ディズニー映画語り プーさんとイーヨーのいち日 | すきなものしか語れない

すきなものしか語れない

元ディズニーシー長年単パサー。今はおもにディズニー映画中心に好きなものだけ勝手に語るつまらないブログです。Dヲタだった頃の記事は思い出として残してます。


はいどうもぉ。


さて、今回はこちらも恒例のプーさんシリーズ語りです。


プーシリーズ大ファンなおときち。

どうしてもプー作品の語りはマニアックな内容になってしまう事をご容赦くださいw



これまでの記事でも語ってきましたが、ディズニーのプーさん作品は大きく分けて3つのカテゴリーに分類することができます。


①ディズニーアニメーションスタジオ、そしてディズニーピクチャーズ制作による「ディズニー本家シリーズ」。
※原作の雰囲気やストーリーを大切にしたシリーズです。

②ディズニー・トゥーン・スタジオ制作による劇場作品を中心とした「トゥーンシリーズ」
※原作の雰囲気を残しつつディズニーオリジナルのストーリーが展開されるシリーズ。

③ディズニー・テレビジョン・アニメーションが制作したテレビ向けの「カートゥーンシリーズ」
※原作からの設定を大きく変更しアメリカカートゥーン味をふんだんにプラスしたパラレルシリーズ。


今回は①のシリーズにあたる、あまり知られていない本家アニメーションスタジオが制作した「くまのプーさん」シリーズの劇場用中編作品について語っていきたいと思います。



(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  プーさんとイーヨーのいち日

(原題:Winnie the Pooh and a Day for Eeyore)

1983年

監督

リック・ライナート


データ


1983年にディズニー長編アニメーション作品「王様の剣」のリバイバルと同時上映にて初公開された、約25分中編アニメーション


「くまのプーさん 完全保存版」に続く6年ぶりのプー作品であり、2011年に新作長編が公開されるまでの長期間、今作がウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオから公開された最後のプー作品でもありました。


原作はA・A・ミルンによる児童小説であり、今作では「クマのプーさん」及び「プー横丁にたった家」2冊から1エピソードずつを抜き出し組み合わせた内容になっています。


兼ねてから計画されていた物ではなく急遽制作が決まったという内情もあり、本家ディズニースタジオ名義でリリースされていますが実際には下請けと言える外部会社「リック・ライナート・プロダクションズ」によって制作された作品です。


監督は様々な趣旨作品を手掛けてきたカートゥーン職人リック・ライナート


脚本は「きつねと猟犬」「オリビアちゃんの大冒険」「オリバー ニューヨーク子猫ものがたり」70.80年代の多くのディズニーアニメーションを手掛けたピーター・ヤング等が担当しています。


音楽はシャーマン兄弟が制作したオリジナル楽曲をベースに使用しながら、スコア等はスティーブ・ザッカーマンが手掛けました。


急遽短期間で制作された、又前作から6年ぶりという事で他界した人物も多く、キャストもオリジナルとは違う代役での出演が多かったのも今作の大きな特徴です。



オリジナルから続投したのは…


イーヨー役のラルフ・ライト

ピグレット役のジョン・フィードラー

ティガー役のポール・ウィンチェル

オウル役のハル・スミス


の4名。


オリジナルの代理として…


プー役はオウルと兼務でハル・スミス

ラビット役をウィル・ライアン

カンガ役をジュリー・マクワーター


等がそれぞれ務めています。



前作の3つの短編、そしてそれをまとめた「完全保存版」ベースは引き継いではいるものの、異なるクリエイター達による作品のため全体のテンポギャグセンス画風はオリジナルのそれとはきく異なっています。


これに関しては賛否両論ではあるものの、原作エピソードの使い方や原作を知らない子供にも大人にもより馴染みやすく見やすくなったテンポギャグキャラクターの純粋な愛らしさ等は好評を獲得し、1989年からスタートするテレビシリーズ「新くまのプーさん」の大きな基盤・参考となりました。


現在ディズニープラスを始め配信によるリリースが一切行われていない作品であるにも関わらず、今作の【イーヨーが川に流されるシーン】【プーの小枝投げ】はシリーズを象徴する世界的に有名な要素としてファンから親しまれています。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あらすじ




ある日の100エーカーの森。


プーが川辺の橋を散歩していた時の事。


ひょんな事からプーは、橋から一斉に棒を投げその速さを競うというちょっとした遊びを思いつく。


【プーの小枝投げ】と名付けたそのゲームで仲間たちと遊んでいると、突然川からイーヨーが流れてきた。


驚く一同だったが、プーの機転でなんとか救助することに成功する。


川から上がったイーヨーに事情を聞くと、ティガーに川へ突き飛ばされたのだと言う事だった。


現れたティガーを問いただす仲間たちだったが、ティガー本人には悪びれる様子もない。


イーヨーは暗く沈んだまま独りで家へ帰ってしまった。


いつにも増して落ち込みの酷い様子を心配するプーたち。


しかし、この日イーヨーが落ち込んでいたのは

ティガーに突き飛ばされた事だけが理由ではなかったのだった…。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

感想




この作品が公開された1980年代はディズニーアニメーションスタジオの暗黒期の真っ只中。


「無難なアニメーションを低予算で作り収益を上げる」事を使命とされ、クリエイター達にも疲弊が蔓延していた深刻な時期でした。


ある意味この作品の沿革も、そんな時代を象徴するような物であったと思います。


ウォルトが提唱した積み上げ方式を実践し、それを完了させた1977年の「完全保存版」


そこから6年間経ってまるで思い出したかのようにプーシリーズの中編作品を、しかも下請け会社に委託する形で作らせ自分達名義で公開(公開時、制作したライナート・プロダクションクレジットすらされませんでした。)。


