2024中国茶産地訪問⑦岩茶岩韻の理解を深める夜 | 船橋市茶文化資料室

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引き続き5月の中国茶産地訪問のレポートです。前回のつづき。

 

今回の武夷茶訪問は武夷山に三日間滞在した。滞在した日の夜は2回ほど陳永霖先生のお店&茶室をお邪魔して岩茶の味理解について教えて頂くことにした。陳先生とは今回建甌で初対面だったが、昔からよく知っている岩茶作りの名手で、互いに共通している茶関係者は結構いる。建甌でグループでお会いした時、夜武夷山市に戻り、陳先生のお店をお邪魔することを約束した。

 

陳永霖。国家高級農芸師の資格の所有者。1986年から「建陽地区茶葉研究所」に入所し、1992年に「建甌市農業局茶業管理站」に転職。その後自分の会社を立ち上げ、「善善仙茗」という商品ブランドを岩茶業界で知名度を得ている。1980年代「建陽地区研究所」に在籍した頃、当時の所長、武夷山茶業界で最も権威的な存在である姚月銘氏の指導を受け、《武夷肉桂名欉優質高産栽培和初制加工技術》や《武夷肉桂名欉の生化特徴》などの論文を恩師の姚月明氏と一緒に発表している。つまり岩茶の理論と実践の両方の持ち主である。

 

岩茶は普段良く飲んでいるが、何となく味、特に「岩韻」への理解は浅い。約束をした夜、「水仙」、「肉桂」、そして「大紅袍」のそれぞれの「岩韻」はどのように理解をすればよいのか陳先生に伺うことにした。

 

陳さんの茶室に飾っている写真。若き頃の陳さんが《中国茶経》の編集者・陳宗懋先生と一緒に写っている。

夜、「善善仙茗」の水仙、肉桂、大紅袍三種(すべて正岩)を飲むことにした。贅沢の夜だった。淹れ手は「永霖茶業」のスタッフ。遅くまでお付き合いをしていただき、本当に申し訳なかった。

まず肉桂と老欉水仙の飲み比べ。

それから大紅袍を加え、徐々に品種の違いを理解していく。

どれも貴重なお茶なので飲みきれない分は陳先生が捨てずにグラス容器に淹れて取っておく。

大紅袍を飲み始めると、陳先生が大紅袍の特徴は肉桂と水仙と違って「中庸」という表現をした。調和された味の奥に水仙と肉桂と違い深い味わいも感じた。

岩韻は「岩骨花香」や「芳醇さ」など表現する言葉がある。清代の美食家として有名な袁枚(えんばい)は武夷茶を飲むと「....始覚龍井虽清而味薄矣;陽羡虽佳而韵遜矣。」訳すと龍井茶は清香であるが、味が薄く、陽羨の茶も良いが余韻は足りない。

 

岩肌と余韻。今の私ができる「岩韻」の表現だろう。

6月の茶会は陳先生の「純種大紅袍」を飲みました。紹介文はこちらへ