ディズニー映画語り ホーム・オン・ザ・レンジ にぎやか農場を救え! | すきなものしか語れない

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元ディズニーシー長年単パサー。今はおもにディズニー映画中心に好きなものだけ勝手に語るつまらないブログです。Dヲタだった頃の記事は思い出として残してます。



はいどおも。


さて、今回も恒例のディズニーアニメーション映画史。時代は輝かしい黄金期・ディズニールネサンスと言われた1990年代を終えて【ディズニー第3の暗黒期】とも言われている2000年代の真っ只中です



前作の「ブラザー・ベア」は今はなきフロリダのアニメーションスタジオが閉鎖の直前に生み出した傑作でしたが大ヒットには至らず、伝統ある2Dアニメーションの廃止とフルCG主流の映画制作への直行していく時代の流れを止める事はできませんでした。


そしていよいよディズニーは2004年リリースの次回作をもって手描き2D映画から撤退する事フルCG映画制作への完全移行正式にアナウンス


これはアニメーション業界のみならず映画業界全体を揺るがすビッグニュースとなりました。


そんな状況の中公開されたのが、ディズニー伝統の手描き2Dアニメーション最終作(当時)となるこちらの作品でした。



(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)





 

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  ホーム・オン・ザ・レンジ     にぎやか農場を救え!

(原題:Home on the Range)


2004年

監督

ウィル・フィン

ジョン・サンフォード



データ

ウォルトディズニーアニメーションスタジオ45作目の長編アニメーション。


監督はドリームワークスからの出戻り組であるウィル・フィンジョン・サンフォードですが、発案と草案ポカホンタスの監督で知られるマイク・ガブリエル。最終的に形にしたのは前回記事で語った「リロ・アンド・スティッチ2」の監督であるマイケル・ラバッシュです。


音楽はヘラクレス以来7年ぶりとなるアラン・メンケン



ポカホンタス公開前から素案が挙げられ、水面下で何度も制作が進められては頓挫してを繰り返していた作品。


原作のないオリジナルストーリーです。

タイトルは同名の有名なカウボーイ・ソングから名付けられています。

西部開拓時代を舞台に、農場を奪われた牛達と牛泥棒の闘いを描いたウエスタンアクションコメディとなっています。


前述した通り【ディズニーの2Dアニメーション最後の作品】と大々的に銘打って公開されたメモリアルな作品。


しかしながら結果は評価・収益共に非常に厳しいものとなってしまい、日本ではなんと劇場公開すら見送られてしまいました


ビデオスルーにて翌年リリースはされましたが、ディズニー・アニメーション・スタジオ作品の劇場公開見送りは90年代移行では「ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!」以来となる異例の出来事でした。(共に邦題に〜を救え!が付いてるのは…きっと偶然ですw)


しかしながら、そのどこかノスタルジックなストーリー・演出・キャラクター等から特に初期のディズニーアニメーションファンからは高い支持を獲続けている作品でもあります。


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あらすじ



昔々のアメリカ西部。


マギーという名の雌牛は今正に我が家を失おうとしていた。彼女の居た牧場はアラメダ・スリムという大悪党に牛を全て盗まれ破産に追い込まれたのだ。牧場は競売にかけられ、ただ一頭残ったマギーはパールという女性が営む「楽園農場」に引き取られる事になった。


最初はマギーを警戒した先住動物達も彼女の明るさやユーモアに惹かれ、心を許していく。

しかしリーダー格である雌牛ミセス・キャロウェイだけは彼女への警戒を解こうとはしなかった。


そんな時、ついに楽園農場にも破産の危機が訪れる。昨今相次ぐ農場や牧場の破産に危機感を持った銀行が、支払いを急激に急かしてきたのだ。



期限内に750ドルを支払わなければ競売にかけられる事が決まった楽園農場を救うため、牛泥棒アラメダ・スリムの懸賞金に目をつけたマギーはミセス・キャロウェイ、グレイスと共に彼を追って旅に出る事を決意する。


