ディズニー映画語り 101匹わんちゃん | すきなものしか語れない

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元ディズニーシー長年単パサー。今はおもにディズニー映画中心に好きなものだけ勝手に語るつまらないブログです。Dヲタだった頃の記事は思い出として残してます。


はぃどぅもぉ。


さて、今回は2週目のディズニーアニメーション映画史時代は1960年代、ディズニーアニメーションスタジオの停滞期とも言える時代へ。


シンデレラの大成功のおかげで傾いていたスタジオは完全に持ち直し、続く「ピーター・パン」「わんわん物語」大ヒットを記録し、勢いにのっていたディズニーですが「眠れる森の美女」の収益的失敗とウォルトのディズニーランド運営やテレビ事業への事業拡大で再び窮地に追い込まれていきます。


そんな中公開された次作は、これまでのディズニーの伝統を大きく覆す重大な転換期と言える1本となりました。


(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)


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  101匹わんちゃん

(原題:One Hundred and One Dalmatians)
1961年
総監督 
ケン・ピーターソン
監督
ハミルトン・ラスク
クライド・ジェロニミ
ウォルフガング・ライザーマン

データ


ウォルトディズニーアニメーションスタジオ17作目の長編アニメーション。


「眠れる森の美女」の赤字を挽回するために、その作風から技術方式まで、大きくスタイルを転換させて制作された1本です。


原作はイギリスのドディー・スミスによる1956年の小説。出版されてから程なくしてウォルトが交渉の末映画化権を獲得しました。 

基本的には原作を踏襲しているものの、ストーリー展開やキャラクター名称など細部に変更点も多かった今作ですが、原作者のスミスは特にクルエラを中心に映画を絶賛

ウォルトへの手紙では「99%満足」と語り、彼と原作者との関係性の中で最も円満な例の1つとなりました。


今作の最も大きな特徴はアブ・アイワークスが提唱したトレスマシンによるゼログラフィ技術の初の本格導入


簡潔に説明すると、これまで1つ1つ膨大な時間をかけて行っていた作業を機械を使って時間と人件費を削減しながら効率的に行う事が可能となった…というところです。


これによりアニメーションの画風に大きな変化が現れる事になるのですが、何より「眠れる森の美女」の失敗で閉鎖の危機に陥っていたスタジオにとってこの技術は大きな救いとなりました。



制作を指揮したのはケン・ピーターソン

ベン・シャープスティーンの後継として1960年代までのディズニー作品を支えた人物です。

 

監督を務めたのは当時のディズニーの中核を担っていたクライド・ジェロニミハミルトン・ラスクベテランアニメーション職人集団であるナイン・オールドメンのメンバーウォルフガング・ライザーマン


脚本とストーリーはウォルトから直々に一任されたビル・ピートが単独で担当。

ピノキオ以降の数多くの長編作品を手掛けてきたストーリークリエイターです。

ストーリーと脚本をクリエイターが1人で担当した歴史上初めてのディズニー作品となりました。


音楽はジョージ・ブランズ1960〜1970年代にかけて多数のディズニー作品を手掛けたアーティストです。楽曲制作はメル・レブン3曲が劇中で使用され、中でも「クルエラ・デ・ビル」は高い人気を獲得しました。


ロンドンを舞台に飼い犬として暮らす2匹のダルメシアン犬の子供達と、それをつけ狙うクルエラの追走劇を描いたアニマルアドベンチャー



ダルメシアン犬の父親・ポンゴを演じたのは低音ボイスが特徴的なロッド・テイラー
日本語版は池水通洋さん。

ポンゴのパートナー・パディータリサ・ダニエルズが演じたましたが収録途中に私生活が理由で降板し、残りをケイト・バウアーが引き継ぎました。日本語版は松金よね子さん。

ポンゴの飼い主ロジャーを演じたのは「サウンド・オブ・ミュージック」のや「リトル・マーメイド」のグリムズビーでも有名はベン・ライト
日本語版は納谷六朗さん。

パディータの飼い主アニータ役にはリサ・デイヴィス。日本語版は一城みゆ希さん。

ヴィランのクルエラ役にはこれが最後の出演作品となったシンデレラのナレーターやメリー・ポピンズの老婆役でも知られるベティ・ルー・ガーソン日本語版は平井道子さん。


これまでのディズニー長編作品と比べると比較的低予算・短期間で制作された作品でありながら、興行収入としてはアニメーション映画史の記録に残るほどの特大ヒットを記録し、経費を削減して制作されたという事もあり、収益面では大きな成功をを収めます

