ディズニー映画語り 塔の上のラプンツェル | すきなものしか語れない

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元ディズニーシー長年単パサー。今はおもにディズニー映画中心に好きなものだけ勝手に語るつまらないブログです。Dヲタだった頃の記事は思い出として残してます。

はぁいどうむぉ。


さて、今回も恒例のディズニーアニメーション映画史。時代は【ディズニー第3の暗黒期】とも言われている2000年代の末期


2004年手描き2D映画から撤退。フルCG映画制作への完全移行を実施してから、「ボルト」「プリンセスと魔法のキス」と立て続けにスマッシュヒット達成し、その存在感を取り戻したディズニー。


既にこの時点で暗黒期は脱したと言う評論が多くを締めていましたが、黄金期再来と言う程のヒットが出ていないのも事実。


あとは大爆発を待つのみでした。

そう、あの90年代のディズニールネサンスのような大逆転を。


そうした中で公開されたのは、70年代からディズニーで活躍する重鎮グレン・キーンが暖め続けたこちらのプリンセスストーリーでした。


(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)


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  塔の上のラプンツェル

(原題:Tangled)

2010年

監督

バイロン・ハワード

ネイサン・グレノ


データ

ウォルトディズニーアニメーションスタジオ50作目の長編アニメーション。

 

監督は「ボルト」の監督も務め後に「ズートピア」も手掛けるバイロン・ハワード「ムーラン」等様々なディズニー作品に携わっているネイサン・グレノ

脚本には大ヒット連続ドラマ「THIS IS US」を手掛けたダン・フォーゲルマン

音楽は「ホーム・オン・ザ・レンジ」以来となるアラン・メンケンが担当しています。

グリム童話の「髪長姫」を原作としていますが、例によってその内容や設定は大きく変更されています。

長年塔に閉じ込められていたラプンツェルという女性と盗賊のユージーンを主役としたファンタジーアドベンチャー

主人公ラプンツェル役をポップス歌手マンディー・ムーアが務めます。マンディは今作がきっかけとなり、この後脚本のダンが手かげた大ヒット連続ドラマ「THIS IS US」の主人公レベッカ役に抜擢され、女優として大ブレイクを果たします。
(こちらのドラマ、個人的に大好きな作品なのでラプンツェルでマンディの歌声に惚れた方は是非チェックしてみて下さい。)
日本語版は中川翔子さん。

マンディ中川翔子さんも以後の続編やゲーム、パークボイス等全てのラプンツェルの声を欠番なしで担当しています。


ユージーン役は「シャザム!」シリーズで知られるザッカリー・リーヴァイ。日本語版は畠中洋さん。


公開当時から評価・興行収入共にディズニースタジオ久々の特大ヒットとなり、実質的な第三の黄金期の始まりと言われている作品です。

が、この作品のさらに特徴的なのは公開から年月が経つに連れてその評価と人気が右肩上がりに上昇するという現象が顕著に起こった映画であったこと。

特に日本では公開日が2011年の3月12日だった事もあり、公開規模が大幅に縮小
それでも25億円好成績を収めてはいますが、もちろん本来だったらこの数倍の数字は出ていたでしょう。

