ディズニー映画語り メイク・マイン・ミュージック | すきなものしか語れない

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元ディズニーシー長年単パサー。今はおもにディズニー映画中心に好きなものだけ勝手に語るつまらないブログです。Dヲタだった頃の記事は思い出として残してます。




ハイドウモ。



さて、今回は2週目のディズニーアニメーション映画史時代は正にディズニー長編アニメーション黎明期全てが始まり動き出した時代です。


史上初の長編カラーアニメーション「白雪姫」空前の大ヒットを記録したディズニーでしたが、その後の超大作「ピノキオ」「ファンタジア」等の収益的失敗、さらに第二次世界大戦の過激化もありその後は苦境を強いられることになりました。



「ダンボ」から始まった低予算作品継続するしかない状況だったディズニーは国務省から依頼されたプロバガンダ映画2作品を公開し、これが収益面でも評価面でも成功を納めます。


倒産の危機は免れたディズニーでしたが、主要スタッフの徴兵による欠損、さらのその上でプロバガンダ作品人員と時間が割かれてしまう等、思うような長編映画製作が行えない歯痒い状況終戦後も続くことになります。


そんな中での苦肉の策として、前2作「ラテン・アメリカの旅」「三人の騎士」成功したオムニバスパッケージ長編継続する事にしたディズニーは、これまでの作品でボツになったアイデア未完成のスクリプトとこれまで培ったシリー・シンフォニーファンタジアノウハウを利用した、音楽をベースとするこちらの短編作品集を製作・公開する事になります。。




(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)



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  メイク・マイン・ミュージック

(原題:Make Mine Music)

1946年

監督

ジャック・キニー

クライド・ジェロニミ

ハミルトン・ラスケ

ジョシュア・ミードール

ロバート・コーマック




データ


ウォルトディズニーアニメーションスタジオ8作目の長編アニメーション。


第二次世界大戦終戦直後である1946年に公開されました。



それぞれ異なるジャンル・趣の音楽ベースとしたアニメーション短編10篇収録したオムニバス長編映画


監督は「シンデレラ」「ピーター・バン」「ふしぎの国のアリス」「わんわん物語」等後に錚々たる作品達は監督する事になる主力メンバーのハミルトン・ラスクに加え、ジャック・キニークライド・ジェロニミジョシュア・ミードール等短編作品を中心に腕を振るう中堅実力者達が揃いました。


脚本には様々な分野から実に20人近く才能陣が揃い、各それぞれのエピソードで力を発揮しています。


音楽にはチャールズ・ウォルコットオリバー・ウォレスエドワード・プラム等当時のディズニーを音楽面で支えた重鎮が名を連ね、さらに各エピソードのベースミュージックにはザ・キングス・メンケン・ダービーベニー・グッドマンアンドリュース・シスターズネルソン・エディ超実力派アーティストミュージシャン達が楽曲やパフォーマンスを提供しています。



前2作のようなプロバガンダ性は無くドナルド等の有名キャラクターも登場しない事から当時から注目度は低く大規模な劇場公開も行われませんでしたが、それでも前作「三人の騎士」とほぼ同等の高収益を記録しました。



評価も決して悪くはありませんでしたが、その後は収録されている短編バラ売りのような形で単体の作品として再リリースされ、長編作品としては再度注目を浴びることはなく、その知名度徐々に低下し続けること事になります。


他のオムニバス作品と違い縦軸のストーリーが一切なく、短編以外の今作独自のシークエンス皆無である事が裏目に出る形となってしまいました。


現在ではディズニーアニメーションスタジオ全62作品の中でも特に知名度の低い作品となっており、ファン以外の目に触れることのほぼない幻の一本となりつつあります。


日本でもパブリックドメイン版が少々出回っている程度であり、正規版ソフト化されていません


さらに現状で、ハッキリとした理由はわかりませんが過去作全61作品中唯一ディズニープラスでの配信が行われていない作品でもあります。




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あらすじ



趣の異なる10篇の短編集。

・谷間のあらそい(The Martins and the Coys)

・青いさざなみ()Blue bayou)

・みんなでジャズを!(All the Cats Join In)

・あなたなしでは(Without You)

・猛打者ケイシー(Casey at the Bat)

・ふたつのシルエット(Two Silhouettes)

・ピーターとおおかみ(Peter and the Wolf)

・君去りし後(After You've Gone)

・帽子のジョニーとアリスの恋(Johnnie Fedora and Alice Bluebonnet)

・くじらのウィリー(The Whale Who Wanted to Sing at the Met)


