ディズニー映画語り リロ・アンド・スティッチ | すきなものしか語れない

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元ディズニーシー長年単パサー。今はおもにディズニー映画中心に好きなものだけ勝手に語るつまらないブログです。Dヲタだった頃の記事は思い出として残してます。



はぃぃどぅぅも。



さて、今回も恒例のディズニーアニメーション映画史。時代は輝かしい黄金期・ディズニールネサンスと言われた1990年代を終えて【ディズニー第3の暗黒期】とも言われている2000年代に突入中です。


前作の「アトランティス 失われた帝国」ではウォルト・ディズニー生誕100周年記念作品として「美女と野獣」の監督コンビが再タッグを組み本格的なSFファンタジーアドベンチャーを創り上げ世に放ちましたが、収益面・評価面ともに突き抜ける事ができず


さらにはドリーム・ワークスの「シュレック」ピクサー作品の連続ヒット等、完全に他社のフルCG作品に押されまくる形となり、映画以外の部分も含めてディズニー社全体には暗い本格的な暗雲が立ち込めていました。


そんな中、水星の如く現れたこの作品がこの時期のディズニースタジオ、いや、ディズニー社全体を救う正に救世主となったのです…





(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)



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  リロ・アンド・スティッチ

(原題:Lilo & Stitch)


2002年

監督

クリス・サンダース

ディーン・デュボア



データ

ウォルトディズニーアニメーションスタジオ42作目の長編アニメーション。


監督は「美女と野獣」「ムーラン」に携わってきたクリス・サンダースと同じく様々なディズニー作品に携わってきたディーン・デュボアによる初監督コンビ


脚本もこの2人が監督と兼務で担当しました。


音楽は劇伴のベテランアラン・シルヴェストリ

さらに劇中には沢山の「エルビス・プレスリー」の楽曲が使用されているのも大きな特徴です。


原作の無い完全オリジナルストーリー。

違法な遺伝子実験で生み出されたエイリアンと両親を亡くした変わり者の女の子の出会いと交流を描いたSFコメディです。


ディズニーはこの後ジョン・マスカー&ロン・クレメンツコンビによる大作公開が控えており、このリロ・アンド・スティッチはそれと平行して8000万ドルという低予算で制作された所謂サブプロジェクトでした。

バーバンクの本家スタジオではなく、フロリダのディズニー・リゾート内にあるアニメーションスタジオ制作されたムーラン以来の作品です。


同じ低予算で成功を収めた「ダンボ」をお手本として制作され、同じ水彩画を使用しクリス・サンダースの緻密で繊細な制作姿勢により徹底的に拘りぬいたアニメーションの圧巻のクオリティは現在でも非常に高い評価を得続けています。

低予算という事で近辺のディズニー作品のようなビッグスターの声優起用を行っていないのも特徴的で、監督のクリス・サンダース自らスティッチの声を演じこちらも大きな話題となりました。

ちなみに後述しますが今作はこの後長きに渡り沢山の続編が制作されるのですが、クリス・サンダースディズニーを離れた後もスティッチの声を演じ続けています。

興行収入自体はダイナソーには及ばず決して特大ヒットとは言えない結果でしたが、公開から1.2年程でスティッチのキャラクターが異例の大ブレイク

多数のキャラクターグッズが販売され、テレビシリーズや続編の公開、さらにパークではアトラクション化だけではなくスティッチを主役としたイベントも二年連続で開催


ショーやパレードだけではなく【スティッチがパーク全体をジャックする】というコンセプトのもと、至るところにスティッチのプロップスが設置される等異例の盛り上がりをみせ、、




果にはなんと日本(ウォルト・ディズニー・ジャパン)が独自に沖縄を舞台にしたスティッチのオリジナルアニメーションシリーズを制作・地上波放送がスタートする等正に社会現象化する程人気は高騰しました。

スティッチは全世界でグッズの総売上がミッキー・マウス、くまのプーさんに次ぐ第三位に浮上。街にはスティッチのキャラクターグッズを身に着けた女子高生達が溢れました。

さらに最初のテレビシリーズでは映画本編には登場しなかったキャラクター達が大きな人気を集め、本編を上回る程の認知度を得る等【ディズニー映画のテレビシリーズ化作品】最も成功した例としても注目されました。

映画の興行収入ではなく、その後の爆発的なブーム化による関連収益によりそれまで沈んでいたディズニーは大いに活気を取り戻したのです。

この功績は非常に大きく、正に低迷していたディズニーの救世主としてブームが沈静化した現在でもスティッチはディズニーの代表的なキャラクターの座に名を連ね続けています。