この東日本大震災は他国のエンタメ興行にも大きな影響を及ぼしたとも言われているので、公開時期が恵まれなかった不遇の作品とも言われています。

もし大震災が無かったら、アナ雪での大ブレイクはここで起きていただろうという見方もあるくらいです。

しかし、時が経つにつれ再評価が進み、アナ雪の大ヒットに吊られるような形で今作の人気も急浮上

今では現代ディズニーを代表するスタープリンセスの仲間入りを果たしています。

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あらすじ


とある人里離れた森の奥の塔に、ラプンツェルという少女が住んでいた。


彼女は母親のゴーテルに「髪に宿った不思議な力」を守るために塔から出るなと強く教えられ、外の世界を知らないまま18歳の誕生日を迎えようとしていた。


ゴーテルは必要な物はラプンツェルに与えていたが、外に出る事だけは決して許さなかった。


母親を愛しながらも、外の世界への憧れを募らせるラプンツェル。


特に毎年自分の誕生日の夜になると空を覆う不思議な沢山の光が気になって仕方ない彼女は、今年の誕生日こそ外に出てあの光を見に行こうと決心し、母親に直談判する。


しかしゴーテルはラプンツェルの頼みを意にも介さず軽くいなす。落ち込むラプンツェル。


その頃、盗賊のフリン・ライダーという青年はコロナという王国の貴重なティアラを盗み出し、国の警備隊に追われている真っ最中だった。


追跡をかわす中で、とある不思議な塔にたどり着くフリン。身を隠す為に高い塔をよじ登る。


外の世界を夢見る少女と気ままで裕福な暮らしを夢見る青年。


そうして2人は互いの運命と夢を変える大きな出会いを果たすことになった…


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感想


正に現代ディズニースタンダードのはじまりを告げる非常に重要な一本

2005年のフルCG参入からずっと迷路に迷い込んでいたディズニースタジオがついに自分達独自のフルCG映画の完成形を見つけたのがこの作品です。

他社のCGコメディに引っ張られた「チキン・リトル」とも、ピクサーのノウハウとやり方で作った「ボルト」とも違う、あくまで伝統のディズニーアニメーションの延長にあるフルCGの世界

この作品をもって、ディズニーのフルCG業界での確固たる立ち位置確立したと言えると思います。

それもその筈、この作品はもともと、古くからディズニー作品を支えてきたグレン・キーンが長い年月とっておきの2Dアニメーションとして暖め続けていたプロジェクトだったんです。

会社の意向CGアニメーションに変更されてしまいましたが、ジョン・ラセター達の説得によりグレン・キーンはこのプロジェクトを継続。
体調を崩した為最前には立てませんでしたが製作総指揮としてこの作品を完成に導きました。

非常に現代のセンス価値観を反映させてはいますがこの作品は間違いなくディズニーの原点回帰」となる一本でした。

現代的価値観やセンスと、ディズニーの伝統のプリンセスストーリーが最も絶妙なバランスで調和した作品とも言えます。


伝統の踏襲と現代との調和



全体のプロットは「夢」をテーマとした非常に90年代のディズニーでも有りそうなスタンダードガールミーツボーイのプリンセスストーリー


おとぎ話を基本とした世界観。

外の世界に憧れるプリンセス。

強欲で身勝手な義母。

コメディリリーフの動物達。

酒場での宴ミュージカル。


そして犯罪者でありながら特に罰を受けることなくプリンセスを落として改心したというそれだけで幸せになる男性(失礼)


ここぞというロマンチックなシーンで流れるメンケンのバラードと映像美。


斬新なプリンセスムービーとよく言われますが、実はこれまでの名作達を良いとこどりして混ぜ合わせたような、非常にディズニーらしい全体プロットである事がわかります。


何より醸し出す雰囲気空気感が否応なく「あの頃のディズニー映画」なんですよね。


これはかなり大きいです。


そしてこの作品の最も特徴的なのは、そこに現代的なセンスやトレンド的な演出を上手に融合させていること。

ユージーンのノリ。
ゴーテルの昨今実際居そうな「嫌な女」加減。
テンポの良い会話やモーションギャグ。
ラプンツェルやその他のキャラクターのファッションセンスや顔立ち、、

どれも明らかに2000年代の現代の人々に受けるように考えられたイマドキのセンスです。

実際にユージーンのルックスを決定する際にはスタジオの女性スタッフを集め「どの顔が一番イケメンか会議」が行われていますし、ラプンツェルの髪の毛を表現するのに現代のシャンプーのCMを参考にしたり、ゴーテルのキャラ形成の為に女性スタッフへ母親との関係についてのインタビューを行う等、徹底的に「今を生きる人々の価値観」を尊重し反映させた映画です。

