はぁいどうむぉ。
さて、今回も恒例のディズニーアニメーション映画史。時代は【ディズニー第3の暗黒期】とも言われている2000年代の末期。
2004年に手描き2D映画から撤退。フルCG映画制作への完全移行を実施してから、「ボルト」「プリンセスと魔法のキス」と立て続けにスマッシュヒットを達成し、その存在感を取り戻したディズニー。
既にこの時点で暗黒期は脱したと言う評論が多くを締めていましたが、黄金期再来と言う程のヒットが出ていないのも事実。
あとは大爆発を待つのみでした。
そう、あの90年代のディズニールネサンスのような大逆転を。
そうした中で公開されたのは、70年代からディズニーで活躍する重鎮グレン・キーンが暖め続けたこちらのプリンセスストーリーでした。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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塔の上のラプンツェル
(原題:Tangled)
2010年
監督
バイロン・ハワード
ネイサン・グレノ
データ
ウォルトディズニーアニメーションスタジオ50作目の長編アニメーション。
あらすじ
とある人里離れた森の奥の塔に、ラプンツェルという少女が住んでいた。
彼女は母親のゴーテルに「髪に宿った不思議な力」を守るために塔から出るなと強く教えられ、外の世界を知らないまま18歳の誕生日を迎えようとしていた。
ゴーテルは必要な物はラプンツェルに与えていたが、外に出る事だけは決して許さなかった。
母親を愛しながらも、外の世界への憧れを募らせるラプンツェル。
特に毎年自分の誕生日の夜になると空を覆う不思議な沢山の光が気になって仕方ない彼女は、今年の誕生日こそ外に出てあの光を見に行こうと決心し、母親に直談判する。
しかしゴーテルはラプンツェルの頼みを意にも介さず軽くいなす。落ち込むラプンツェル。
その頃、盗賊のフリン・ライダーという青年はコロナという王国の貴重なティアラを盗み出し、国の警備隊に追われている真っ最中だった。
追跡をかわす中で、とある不思議な塔にたどり着くフリン。身を隠す為に高い塔をよじ登る。
外の世界を夢見る少女と気ままで裕福な暮らしを夢見る青年。
そうして2人は互いの運命と夢を変える大きな出会いを果たすことになった…
感想
伝統の踏襲と現代との調和
全体のプロットは「夢」をテーマとした非常に90年代のディズニーでも有りそうなスタンダードなガールミーツボーイのプリンセスストーリー。
おとぎ話を基本とした世界観。
外の世界に憧れるプリンセス。
強欲で身勝手な義母。
コメディリリーフの動物達。
酒場での宴ミュージカル。
そして犯罪者でありながら特に罰を受けることなくプリンセスを落として改心したというそれだけで幸せになる男性(失礼)。
ここぞというロマンチックなシーンで流れるメンケンのバラードと映像美。
斬新なプリンセスムービーとよく言われますが、実はこれまでの名作達を良いとこどりして混ぜ合わせたような、非常にディズニーらしい全体プロットである事がわかります。
何より醸し出す雰囲気や空気感が否応なく「あの頃のディズニー映画」なんですよね。
これはかなり大きいです。
演出面でも最後のクライマックスの展開とか、かなり現代の価値観やトレンドを意識した魅せ方になっています。
そしてストーリー展開もよく練られていて無駄がない作りなのも見事です。
前作のプリンセスと魔法のキスが中盤明らかに中だるみがあったのに対して今作はよく組み立てられています。
もちろんメインのランタンのシーンはすごいですけど、そこに至るまでの酒場でのメンツとの邂逅をちゃんと終盤に活かす流れとか、中盤の祭りの描写とか素晴らしかったですね。
CGアニメーションの進化とこだわり
それとやはり今作からのCGアニメーションの進化は本当に目を見張る物があります。
元々手描き作品として構想されていた作品だけあって、2Dアニメーションの質感を残したCGアニメーションにこだわったとの事ですが、正にその言葉通りの仕上がりになってると思います。
ピクサーとはまた違う質感の、誰が見ても「ピクサーじゃないディズニー」だとわかるCGアニメーションが今作で完成された、そんな仕上がりです。
まるで2D手描きのディズニーキャラクターが飛び出してきたようなラプンツェルやユージーンのディテールは見事です。
それとやはり前述したラプンツェルの髪の毛のクオリティは本当に革新的な仕上がりだと思います。一本一本の質感等、紛れもない人間の髪の毛です。これはホントに凄い。
安定の楽曲力
そしてやはり音楽。
久々のアラン・メンケンの手腕を十二分に堪能することが出来ます。
最も有名な楽曲はやはりランタンのシーンの「輝く未来(I See the Light)」ですが、個人的に最も好きなのは冒頭にラプンツェルが歌う「自由への扉(When Will My Life Begin)」です。
軽快なフォーク・ロックのメロディとアレンジが最高で、マンディ・ムーアの伸びやかで無邪気な歌声が最高にハマってます。
この曲本当にほぼ毎日聴いてますw
月並みですがアラン・メンケンやっぱすげーって思いました。
上で触れられませんでしたが、今作のテーマは「夢」。ディズニー映画お決まりのテーマなんですが今作では「夢」についてより深く掘り下げた、夢のその先についてのメッセージが込められています。
それは「新しい夢」。
長年の夢を叶えたラプンツェル。
そしてこれまでの夢とは違う夢を見つけたユージーン。
「夢は一つじゃない。」という、これまでと同じようで全く違うテーマになってるんですよね。
この辺は前作のプリンセスと魔法のキスと似た部分があると思います。
ディズニーがこれまで描いてきたテーマに新たに向き合い直すという姿勢が。
「夢を叶えたその後が本当に楽しいんじゃないか。また新しい夢を見つけるんだ。」
この台詞はこれまた月並みですけど本当に名言だと思います。