ディズニー映画語り ノートルダムの鐘 | すきなものしか語れない

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元ディズニーシー長年単パサー。今はおもにディズニー映画中心に好きなものだけ勝手に語るつまらないブログです。Dヲタだった頃の記事は思い出として残してます。


はぁいどぉぅもぉ。


さて、今回はディズニーアニメーション映画史。時代はついに1990年代、ディズニーアニメーションスタジオの第二黄金期【ディズニー・ルネサンス】と言われている時代の真っ只中。


暗黒期と呼ばれた1980年代の低迷から、起死回生の一本「リトル・マーメイド」と共についにその財政と世間の評価・信頼大きく回復させる事に成功したディズニー。


さらに「美女と野獣」では、そんなリトル・マーメイドを遥かに凌ぐ収益と共に【アニメーション映画史上初のアカデミー作品賞ノミネート】という偉業も成し遂げ、続く「アラジン」ではさらにその上を行く興行収入を記録し「ライオン・キング」では正にルネサンスの絶頂期とも言える歴史的なメガヒットを実現します。


しかし、正に飛ぶ鳥を落とす勢いだったディズニースタジオが次の大本命として公開したポカホンタスは、成功を納めると同時に多方面で様々な物議を醸した異色作でもありました。


そしてその翌年間髪入れずに公開されたこの一本もまた、ポカホンタスに引き続くディズニーアニメーション史上で1.2を争う程の異色作となったのです。



(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)



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  ノートルダムの鐘

(原題The Hunchback of Notre Dame)

1996年

監督

ゲイリー・トルースデール

カーク・ワイズ



データ

ウォルトディズニーアニメーションスタジオ34作目の長編アニメーション。


原作は「レ・ミゼラブル」でも知られるフランスの小説家ヴィクトル・ユーゴーの作品「ノートルダム・ド・パリ」


15世紀のパリを舞台に、ノートルダムの鐘つき男として大聖堂に監禁されて育ったカジモド、ジプシーとして追われるエスメラルダという女性を中心に描かれるドラマチックミュージカル


これまでのディズニー作品同様、原作からハッピーエンドに改変されてはいますが、所謂オールオッケーなハッピーエンドではなくポカホンタスに続き「主人公が想い人と結ばれない」結末がとられている他、描写や演出・テーマに聖書等からインスパイアされた重苦しく生々しい表現が採用される等、ディズニー長編アニメーションの中でも異彩を放つ作風をもった作品。


又、ディズニーアニメーションで初めて制作予算が1億ドルを超えた作品でもあります。


1993年から本格制作が開始され【美女と野獣の再来】を狙うスタジオ長のジェフリー・カッツェンバーグの激推しにより同作の監督2名も就任。


さらに映画の重要な舞台となるノートルダム大聖堂等を含むパリへの大規模取材旅行も敢行されました。



監督を務めたのはあのメガヒット作品「ライオン・キング」を手掛けたゲイリー・トルースデールカーク・ワイズのコンビ。


脚本は「ライオン・キング」「モンスターズ・インク」ジョナサン・ロバーツや「ヘラクレス」のアイリーン・メッチ、「ターザン」のタブ・マーフィー、「102」のノニ・ホワイト等、実力者が揃い踏み。


音楽と楽曲は「リトル・マーメイド」「美女と野獣」「アラジン」三作連続でのアカデミー賞受賞という快挙を成し遂げ、ディズニーを代表するミュージックメイカーとなったアラン・メンケン

後に「ポカホンタス」「魔法にかけられて」等の人気作も手掛けるスティーブン・シュワルツが作詞を担当しました。



主人公のカジモドを演じたのはベテラン俳優のトム・ハルス。日本語版は石丸幹二さん。

お二人ともに2023年「ワンス・アポン・ア・スタジオ」でも同役を再演されました。


ヒロインのエスメラルダ役に著名女優のデミ・ムーア。日本語版は保坂知寿さん。


ヴィランのフロロー役には、その独特な低音で様々なディズニーの悪役キャラクターを演じたトニー・ジェイ。日本語版は日下武史さん。


フィーバス隊長を実写版「美女と野獣」でモーリス役を務めたケビン・クラインが演じています。

日本語版は芥川英司さん。



興行収入面では前作までと比べ少々ダウンしてしまい、ここまで続いていた使用楽曲のアカデミー賞受賞久々に逃した作品でもありましたが、収益としてはしっかりと成功と言える数字に届いています。


評価面では特に批判家陣からはこれまでにないシリアスで重厚な作風アニメーションや音楽の質の高さ【ディズニー映画の新時代】として非常に好評を博す一方で、その大人向けに振り切った内容ファミリー層のディズニー離れを加速させる事にもなり、一般層からの人気は今ひとつに留まる事になりました。