実際にはディズニーは意外と昔からその時のトレンドに合わせたノリやギャグ等を取り入れるスタイルなんですが、ここまでわかりやすく、しっかりハマったのは初めてじゃないでしょうか。


これが前述のディズニーの伝統的な空気感喧嘩せずに見事に融合しているのがこの作品の本当にすごい所だと思います。

この作品以降【おとぎ話的な格好をして現代的なギャグを言う】様子=ディズニーというスラングギャグが急速に世間に広まったほどです。

つまり、間違いなくディズニーの新しいスタイルを確立させたという事ですよね。



演出面でも最後のクライマックスの展開とか、かなり現代の価値観やトレンドを意識した魅せ方になっています。



そしてストーリー展開もよく練られていて無駄がない作りなのも見事です。


前作のプリンセスと魔法のキスが中盤明らかに中だるみがあったのに対して今作はよく組み立てられています。


もちろんメインのランタンのシーンはすごいですけど、そこに至るまでの酒場でのメンツとの邂逅をちゃんと終盤に活かす流れとか、中盤の祭りの描写とか素晴らしかったですね。


CGアニメーションの進化とこだわり


それとやはり今作からのCGアニメーションの進化は本当に目を見張る物があります。


元々手描き作品として構想されていた作品だけあって、2Dアニメーションの質感を残したCGアニメーションにこだわったとの事ですが、正にその言葉通りの仕上がりになってると思います。


ピクサーとはまた違う質感の、誰が見ても「ピクサーじゃないディズニー」だとわかるCGアニメーションが今作で完成された、そんな仕上がりです。


まるで2D手描きのディズニーキャラクターが飛び出してきたようなラプンツェルやユージーンのディテールは見事です。


それとやはり前述したラプンツェルの髪の毛のクオリティは本当に革新的な仕上がりだと思います。一本一本の質感等、紛れもない人間の髪の毛です。これはホントに凄い。


安定の楽曲力



そしてやはり音楽


久々のアラン・メンケンの手腕を十二分に堪能することが出来ます。


最も有名な楽曲はやはりランタンのシーンの「輝く未来(I See the Light)」ですが、個人的に最も好きなのは冒頭にラプンツェルが歌う「自由への扉(When Will My Life Begin)」です。


軽快なフォーク・ロックメロディとアレンジが最高で、マンディ・ムーア伸びやかで無邪気な歌声が最高にハマってます。


この曲本当にほぼ毎日聴いてますw


月並みですがアラン・メンケンやっぱすげーって思いました。



それと酒場での「誰にでも夢はある(I've Got a Dream)」も最高ですね。

あまりフィーチャーされませんがこういうコメディミュージカルの楽曲もアラン・メンケンの真骨頂だと思います。

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まとめ
【新生ディズニースタイルの完成】

上で触れられませんでしたが、今作のテーマは「夢」。ディズニー映画お決まりのテーマなんですが今作では「夢」についてより深く掘り下げた夢のその先についてのメッセージが込められています。


それは「新しい夢」


長年の夢を叶えたラプンツェル。

そしてこれまでの夢とは違う夢を見つけたユージーン。


「夢は一つじゃない。」という、これまでと同じようで全く違うテーマになってるんですよね。


この辺は前作のプリンセスと魔法のキスと似た部分があると思います。

ディズニーがこれまで描いてきたテーマにたに向き合い直すという姿勢が。


「夢を叶えたその後が本当に楽しいんじゃないか。また新しい夢を見つけるんだ。」


この台詞はこれまた月並みですけど本当に名言だと思います。



良質なストーリー、ギャグ、音楽、映像美、そして芯の通ったメッセージ。


盗賊のユージーンの描き方等細かい部分は正直言いたいこと色々ありますが、、、

それを差し引いてもやはり新たなCG時代のディズニーの代表作として、名刺代わりとして、誰にでも自信をもってオススメできる傑作だと思います。



はい。
という事で今回はこの辺で!


お付き合い頂きありがとうございました。


ではまた次回。


しーゆーねくすとたいむ。