぞ知る隠れた名作として現在でも尚高い人気と支持を獲続けている作品です。
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あらすじ
とある街のレストラン。
ロレンゾという猫がそこに住んでいた。
彼はうぬぼれ屋で意地悪な性格をしていて、この日も窓の外の野良猫達をからかっていた。
そんな時、彼の前に一匹の黒猫が現れる。
黒猫の短い尻尾を馬鹿にし、自分の立派な尻尾を見せつけるロレンゾ。
しかし直後、そんなロレンゾと彼の尻尾に災いが訪れる事になる…。
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感想
現在のディズニーには否が応でも「夢と魔法の象徴」「子供が楽しめるポップでファンタジックなハッピーエンドムービーの作り手」というパブリックイメージが強く根付いています。
それが良いことか悪いことかは置いておいて、実際にはそれはあくまでディズニーという映画スタジオの一面でしかありません。
ディズニーは古くからアニメーションの様々な可能性を模索してきました。
粗野で乱暴なギャグカートゥーン。
アニメを芸術に昇華させたファンタジア。
三人の騎士やアリスに代表されるサイケデリックなトリップムービー。
イカボードやくじらのウィリー等の後味の悪いホラーやトラウマレベルのショッキングな演出。
その中で最も世間に受け入れられ浸透したのが「夢と魔法」だった…という事です。
今作は、そんなディズニーが様々な可能性を模索していた時代をよく知るジョー・グラントが遺した、とっておきのサイケデリックムービーです。
この2000年代、そして現代のディズニーの作風とは一線を画する、ディズニーが昔から確かに持ち合わせている猟奇的で超現実的な顔と才能を思い出させてくれる貴重な作品、それがこの「ロレンゾ」です。
前述の通り、実現しなかったファンタジアの続編用に作られた作品である為セリフ等はなく、一曲の音楽に合わせてアニメーションが進行していくスタイルの為、この手法が苦手な方やお子様には(内容や演出的にも)向かない作品です。
決して万人受けするアニメーションではなない事は間違いないです。
しかしながら、それを差し引いても余りある作品クオリティとエネルギー。
控えめに言っても圧巻です。
まずそのアニメーション・作画デザインと演出の素晴らしさ。
黒い画用紙に手描きされた背景画やアニメーションを中心にCG処理をフォローとして加えたその唯一無二の世界観は20年後の今観てもまったく古さを感じさせず、一瞬で見ているものを引き込みます。
芸術的であり、ポップでもある。
このデザインの塩梅は本当に見事です。
そしてそんなアニメーションと音楽のみの限られた表現の中でも、観ている人全てにストーリーやシークエンスをしっかりと理解させるこの表現力には度肝を抜かれます。
ジェットコースターのような短時間での目まぐるしい展開の中でしっかりユーモアやギャグを交えながら、ちゃんと観ている人にシークエンスの全体像を理解させている。
半端ないですよ。
徐々に理性を失っていくロレンゾの表情の描写なんかも危機迫るものがあり、手描きアニメーションの力を直に感じられます。
この確かな技術に裏打ちされた表現力が、やっぱりディズニーの最大の武器ですよね。攻めた手法や演出を行っても、しっかり作品として成立させてしまうのはこの技術力があるからこそです。
そして、この一世代前のディズニーを思わせるダーティでサイケデリックな世界観や演出満載のトリップムービーの中にあって、決定的に過去作と違うところはやはりそのラストでしょう。
カーテンコールによるメタ落ちです。
これは間違いなく、以前のディズニーではしなかったラストシーンだと思います。
あってせいぜい夢オチ。
超現実映画は超現実のまま観客を突き放すように終わるのがこういう作品におけるディズニーのやり方でした。
しかしこのロレンゾでは、これだけやりたい放題やった内容であっても、このほんの数秒のカーテンコールのシーンを導入するだけで、一気に観客を救済する事に成功してるんですよね。
このラストシーンにどれだけの観客がホッとしたことか…w
賛否はわかれるかもしれませんが、これこそが現代におけるディズニーをディズニーたらしめている部分であり、エンターテインメント企業としてのあきらかな成長であると思いますね。
重ねてにはなりますが、決して万人受けする作品ではありません。
ただ「ディズニーには楽天的な映画しかない…」と思っている方にはぜひ一度こういう作品も観て頂きたいですね。
大昔から脈々と受け継がれるディズニーのもう一つの圧倒的才能と技術を肌で感じられる作品だと思います。
これもまた紛れもなくディズニーらしいディズニー。
そして何よりその圧倒的な手描きによるアニメーションの躍動と表現力に刮目して頂きたいです。
ホントに凄いんで。
あまり有名な作品ではありませんが、間違いなくディズニーが誇る傑作の一つですね。
「ロレンゾ」は現在ディズニープラスで配信中です♪
5分という短尺の短編作品ですのでぜひちょっとした隙間時間に、ぜひともお楽しみ下さいませ♪
はい。
というわけで今回はこの辺で!
今回も長文駄文にお付き合い頂きありがとうございました♪
また次回。
しーゆーねくすとたぁいむー。