又、原作改変による批判を根強く受け続けている作品でもあります。


しかしながら、その他のディズニー作品と一線を画する作風強烈な内容公開から年月を追うごとにコアなディズニーファン映画ファンからの圧倒的支持を集め続け、ディズニー映画の中でも随一のカルト映画として絶大なコア人気を獲る作品に成長。


【ディズニーファンが本気で推すコアなディズニー映画】筆頭作品として、現在でも強く愛され続けている一本です。


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あらすじ



舞台は15世紀のパリ。

移動型民族ジプシーを忌み嫌う最高裁判事フロローが、とある子連れのジプシー女性を殺害した事から物語は始まる。


ノートルダム大聖堂の司祭に殺人を咎められ、残された赤子を引き取ったフロローだが、大聖堂に監禁して育てる事を決める。そして赤子には「出来損ない」という意味のカジモドという名前をつけるのであった。


20年後。


フロローの言いつけ通りノートルダム大聖堂の鐘を衝きながら閉じこもって生活するカジモドに、ある日転機が訪れる。


唯一の友人である三人組の石像に進められたカジモドは、フロローに黙って大聖堂を抜け出して道化の祭りに参加し、悲しい目に遭っていたところをジプシーの女性・エスメラルダに救われ、彼女に恋をしてしまう。

そこから彼の運命は動き出していくことになる…


一方祭りでエスメラルダと揉めたフロローは彼女を捉えることに恐ろしい執念を燃やし、護衛隊長のフィーバスもまたエスメラルダ・カジモドと触れ合う中でジプシーに異様な敵対意識を顕にする上司のフロローへ、疑心を強めていくのであった。


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感想




ディズニーファンが好きなディズニー映画筆頭としてある意味とても有名な一本。


前作のポカホンタス同様、いやそれ以上に一本のミュージカル映画としては非常に良く出来ています。まさに渾身の出来栄え


ただやはり、ファミリーエンターテイメントの覇者であるディズニー映画として観たときに…という所感は個人的にどうしても拭えないんですよね。


美女と野獣の時に「この映画がひとつも面白くないと思う人は他のどのディズニー映画を観てもきっと駄目かも、、」と書きましたが、ノートルダムの鐘に関しては「この作品が大好きな人って、もしかしたらディズニー作品は基本駄目かもしれない」って感じなんです。


いや本当に情熱かけて作られた素晴らしい作品なんですけれども。


そしてやはり長い歴史の中にこういう作品の存在絶対に必要なんですけれども。


…なんかこう…【甘くないケーキ】を思い出します。「甘いものが食べたくなかったらケーキは選ばないよ…」という。


ディズニー映画を求めている人にとって、一般的にはやはり選ばれにくい作品である事は否めないでしょう。


全くディズニーらしくないのかと言われれば全然そんな事はないのですが…


ただストーリーが大人向けというだったり重たいだけではなく、今作の最大の特徴はやはりディズニー長編アニメーション映画で唯一最も【宗教的概念】を強くテーマに内包させている点です。


これが、一部から嫌遠される大きな理由の一つであり、絶大なカルト的人気を誇る要因の一つでもあると言えるでしょう。



ただ、それを差し引いてアニメーション等の映像表現音楽キャラクター描写等のエンタメ作品として見たとしても間違いなく非常にレベルの高い傑作である事は間違いありません。



キャラクター力の復活




さて、この作品ではやはりその憎悪妬み嫌味羞恥等人の感情の負の部分を大々的に扱った重厚なストーリープロットやゴシック建築等を忠実にそして美しく描いた作画力等、アラン・メンケンによるオペラ音楽が取り沙汰される事が多いのですが、個人的な一番の評価点はここです。


そもそもディズニーはストーリープロットや奥深さや芸術性よりもキャラクターの個性や音楽によるエンターテイメントで名を挙げた映画会社です。


しかしこの年代のルネサンスディズニーは正直ストーリープロットや演出等に注力する一方で、主役級キャラクター達の個性や魅力に欠けているというのが実は個人的に凄く思っていたことで。


そしてサブキャラクターでそれを補っている感が顕著だったんですよね。



具体的にはアラジンジーニーライオン・キングティモンとプンバァポカホンタスミーコ達。



今回のそれに当たるのは石像の3人なのですが、そこだけに頼り切ることなくメインのキャラクター達の個性がしっかり立っているのが今作は本当に良かったです。


主役のカジモドにしっかり見える不器用だけど確かな優しさと実直さ、フロローの主役を喰う程の強烈で生々しい負のオーラ、、


そして何よりエスメラルダフィーバスがとても魅力的に描けているのが今作の最大のポイントだと思います。




このポジションのキャラクターを細部までしっかり手を抜かずに作り込んだ事がこの映画を何倍も魅力的な作品にしてくれてると思うんですよね。


ただ物語を動かす為の駒ではなくて、それぞれが信念アイデンティティをしっかり持っていてそれが交錯することによってドラマや物語が生まれているのが素晴らしいと思いました。