そしてマギーは我が家を奪ったアラメダ・スリムへの復讐というもう一つの目的も胸に秘めていた。


こうして雌牛3頭による奇妙な大冒険が始まったのであった…


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感想



決して悪くありません。

けど決定的な何かが足りない

そんな映画です。

当時のディズニースタジオの状況がそのまま作品に(悪い意味で)出ちゃってる感じがしましたね。

培ってきた手描き2Dアニメーションの伝統とノウハウ。観たあとに何も残らない、子供が楽しめるエンターテイメントとして振り切った作りやかで個性的なキャラクター。 

これまでの(というより一昔前の)古き良きディズニーが大切にしてきた事が沢山詰まったまるで1970〜1980年代のような作品

良く言えばノスタルジーが沢山詰まっている。

そして悪く言えば「他に何もない」作品。

決定的なのは「名作を生み出そう」という意志全く作品から感じられないこと。

これまでの1990年代〜2000年代の作品にはどれも多かれ少なかれそういう野心「新しい挑戦」が必ずあったんです。

それがこの作品には全く感じられない

70〜80年代に似ていると言いましたが、まさにこの時代はディズニー第2の暗黒期だったわけですよ。ドル箱商法と言って低予算で無難な作品を作り兎に角収益を上げようという方針を公に押し出していた時期なんです。

非常にその頃の作品に空気感が似ているのがこの「ホーム・オン・ザ・レンジ」ですね。

正直、ここに来てこの作品を劇場公開スルーした日本側の気持ちも良く解ります。
ピクサーやドリームワークス等の他社アニメーションが乱立し良い成績を残してる中で、既に撤退を表明したディズニーの、この内容の2Dコメディアニメーションを、膨大な宣伝費を使ってわざわざ公開しようとはなかなか思えないよな、、と。


個人的には結構好きなんです。
というか大好物な作風なんですよね。

だけどこういうタイミングの作品だからこそ【古き良きディズニーを再現した】その先を、やっぱり魅せて欲しかったですね。

未来に繋がるようなその先を。




詳しくは↓以下↓で。

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確かな技術の詰まった演出やアニメーションと素晴らしい音楽




なんか辛辣な書き出しになっちゃいましたが、この作品、古き良きディズニーのエンターテインメント映画として観ると悪い所が見つからないくらい完成度の高い作品になっています。



多様なアイコンのキャラクター性を用意してぶつけるカラフルギャグが主軸を引っ張るという昔ながらの短編作品のような王道の展開


各キャラクターのアイコンもうるさすぎない絶妙なバランスでストーリーとも上手く溶け合っています。


西部劇を舞台にしているのも良いアクセントになっていて、構成も実は無駄がありそうでなくて、小山やコメディで飽きさせない工夫もしっかりされていて見事です。


単純な物語ながら演出魅せ方でそれを感じさせずしっかり起伏を付けているのも流石だなぁと思いました。



個人的にはピクサーになくてディズニーにあるのはこの展開の旨さなんですよね。

一本の映画の中に必ずある【中だるみ】を回避する術を知ってるんですよ。

それはすなわち一本の映画の中で子供を飽きさせない術ですよね。




今作では特にヴィランであるアラメダ・スリム【ヨーデル】という特性がその大きな1つですね。丁度よい中盤の中だるみしそうなタイミングで初披露されるんですがこれは上手いなぁと思いました、本当に。

そしてやはり外せない話題の1つが音楽。
アラン・メンケンの久々の参加です。

これまでの作品のような派手さのある楽曲は少ないんですが特に「小さな楽園」という曲は、もしかしたらアラン・メンケンの曲の中で一番好きかもしれないです。カントリーが好きだからでしょうか。作品に優しく寄り添う名曲です。

反対に作品とは無関係にアラン・メンケンのが全面に出たのが「太陽をさがして」という曲。
これはアラン・メンケンが2001年の9.11事件を受けて制作した曲で、非常に暗く重苦しい雰囲気をはらんだ曲になっています。