この後もう少しディズニーの暗黒期は続く事になるのですが、このスティッチの爆発的なブーム化が無かったらこの後の第三次黄金期は間違いなく無かったと思います。

そういう意味でスティッチはディズニーの歴史の上でも大きなキーポイントだったと思いますね。

ただこのブームは良いことばかりじゃなくて、キャラクターの先行ヒットによって元々の作品のテーマや概要自体が蔑ろにされてしまうという、これまでのマリーやプーさんと同じ現象が起きてしまったのも事実でした。

それはまぁ、下の方でまた語りますね。

てか余談ですが、2004年にディズニーランドで「スティッチのグッズありますか?」てキャストさんに聞いたら「スティッチ?…一つもありません。」てニッコリ返されたの、今でも忘れられませんw


あらすじ



宇宙の彼方・銀河連邦有するトゥーロ星。
ここでは違法な遺伝子実験で生命体を創り出したジャンバ・ジュキーバ博士の裁判が行われていた。彼が生み出した試作品626号はスーパーコンピューター並みの知能と破壊衝動をプログラムされた邪悪な生命体であり、裁判にて追放の処分が下される。

しかし626号は艦隊から脱走。辺境の星【地球】に漂着する。

時を同じくしてハワイのカウアイ島では、とある小さな家族が家庭崩壊の危機に陥っていた。
変わり者の5才児リロは事故で両親を亡くしますます内向的になり、周囲とうまく関われない日々を送っていた。姉のナニが必死に家庭を守ろうと奮闘するが、福祉局はナニに養育能力が無いと判断しリロを引き取る為に局員のコブラ・バブルスを派遣する。

そんな中、愛を知らないエイリアンと愛を失った少女が出会い、物語は動き出すのであった。

感想

はい、という事で。

言いたい事がいっぱいありますw

というのも、リロ・アンド・スティッチは個人的に「ファンタジア」「くまのプーさん」と並ぶ三大ディズニー作品の一つだからです。

大好きなんです。

誇張ではなく、長編作品6つと沖縄版も含めたテレビシリーズ全話、全て観てます


シリーズに関してはまた追々語っていくとして、まずはこの第一作。

ある意味一番不憫な作品かもしれません。

スティッチのキャラクター人気で作品が置き去りになってしまったからです。

なんならエンジェルやルーベンが活躍しガントゥが本領を発揮するテレビシリーズの方が人気があったりするからです。


まぁちょっとその辺も含めて↓以下↓で熱く語っていきたいと思いますw



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一本の傑作映画として…





まず声を大にして言いたいのは…

リロ・アンド・スティッチは

子供向けの「キャラクター映画」ではありません。

しっかりとリアルなテーマを持った非常に見応えのある一本のSFファミリーコメディ映画の傑作なんです。


あらすじを見ていただければわかる様に、主役は家庭崩壊の危機に必死に藻掻くナニとリロという姉妹です。

両親が事故で急死し、取り残された19才と5才の姉妹が奮闘する作品です。


スティッチはそんな姉妹の接着剤のような役割として登場し、同時に愛を知らない彼がリロとナニに関わる事で成長する過程がもう1つの見処となっています。


よくある【ボーイ・ミーツ・ガール+E.T.】モノと言えばそれまでなのですが、このリロとナニの悲しいバックボーンが見れば見るほどボディーブローのように効いてくるのと、同種の他の映画と違うのは「正常ミーツ異常」ではなく「異常ミーツ異常」である事。



これがこの作品の最大の特徴だと思ってます。


リロが物凄い変わり者なんですよ。

キャラではまったくスティッチに負けてません

ここをもっともっと皆に知ってほしいんですよね。


そこには悲しすぎる家庭環境が大きく影響しているんですが、屈折してしまった5才児リロが失った愛を求めて藻掻く様子がホントに見ていて苦しくなります。


そこに同じ変わり者のスティッチが現れます。


同じ孤独を抱えた変わり者同士が接触し、お互いの救いとなる物語です。


子供にも、何より大人に観てほしい、もっと言うとりに馴染めず悩んでる変わり者にも観てほしい作品です。




この第一作を、キャラクターが大ブレイクした時にもっと大事にしてほしかったというのは今でも思いますね…


沖縄版でリロの立ち位置を他の女の子に挿げ替えた時は流石にホントに怒りを覚えましたねw



誰でも楽しめる逸品なプロット


この作品の良いところは、押し付けがましくない事。色々な立ち位置から色々な見方で楽しめる事です。前述したリロとナニの悲しい家庭環境も決して物悲しく押し付けるわけではありません


全体にコメディを散りばめているので見易いですし、何より子供も普通に楽しめるドタバタ劇としてもちゃんと仕上がってます。


後半のドタバタなんかは正に逸品な出来だと思いますね。


そして変わり者のリロ、破壊本能しかなく愛を知らないスティッチ、家族を必死に守ろうとするナニ、それぞれが絶妙なバランスで描写され、どの立ち位置から観ても何かを感じれる作品になってます。