エスメラルダはほんとにディズニープリンセスに負けない魅力的な女性キャラクターですよね。




実写映画に劣らない人間ドラマと映像美




まぁこれは前述の通りです。

文句なしですね。

ディズニー映画でここまで生々しい人間ドラマ重厚なテーマ性のある物は今でもこの作品の他にないんじゃないでしょうかね。


映像美に関してはやはりノートルダム大聖堂は外観も内観も恐ろしい程の出来栄えです。


そしてライオン・キングのヌーの大群シーンからヒントを得たという街の群衆たちの描写やクライマックスの炎の演出、細かな動作や表情などが際立つキャラクターのモーションアニメーション等も本当に必見です。



ミュージカルシーン



音楽は非常に良いんだけれども、ミュージカルシーンに関しては個人的にはほんの少し印象深さと面白味工夫に欠けるかなとは思いました。


あくまで他のルネサンス期の作品と比べるとですが。


【遊び心】が少しだけ足りない気がしちゃいました。


中盤のミュージカルでのカジモドの天国の光とフロローの地獄の炎対比は非常に良かったし名シーン名演出だとは思いますが、やはりかなりの大人向けミュージカルですよね。




子供向け度外視の作り方




前作のポカホンタスと同様大人が本気で楽しめるアニメーション作りに比重が傾いた内容になっていますが、今回はそこにさらに宗教的な描写が付与されていて、より子供を無視した作り方が顕著になっています。


ポカホンタス記事と同じ内容になってしまうので割愛しますが…


ウォルトの言葉にある通り、子供が楽しめるというのがアニメーションの最大の個性だし武器であって、ディズニーはこの時期を除いて基本的にはそれをずっと実践してると思うんですよね。


映画でアニメーションから「子供心」をとるという事は最大にして唯一無二の武器自ら放棄するようなものなんですよ。


美女と野獣のヒットが全ての大元なわけですが、あの作品が実現した「大人も子供も楽しめるエンターテイメント」としての完璧なバランスはやはり本当に奇跡的な物であって、その後のディズニーの今作を含むシリアス路線作品は、そんな完璧なバランスからは正直掛け離れてしまっています。


まさに美女と野獣の呪縛


現在のディズニーがアナ雪の呪縛に囚われているように、この時期も【美女と野獣のアカデミー作品賞ノミネート】という呪縛に大いに囚われていた時期なんですよね。




いや良いんですけどね。こういう作品があって。


そして、今作も子供向けユーモア等をうまく盛り込もうと可能な限り努力してるのも、ちゃんと見て取れるんですけどね、、。




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まとめ




やはりここまで【大人向けのみ】振り切ったディズニー作品は他にあまりないですよね。


そのぶん見応えはたっぷりで大人には自信をもってオススメできる作品ですし、実際に現在でも非常にファンが多い人気作ですが、やはりディズニーの【ファミリーエンターテイメント】としてはどうなのかと言うのは何度観てもどうしても感じてしまいます。


今作でこれまでのルネサンス期を率いてきたジェフリー・カッツェンバーグがディズニーを離れた事もあり、次作からこの方向性は少しずつ軌道修正されていく事になるので、この作品は本当に今でも他に類を見ない最も【ディズニーらしくないディズニー作品】として大きな存在感を放っています。


この作品の批判家の評論に「ディズニー作品であある事を忘れる…」という文言がいくつかあります。


否定的な意見も書きましたが、これは見方によっては大きな誉め言葉であり最高の個性だと思うんですよね。


この作品がもたらしたディズニーへの功績というのは本当に大きいと思うんです。


今作をきっかけにディズニー作品にハマっていった大人達はすごく多いし、ルネサンス期の作品群の中で最もディズニー映画への間口を広げた作品である事は間違いないと思います。


本質根幹ファミリーエンターテイメント

これはこれから先もブレることはないでしょう。


その王道からは間違いなく外れています。


だけど【ディズニーはこういう作品も作れるんだ!】と世間に痛感させたこの作品は、やはり現在においても間違いなくディズニースタジオにとって大きな大きな財産であると強く感じますね。




「ノートルダムの鐘」は現在ディズニープラスで配信中です♪

ディズニーなんて子供向けかプリンセスばっかりでしょ…嫌遠している方にこそ一度は観て欲しい【シリアスディズニー】の傑作です!






はい。


というわけで今回はこの辺で!


いつも長文駄文にお付き合い頂き本当にありがとうございます。感謝です!



では、また次回!


しーゆーねくすとたぁいむー。


 

 






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