言い方は悪いですが【使えるものはなんでも使おう】という状況だったのでしょう。


「リバイバルの、しかも王様の剣の同時上映だし…少しだけ人気のあったプーさんをやっとくか…」


といった感じでしょうか。


勿論想像半分ですが。


それくらい、当時のスタジオの環境が悪化していたと言う事は良くわかります。


実際にこの作品にはオリジナルを手掛けたクリエイター達は、音楽のシャーマン兄弟も含めてほとんど参加していません

(楽曲は使用されているもののアレンジは他クリエイターの手によって行われました。)




そんな中で制作・公開された今作は、ディズニーのプーというシリーズ歴史においてとても重要な、ターニングポイントとなる1本になったと個人的には思っています。


まず正直な所感を言ってしまうと、おときちはこの作品とても好きなんです。


確かに、キャラクターモーションやストーリーのテンポの良さアメリカナイズされた小気味よいギャグポップ効果音劇伴等が取り入れられたその作風はオリジナルの3本とは全く違うテイストになっていると言えるでしょう。


しかしそれが原作の、プーという世界の魅力殺していると言えば全くそうは思わないんですよね。


むしろある面ではオリジナルよりも原作の空気感を上手く反映しているとも言えると思います。


例えばプーの性格

オリジナルのひたすらおっとりしたおマヌケさんキャラと比べて今作のプーはワリと我が強いです。この辺は原作のプーの【自意識の強い性格】を上手く表現していると思います。


それからギャグ

これもポップにはしているんだけど原作の言葉遊び文字遊び的なポエトリーなギャグセンスがよく表現されているし、【小枝投げ】などの印象的な要素、各キャラクターのシュールさから醸し出す面白みもよく研究されていると思いました。


何が言いたいかというと、オリジナルとは原作から取り出した要素が違う…という事です。


オリジナルの3本、そして「完全保存版」は【プーという作品の本質】をディズニーのフィルターを通して完璧に表現した作品である事は間違いありません。


ただ反面、ディズニーのアニメーション作品としては色々難も多かった事、原作の細部の魅力に関しては表現しきれていなかった事も事実です。


その点を今作はうまぁく改善しているんですよね。しかも原作の持つ魅力を(オリジナルとは違う形で)しっかり残しつつ、です。




このブログで何度も語ってきましたが、プーという題材は兎に角ストーリー映画にはむかない作品で、作品として【面白い】ものにするのは本当に至難のなんですよね。


結果オリジナルは兎に角ストーリー映画としての出来よりも、世界観キャラクターを魅力的に描く事全振りした作品だったと思います。


そこからストーリーに特化させたのが【ティガー・ムービー】等に代表されるトゥーン・スタジオのシリーズ


ギャグカートゥーンに特化させたのがテレビシリーズ「新くまのプーさん」


「各キャラクターの突出した個性」に振り切ったのが2011年の長編作品


と、それぞれが趣向を凝らしてプーという作品のアニメーションの魅力的な方向性模索し続けて、まだ明確な正解は見つからないまま今に至っている…と個人的には思っています。


そんな中で、全てのバランスが最も良く取れているのがこの作品だと思うんですよね。


映画としても、プー作品としても、大人が観ても子供が見ても、雰囲気ものとしてもエンターテイメントとしても、どの視点からでもしっかりと魅力的な作品に仕上がっているプーシリーズのほぼ唯一の作品じゃないでしょうか。

(次点としては「クリストファー・ロビンを探せ!」もかなりトータルレベルの高い作品です)




外部会社制作でありながら、アニメーションのクオリティも非常に良いんですよね。

全くオリジナルの本家スタジオ負けていません。

 

勿論画風変化で多少の違和感はあるものの、特にティガーをはじめとするキャラクターモーション素晴らしさは是非見て欲しいですね。シリーズで1、2を争う躍動的なティガーだと思います。


他記事でも語りましたが、プーという作品は、本家スタジオではなくテレビジョンやトゥーン等のサブラインから本格ヒット化を果たした数少ないディズニー作品の1つと言えますよね。


本家がプー作品からパッタリと手を離してる間数々の名作を生み出し、プーという作品と世界を大衆の身近に定着させることに見事に成功しました。


ある意味、ディズニーは本家スタジオだけではないんだぞ、という事を身を以て証明したのがプーシリーズであるという言い方もできると思います。


本作はまさにその始まりの作品であると言えます。


間違いなく、プーというシリーズの可能性示した1本でした。


個人的には、プーのオススメ作品はと聞かれたら、完全保存版の次に真っ先にまずはこの作品をオススメしたいですね。


それぐらいバランスが良く、プー作品の入門編にとても適した作品だと思います。



現在は残念ながらディズニープラスをはじめ一切の配信リリースが無い本作ですが「くまのプーさん 完全保存版DVDやBlu-rayボーナスコンテンツとして収録されています。


少々観るのが手間な作品ではありますが、気になった方、そしてプー好きで未見の方がいたら是非とも一度はチェックして頂きたい1本ですね。






はーい。

というわけで今回はこの辺で!


今回も長文駄文にお付き合い頂きありがとうございました♪



しーゆーねくすとたぁいむー。


 

 



にほんブログ村 映画ブログ ディズニー映画へ