評価面でも、一般評価・批判化レビュー共に大きな絶賛を獲得し、主に沢山のダルメシアンを見事に描いたエンターテイメントとしての演出の良さや、これまでの【おとぎ話】の世界観から脱却した気取らないリアルな作風、ヴィランのクルエラのキャラクター性の素晴らしさが多方面から称賛されました。


この作品の成功はスタジオの存続を救っただけではなく、今後のディズニー作品が次第に【比較的低予算のラフな作風で収益を上げる】という新たな方針と【博打性の高いプリンセスムービーからは離れ、手堅いアニマルムービーへ】という暗黙の傾倒へと向かっていく大きな転機となり、さらに、ダルメシアン犬の人気が世界的に急上昇する等の社会的な影響ももたらしました。


現在においてもその存在は評価され続け1996年2000年にはそれぞれ実写映画も公開されその知名度をさらに拡大
さらに2021年には今作のヴィランであるクルエラ・ド・ビルを主役としたスピンオフも公開される等その話題は今も尽きることはなく、ディズニーが誇る代表作の1つとして親しまれています。


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あらすじ



ロンドンのとあるアパート。

売れない作曲家であるロジャーと暮らす飼い犬ポンゴは代わり映えしない日常に退屈を感じていた。

ロジャーが結婚すれば退屈な日常が変わると思い、彼の伴侶となる女性を窓から物色していた。

そこに現れたのは同じダルメシアンのパディータとその飼い主の女性アニータ。

これは逃せないとすぐさま行動を起こしたポンゴの活躍により、無事2人は結婚する事となり、ポンゴもパディータと結ばれる。

月日は流れパディータは子供を身籠り、その出産が目前に迫っていた。

そんな時、アニータの幼馴染で毛皮に異常な執着を持つ女性・クルエラがロジャー宅を訪れたのをきっかけに、平和なわんちゃん家族は前代未聞のトラブルに巻き込まれていく事になるのであった…。

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感想




最初に観た時は正直良くも悪くも平均的な作品だなぁと思っていたんですけど、改めて観るとファミリーエンターテイメント映画として非常に良く出来た作品だと思いました。

動物が人間の様に喋るという子供が観て楽しめる単純明快な設定ながら、どこかシニカルな雰囲気も漂うリアルさを持った大人も引き付ける独特の世界観と、強個性のヴィラン、画面狭しと躍動する101匹のダルメシアン犬達の大移動というインパクト…。

映画としてのストーリーの深みテーマ性、おとぎ話を舞台にしたディズニー作品のような重厚感ありませんが家族揃って気軽に観て楽しめる、まるで遊園地のアトラクションのような作品です。

スリルアクションアドベンチャーギャグミュージカル、抑えるところをしっかり抑え、大人への楽しみ方も忘れず提示し、全てにおいてエンターテイメントの域を出ていない…バランスが兎に角見事な1本です。


醸す独特な味



重ねてにはなりますが今作はあらゆる意味でディズニー映画史の大きなターニングポイントとなっています。

様々な要素が重なり、今作から明らかに作品全体の雰囲気がこれまでの物とは大きく変化しました。

その大きな要因の1つが、今作から導入されたゼログラフィによる粗く硬めな線のアニメーション画風特に背景をはじめとした全体アニメーションの質や趣が今作からガラっと変わっています。

ディズニークラシック特有色合いの鮮やかさ滑らかな背景描写がなくなり、どこか淡白で硬く雑多な印象になってしまっているのは正直間違いありません。

ちなみにウォルトはこの方式にギリギリまで反対したようで、最後までクリエイターの1人ケン・アンダーソンとこの件で対立


背景にもゼログラフィを使用しようとゴリ押ししたアンダーソンを、ウォルトは生涯許さなかったと言われています。



ただこの画風の変化は決して悪いことだけではなくて独特の味のある雰囲気と、細部の緻密さを生み出すことに成功してると個人的には思います。



そして今作は特に、その画風作品の雰囲気奇跡的に非常にマッチしてるんですよね。

それと、音楽面でもこれまでのミュージカル最重要主義から一転、この作品から目に見えて所謂【控えめ】な使い方になっていて、これかなり大きいと思うんですよね。BGM無しのシーンとかも結構あったりします。

