今回はウォルト・ディズニー・ピクチャーズ制作の実写+アニメ映画シリーズ作品を一つ語っていきたいと思います。
世間的にはウォルト・ディズニーの始まりはアニメーションというイメージが強いと思いますが、実は彼が最初に本格的に世にでたのは【アリス・コメディ】という実写+アニメーションのコメディシリーズからでした。
この手法は実は「ウォルトが本当にやりたかった事」の一つであると言われていて、その後も「メリー・ポピンズ」や「魔法にかけられて」等、節目節目でディズニーを語るうえでは外せない名作が生まれている真の【ディズニーの得意分野】とも言えるジャンル。
今回は、あのディズニーの実写+アニメーション映画普及の名作である「メリー・ポピンズ」の流れを大いに汲んだ精神的続編とも言われていれるこちらの作品について語っていきたいと思います。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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ベッドかざりとほうき
(原題:bedknobs and broomsticks)
1971年
監督
ロバート・スティーブンソン
データ
1964年の「メリー・ポピンズ」に次ぐファンタジー作品として同作品のスタッフを中心に制作・公開された1971年公開の実写+アニメーション映画。
第二次世界大戦中のイギリス、新米魔女のエグレンタインとロンドンから疎開してきた孤児の三兄弟を中心に繰り広げられるミュージカルファンタジーです。
監督は「メリー・ポピンズ」を手掛けたことで最も知られる映ロバート・スティーブンソン。
脚本も「メリー・ポピンズ」のビル・ウォルシュとドン・ダグラディ。
音楽はアーウィン・コスタル、楽曲はシャーマン兄弟。こちらの三人も「メリー・ポピンズ」からの続投です。
アニメーションパートはディズニーの中核アニメーター集団ナイン・オールドメンのメンバーであるウォード・キンボールやミルト・カール、ジョン・ラウンズベリー等が中心となり錚々たるメンバーで仕上げられました。
原作は「小人の冒険」シリーズでも知られるイギリスの児童書作家メアリー・ノートンによる2作の児童書シリーズ。
基本設定は踏襲しているもののオリジナル要素も非常に多く、大きな改変が見られています。
主役の新米魔女エグレンタイン・プライスを演じたのは2022年96歳で他界されたアカデミー名誉賞を持つレジェンド女優のアンジェラ・ランズベリー。
ペテン師のエミリアス・ブラウン役にはメリー・ポピンズでジョージ・バンクスを演じたデヴィッド・トムリンソン。
クレオパトラや猿の惑星シリーズのロディ・マクドウォールはジェルク役で出演。
さらにレジナルド・オーウェンやシリル・デレバンティ等のメリー・ポピンズ俳優が多数出演しています。
元々は1940年代に権利を獲得しメリー・ポピンズの映画化権利が取得できなかった時の為の代替案としてディズニーが温めていた企画であり、水面下でゆっくりと制作が進められていた1本でした。
メリー・ポピンズが製作開始してから企画は棚上げされていましたが、同作のヒットを受けてそれに次ぐ実写+アニメーションのファンタジーミュージカルとして正式に再始動。
映画化権利獲得から実に約30年近くの歳月を経てようやく公開にこぎ着けた作品です。
メリー・ポピンズのスタッフが同等の制作費をかけて制作した大作として鳴り物入りで公開された今作でしたが、収益面では決して大成功とは言えない結果に終わります。
その大きな要因はやはり【メリー・ポピンズの二番煎じ】という印象の強さ。
実際ポピンズの代替案として企画されていた物だったり、同作でボツになった楽曲を使用していたり、設定やストーリーには類似点が多く【出がらし】というイメージを拭いきれなかった感は否めませんでした。
ただ一方で主演のアンジェラ・ランズベリーの好演や技術的に大きく進歩した映像表現や特殊効果、アニメーションパートの素晴らしさ等が高く評価されアカデミー視覚効果賞も受賞。
現在ではディズニーのハイクオリティなファンタジーミュージカルの名作として世界に広く認知されています。
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あらすじ
1940年のイングランド。
時は第二次世界大戦の只中。
ロンドンから田舎町へ疎開してきた孤児の三兄弟、ポール・キャリー・チャーリーはとある豪邸に一人暮らしの中年女性エグランタイン・プライスに預けられることになる。
しかしプライスは「大事な仕事があってそれどころではない。」と子供たちに素っ気ない態度を見せる。
そんなプライスの対応に嫌気が差した子供達は、夜中にこっそりと家を抜け出しロンドンへ帰ろうと画策。
しかし家を抜け出したところで、箒にまたがり空を飛ぶプライスを目撃する。
プライスの正体は通信教育で魔法を学ぶ新米魔女だったのだ。
この事実をネタにプライスを脅迫し自分達の待遇を良くしようと考えた三兄弟の長男チャーリーはロンドンへ帰るのを思いとどまり、プライスとの交渉を行う。
交渉の結果、魔女であることを口外しない代わりとしてプライスは魔法の呪文を一つ子供達へ譲ることになる。
それは、ベッドに乗って何処でも好きなところへ行く事ができる大きな魔法だった。
そうまでして魔女になりたいプライスには、ある大きな目的があった。
それは…魔法の力を使ってこの戦争を終わらせる事…。
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感想
作品の目指すもの
「これは何をしたい作品なのか?」
結局映画ってやっぱりこの部分が一番大事な気がしてて。
これがやっぱり全く不透明だったり独自性がなかったりすると、どうしても一定値以上の良い映画にはならないんですよね。
で、それで言うとこの作品はその「何がしたいか」という部分の答えがどう見ても「メリー・ポピンズの代わり」としか感じられないんですよね。
ホントに素晴らしいシーンや面白いところも沢山あるんですが、結局何を一番魅せたい作品なのかが全くわからない。
候補として一番にあがるのはやはり主人公の「目的」なのですが、これに関しては一見メリー・ポピンズよりも明確で、非常に観客が入っていきやすいんですよ。
「魔法を使って第二次世界大戦を終わらせる」
というものですね。
ただ如何せんこれがもうなんか途中からブレブレで、結局最後は色々あって「もういいや、やーめた。」で終わっちゃうという…w
「新しい家族もできたしね。えへへ。」で終わっちゃうという…。
じゃあこっちのファミリームービーがメインなのかと言うとそちらの方も非常に唐突で雑な作り。
しかもそんな突然出来た新しい伴侶は早速「今は戦地のほうが安全だ」とか言って1人で徴兵志願して行っちゃうし…w
子供との触れ合いや心を通じさせるシーンもほとんどなくて気づけばいつの間にか仲良くなってるみたいな急展開だし…
もうなんなのよ!とw
特にストーリープロットと構成、それと脚本がちょっとやっぱり雑と言うか、適当な部分が目立っちゃってるんですよね。
何がしたいのかが全く見えてきません。
色々な要素を散りばめているのに、それが一つとしてまともに着地してない。
折角良いシーンや素晴らしい演出がいっぱいあっても、結局この部分の芯が通ってないと映画って「名作」にはなれないんですよね。
1980年代暗黒期のディズニーアニメーションスタジオの作品群がまさにそうでした。
それと非常に似た匂いのする作品です。
どうしても「メリー・ポピンズの続編が難しいから、その代替として…」という部分以上の、この作品のしたいことがどうしても見えてこないんですよね…。