特にリロが連れ去られてしまった後のナニとスティッチのやり取りなんかは、見応えがありましたね。


ナニはリロへの想いを爆発させ、スティッチはリロから教わった事をナニに伝えます。


書いてるだけで泣けてきますねw


特にやはりナニは、あまりフューチャーされる事がないんですけど間違いなくこの物語の重要人物なんですよね。




まだ19歳という若さで一気に両親を亡くし自分だって悲しくて辛いだろうに、悲しみに抗いながら5歳の妹の為にデートを蹴って賢明に働き、仕事を探し、必死に家族を守ろうと奮闘する姿には胸を打たれます。


単純なドタバタコメディの皮を被ってますが、非常に様々な様子が複雑に絡んでるストーリーなんですよね。




圧巻のアニメーション



ストーリーの事ばっかり書いてしまいましたが、この作品の最大の特徴の一つはやはりこの拘り抜いた圧巻のアニメーションです。


これはドキュメンタリーを観ればわかりますが、この作品での監督のアニメーションへの拘りはそりゃもう半端ない物だったそうで、一ミリのブレやズレも許さず何度もアニメーターにリテイクをかけて創り上げたとのことです。


その成果が作品に存分に出ています。


低予算を微塵も感じさせない圧倒的に滑らかでナチュラルなモーション、そして水彩画で描かれた淡く美しい背景画、機械や建物・爆風やビームのエフェクトに至るまで全てを曲線で描くという徹底した鋭利物排除のデザイン


個人的にはてのディズニー映画の中でもトップクラスのアニメーションです。

この当時既に主流は3DCGアニメーションに移行しており、ドリーム・ワークスやピクサーのCG映画が台頭する中、ディズニーがずっと培ってきた2Dセルアニメーションの底力、意地みたいな物をこの作品に見た気がしました。


本当に美しいアニメーションです。


エルヴィス+ディズニー



今作はミュージカルシーンの一切ない作品ではあるのですが音楽面の工夫として、舞台がハワイという事もあり、リロが崇拝するヒーローとしてあの「エルヴィス・プレスリー」存在とその楽曲が作中何度も登場します。


本人の楽曲は勿論、今作の為に他アーティストによってカバーされた楽曲も多数あり聴き応え抜群なのと、この「プレスリー」が見事にこの作品にハマってるんですよ。


挿入歌の大半が既存の楽曲、しかも同一アーティストの楽曲というのはディズニーではかなり珍しい手法だと思いますが、これは素晴らしいアイデアだったと思いますね。



そんな中でも数少ないオリジナル楽曲である「リロの歌」「ハワイアン・ローラーコースター・ライド」がまた素晴らしくて、シーンとピッタリマッチしているのでミュージカルじゃないのにまるでそれと同様のインパクトをしっかり観てる側に残していきます。


このハワイアンテイストのオリジナル楽曲とプレスリーの楽曲が見事に融合して、ミュージカルじゃないのにこの作品独特の世界観を音楽で形成できているのが凄いです。




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まとめ【とにかく観てほしい!】



「どうせあの青いキモカワキャラの子供向け映画でしょ…」と敬遠してるそこのあなた


本当にお願いだから一度真剣に観てほしいです。


アニメーション、音楽、ストーリー…

全てに拘り抜いて作り上げられた大人も子供も楽しめる超一流のアニメーション映画です。


子供の頃見たっきりという大人の方にも、改めてもう一度観てほしいですね。

きっと感情移入するキャラクターが変わってると思いますし、全く違った感情を得ると思います。


自分は今でもこの作品の主人公はリロとナニだと思っています。


いや、スティッチ最高に大好きですけど。



あと言い忘れましたけどサブキャラクター達も最高に良い味出してて、作品を盛り上げてくれています。


ただこれに関しては続編で皆本領を発揮してくるのでその時また詳しく語りますね。

特にガントゥとかは…w




兎に角!



規格外のキャラクター大ブレイクに置いていかれてしまった不遇の名作「リロ・アンド・スティッチ」…


低予算でここまでのクオリティを誇る化け物なのにパッとした評価を獲られていない「リロ・アンド・スティッチ」…


キャラクターはこんなに人気なのに地上波放送とか全然されない「リロ・アンド・スティッチ」…





何が言いたいかというと、、





絶対もっと評価されて良い作品だということです!!







熱くなりましたごめんなさいw




ということで皆さん、未見の方は是非に是非に、先入観を抜いて一度御覧になってみて下さい


何卒、、。




ということで今回はこの辺で!

キリがなくなりそうなのでw



長々とお付き合い頂きありがとうございました。





しーゆーねくすとたいむー。