これらの要素が、これまでの賑やか壮大ファンタジー作品とは違う、ただの子供向けではないちょっとアンニュイシュール雰囲気を生み出してるんです。

この空気感は今後のディズニーの作品群にもしばらく受け継がれていく事になり、この作風が好きか嫌いかによって1960〜1980年代のディズニー作品の評価大きく変わってくると思っています。

ギャグセンスもやっぱり目に見えて現代的というか、シュールになっています。

冒頭のポンゴの語りとか、ロジャーがクルエラの曲で悪のりするシーンとか。

クルエラ・デ・ビル



あとは今作を語る上で欠かせないのは悪役のクルエラ・デ・ビルです。

このキャラクターは伝説のアニメーター、マーク・デイビスがそのキャリアの最後に生み出したヴィラン。

この奇抜個性に秀でたキャラクターデザインとアニメーションは原作者のドディ・スミスをはじめ多方面から絶賛されました。

特に同業者からの評価が非常に高く、ディズニーのレジェンドアニメーター、ミルト・カールはこの素晴らしいキャラクターに嫉妬し、わざわざデイビスのもとを訪ね「必ずクルエラを越えるヴィランを生み出してやるからな!」宣言した程です。(これによりカールがクルエラを意識して生み出したのがビアンカの大冒険マダム・メデューサでした)。

マレフィセントファンタジーのヴィランクイーンなら、クルエラはリアルな現実世界の延長上にいる恐さを持ったヴィラン…といった感じでしょうか。

その仕草出で立ち立ち振舞、異様な執着陰険な物言いと皮肉、、いかにも現実世界にも居そうな生々しい【人間としての恐さ】を持った非常に魅力的なキャラクターです。

正直、ポンゴロジャー等の主役側のキャラクターのキャラ立ちがイマイチな分、この作品は最早ほとんど彼女の一人舞台と言えるでしょう。

ロジャーとアニータ



1つ、どうしても気になる事があるとすればロジャーアニータとのキャラクターとしての中途半端さです。


まぁヴィランのクルエラ個性強すぎなぶんこのくらいでも良いのかもしれませんが、せめてわんちゃん達を必死で探したり、何か行動を起こしている描写が欲しかったですね。



自分達の愛するわんちゃんがごっそり盗まれたのにイマイチ必死さがあまり見えず、、この二人が犬達を一生懸命探すシーン1つも無いんですよね。ポンゴとパディータまで居なくなっても尚、「不思議だ…」とか言いながらクリスマスツリー飾ったりしてるし…。


まぁ個人的に動物モノに対してちょっと敏感なところがあるおときちなので、一般的にはそんな気になるところではなないのかもしれませんが…。

この映画のメインはあくまでダルメシアン達とクルエラの対決ですしね…。


でもこの点は、後の「おしゃれキャット」とかの飼い主の描写の方が数段上手かったと思います。


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まとめ



前述の通り、100匹以上の犬達が画面狭しと大暴れするドタバタ劇という最大の特徴を最新技術のゼログラフィを駆使して見事に実現した今作。

もちろんコンピューターではなく手描きですからね。手描きによる無数の子犬たちがそれぞれちがった動作で動きまくるこのアニメーションはそれだけで必見に値します。

そこにクルエラキャラクター性やシュールとスタンダードを併せ持ったギャグが畳み掛けるように連鎖し、カーチェイス等も取り入れたアクションシーン見応え抜群

非常にハイレベルエンターテイメント作品に仕上がっています。


今作はディズニー映画の新たな可能性を切り開き、スタジオの窮地を救った作品ですがそれと同時に【低予算ディズニー時代】の始まりの作品でもあります。

大きな収益を上げたにも関わらず、それでもウォルトのアニメーション映画への興味再燃しなかったからです。

低予算でも良い作品、ヒットする作品が作れる事を今作で知ったディズニーは、みるみるうちにその方針へシフトをチェンジしていきました。

しかしやはり、この低予算短期間での所謂【ドル箱映画】最高傑作はやはりその最初であったこの作品だろうな、と今観ると改めて感じますね。

世界でのヒットと比べると日本では若干知名度が低めな気もする今作ではありますが、今観ても全く色褪せない素晴らしいファミリーエンターテイメント作品です。

未見の方には是非一度はチェックして頂きたいですね。




「101匹わんちゃん」は現在ディズニープラスで配信中です♪


はーい。



というわけで今回はこの辺で!



今回も長文駄文にお付き合い頂きありがとうございました♪



しーゆーねくすとたぁいむー。