劇中でもマギー達が仲違いをした悲しめのシーンで使用されるのですが、それにしてもやはりこの曲はコメディ映画である本作において浮いてしまっているのは否めないです。

それくらい真に迫った、心を震わされる曲です。

この曲をこの作品に使用した事については賛否あるんですが個人的には、作品の為のアラン・メンケンじゃなくてこういうパーソナルな曲を聴けたのは嬉しかったですけどね。



詰めの甘いプロットと懐古主義に留まった全体クオリティ



上記のように非常に小気味よいカウボーイコメディに仕上がっている本作ですが、やはりどうしてもあと1つ何かが足りない感は否めません。

圧倒的な個性とか驚くアイデアとか強いこだわりとか、そういうのが見えないんですよね。

リリース当時早々に観たのを今でも覚えてるのですが、その時の第一の感想は「どうして今コレ作ったんだろう」でした。

今観ても同じような事をやはり感じてしまいますね。

懐かしのディズニー感というのがこの作品の個性ではあると思うのですが、それだけではやはり1つの作品の魅力としては足りないんですよね。

上述したアラメダ・スリムのヨーデルのシーンとかもアイデアは良いのですがその表現シーンはまさしく「ダンボ」の【ピンクの像】のシーンそのまんまです。彷彿とさせるとかのレベルじゃないんですよね。

そこにプラスしてやはりこの作品ならではの工夫や魅力が欲しかったです。


それと小さな事ですが、ストーリープロットで気になるのはパールの楽園農場の破産の経緯です。

彼女の農場は他と違いアラメダ・スリムに盗みに入られていません

銀行が支払いに厳しくなっているという補足はありますがつまり農場の破産に関してはアラメダ・スリムというよりは自己責任な部分が大きいんですよね。もちろん農園は色々厳しいのわかりますが…パールに同情仕切れないというか…

これが意図してなのか詰めが甘いのかわかりませんが、ちょっと物語に入り込めなかった1つの要因でした。

折角助かってもまた遅かれ早かれ同じことになりそうな気がして…



それと終盤で明かされるリコというキャラクターの正体
これは意外性あってよかったですが、なんとなく中途半端な演出とキャラクターだったのは残念でしたね。裏の大ボスくらいしちゃっても良かったと思うんですけどね。

まぁコメディ作品なのでストーリーの細い所にケチつけるのはあれですけど、何となく詰めの甘さはちょっと気になりました。

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まとめ【時代に押し流されたディズニーの原点】



自分が好きなのはやはりこういうディズニーなんですよね。それは間違いないです。

深みや映画性を追求した90年代・2000年代前半の作品はなんだかんだ言って未だにディズニーファンを中心に高く評価され続けています。
「ノートルダムの鐘」や「トレジャー・プラネット」等がその代表ですよね。

ただこういうホーム・オン・ザ・レンジのようなたあとに何も残らない純粋なファミリーエンターテイメント作品ってイマイチ評価されにくいんですよ。

ヲタク心をくすぐらないんでしょうね。


それは絶対そうなんです。


そしてこのタイミングで、ディズニー2Dアニメーション最終作という看板を背負わされてしまったというのも酷な話だと思います。


全体的には間違いなく完成度の高いザ・ディズニー・コメディとして仕上がっているとも思います。



それにしても、この作品には決定的な「何かが足りない」というのは確かです。

伝統のディズニーアニメーション45作目の作品として。


思うにその一番は「向上心」なのかなと思います。無難な作品を置きにきてしまった雰囲気が、なんとなく作品全体から伝わるんですよね。


ビデオスルーの判断をした日本側の判断は、正直正解だったかなと思いますね。


それでも自分は「子供に見せるオススメのディズニー映画は」と言われたら、この作品を真っ先に挙げますね。

ファミリーコメディとしては本当に良くできた作品なので。


色々な意味で、本当にこの時期のディズニーの状態を表した作品だったと思います。


そして、始めは怒りを覚えたフルCG映画への方向転換を「これは正しい選択だったかもしれないな」と、これを観たあとに初めて思えた、そんな作品でした。







はーい。


ということで今回はこの辺で〜。






お付き合い頂きありがとうございました。








しーゆーねーくすとたーいむ。