※くじらのウィリー


オペラを歌う特技を持つウィリーはいつも海で魚や鳥たちを相手にその美声を披露していた。


ある日人間にその存在が知られることとなり、ウィリーはついに劇場で歌える日が来たと喜ぶ。


オペラ興行主のタッツィはくじらがオペラ歌手を飲み込んでいると思い込み、ウィリーを退治する為に海へ出る。


劇場で歌うという夢を叶える為にタッツィに歌声を聞かせに来たウィリー。その美声を聞いてもタッツィは自分の考えを変えずにウィリーを殺そうとする。


そして悲劇は起きてしまう。



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感想




この時代のオムニバス6シリーズの中でも最も純粋シンプルオムニバス作品

と同時に言葉を選ばずに言うと最もやっつけ感の強い寄せ集め作品とも言えます。

いかにも行き場を失ったアイデアたち供養といった雰囲気がなんとなく透けて見えます。

実際にファンタジア不採用シーン等も使用されており、ファンには一見の価値ありですが広く大衆的な面で特段好まれる作品ではないというのが正直なところです。


例えるならば人気バンドのカップリング集、といったところでしょうか。

B面らしい玄人好みの味わいはあれど、特大ヒットはない感じですかね。

構成的に、ストーリー性のある賑やかなエピソード芸術性に特化した静のエピソード交互に配置されてる感じもそれこそ1枚のミュージックアルバムっぽいです。

1枚の音楽アルバムを聴くような感じ気軽に流し見するのには丁度よい作品かもしれないですね。



粒揃いのエピソード



上述した様に特大ヒットな傑作はありませんが、シリー・シンフォニー等の短編が好きな比較的コアなディズニーファンにとっては興味深く観れるような、小粒な作品が多いです。

いかにもディズニーのクリエイター達いつか使えると思ってストックしていた様なネタやアイデアって感じがしますね。

「三人の騎士」のような奇抜さもなく、子供に見せるにしても途中で都度挟まれる芸術趣向のエピソードになりますし、どの方向にも振り切れてない中途半端さなんですよね。


総じて言うと、事実上の後継作である「メロディ・タイム」の方が数段映画としてのクオリティは高く、数ある名作達の影にすっかり埋もれてしまっているのも正直頷けます。

ただ、各エピソードは決して悪くなく、面白い試みをしているものも多くあります。

アメリカの有名なベースボールポエムを原作とした野球コメディ「猛打者ケイシー」

ファンタジア2000ラプソディ・イン・ブルーにも通ずるジャズ版のカジュアルファンタジアとも言える「みんなでジャズを!」

実写のダンスシーンのシルエットと幻想的な手描きアニメーション融合させた「ふたつのシルエット」

擬人化した帽子の男女が紡ぐラブストーリー「帽子のジョニーとアリスの恋」

ディズニー史上でも珍しい悲劇のファンタジーくじらのウィリー」


特に「猛打者ケイシー」「帽子のジョニーとアリスの恋」「くじらのウィリー」などは演出や脚本にも工夫と捻りが見られ、良質な短編アニメーションとなっています。


個人的にもこの3作品がやっぱり好きですね。
普遍的なディズニーらしさとこの時期の少しネジが外れたディズニーの魅力、両方を感じられます。

特に「くじらのウィリー」はバリトン歌手のネルソン・エディ一人芝居となっていて、その歌声も含めて見応え抜群です。



一本の作品として



やはり、縦軸の工夫が一切ないのは気になりますね。

その他のオムニバス作品はどれも各エピソードを一つの作品として繋ぐシークエンスを必ず導入しています。

些細な事かも知れませんがこれをするとしないでは一本の作品としての説得力がまるで違うんですよね。

この一点が、今作が他オムニバス長編シリーズよりも知名度を1段低くしてしまっている大きな要因だと思います。

各短編に関してはそれぞれが単独再リリース等が行われ、中にはそれなりに認知を得たエピソードもあるのでべつに大した問題じゃない…と思われるかもしれませんが「メイク・マイン・ミュージック」はディズニーアニメーションスタジオの大切な長編作品の一つなわけで。

同じ過酷な条件下だった他作品を見ても、様々な工夫でその長編としての体裁を誇示してるのに対し、この一本だけが明らかに手抜き感を醸し出しちゃってるんですよね。


これは本当に残念でした。


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まとめ



決して悪い作品ではないです。

ただ重ねてにはなりますが【小粒揃いの少しコアな短編集】という、この一言で済んでしまう一本である事はどうしても否めません。

音楽をベースとした短編作品として各エピソードはそれぞれ個性的な魅力を備えてはいるんですが、採用されなかったアイデアがメインというだけあってやはりパンチ不足は否めず。

ましてや各短編がそれぞれ単独で扱われる昨今に至ってはこの「メイク・マイン・ミュージック」としての存在価値はかなり低い、と言わざるを得ないのが正直なところです。


現在、正規版ソフトリリースされておらずディズニープラスでも配信がない視聴するのが少々困難な一本になっていますが、余程のファンでない限りわざわざ苦労して観る必要もないのかな…とは思ってしまいますね。



決して駄作とかではないんですけどね。


いつかディズニープラスで配信されるのを気長に待つくらいで丁度良いのかなぁ…という感じですかね!


一応music.jpなど一部の媒体で有料配信も無くはないので見ようと思えば不可能ではありませんが♪



はい。


というわけで!


今回はこの辺で〜。


いつもこんな駄文にお付き合い頂き本当にありがとうございます。感謝です!



では、また次回!




しーゆーねくすとたぁーいむ。




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