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Climax (クライマックス / 2013年マラヤーラム語版) 2013年 125分
主演 サナ・カーン & スレーシュ・クリシュナ
監督 アニル
"忠告を1つ…僕のように誰かに手助けはしないこと。君は君のキャリアに集中するべきだ"

 

 

 とある映画監督とプロデューサーは、次の映画企画に頭を悩ませていた。
 売れる映画を作るために、先ごろ自殺した事で話題の女優スプリヤーの伝記映画を作ってはと提案された監督は、彼女のことをよく知るがために苦い顔をする…
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 女優スプリヤーの最期は、自殺とも事故とも言われている。
 当初彼女は、その美貌と強気な性格で周りの恨みを買いやすい少女プーングディという名前だった。そのために映画女優宅の使用人職を解雇されたものの、近所に住むキャスティングディレクターのクマレシャンを介して新人女優を探していた映画監督ヴィクター・リーヌスに見出され、女優"スプリヤー"として映画デビューを飾ることに。
 デビュー作の人気とともに、すぐにスター女優となってタミル語映画にも呼ばれるようになり、映画監督R.K.(=ラームクマール)の協力により彼女はトップスターとしてセレブ界の仲間入りを果たす。時を置かずに2人は思いを交わし、R.K.の家で同棲するようになるが、ある日、彼女のファンを名乗る男がやって来てスプリヤーに自己紹介する…「こんにちは。以前にあなたのサインをもらった者です。僕はラフール。ここは我が家の別宅なんだけど…僕は、ラームクマールの息子ですよ」!!

 

 

挿入歌 Vinnin Kanlindiye

 


ニコニコ 80年代~90年代半ばまでセクシー系で人気を得た女優シルク・スミターの人生をアイディア元にして描く、舞台裏ものマラヤーラム語(南インド ケーララ州と連邦直轄領ラクシャドウィープの公用語)映画。

 本作に先駆けて、同じくシルク・スミターの生涯をテーマにした映画として、11年のヒンディー語(インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。フィジーの公用語の1つでもある)映画「ダーティ・ピクチャー(The Dirty Picture)」、13年のカンナダ語(南インド カルナータカ州の公用語)映画「Dirty Picture: Silk Sakkath Hot」も作られている。
 同年のうちに、タミル語(南インド タミル・ナードゥ州の公用語。スリランカとシンガポールの公用語の1つでもある)吹替版「Oru Nadigayin Diary」、テルグ語(南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語)吹替版「Gajjala Gurram」も公開。さらに英語吹替版、ヒンディー語吹替版もあるよう。

 うん。まあ、なんというか2時間サスペンスドラマ見てる感じな「映画としてのチャチさ」が前面に出まくってる映画で、「ダーティー・ピクチャー」を意識して見るとものすごい肩透かしになってしまう映画でしたわ。
 基本的に、登場人物たちが室内で言い合いしてるシーンがほとんどを占めてたり、主人公スプリヤーがあっさり映画スターになってたり、恋人になる男側主役がR.K.とラフールの父子だけって所などなどで「あ、この映画はあんまお金かけてないな」って匂いは濃厚ながら、より以上に女優映画という視点がなくて、単純な不倫映画になってる所・その行き着く先である映画のクライマックスの描き方に消化不良感が付いて回る感じ。
 映画構成としては、ハッキリと最後の展開から逆算して作ってる感じではあるけど、女優の生涯をモチーフにしているわりには映画舞台裏がそんなに出てこないし、セレブ女優のセレブな住居環境ばかりがクローズアップされるし、セクシー女優のセクシーさ表現も肩出し・ミニスカートによる足の露出・ボディラインのハッキリしたファッションってだけで最後まで持ってくからなあ…。主演のサナ・カーンは頑張ってたと思うけれど、なんかこの映画ではヘアスタイルのせいか化粧のせいか、時々トリシャーを彷彿とさせる顔してる感じ。

 そのサナ・カーンは、1987年(88年とも)マハーラーシュトラ州都ボンベイ(現ムンバイ)生まれのモデル兼女優。父親がケーララ出身のマラヤーリー系ムスリムで、母親はムンバイ出身なんだそうな。
 モデルを始めて、2005年の低予算ヒンディー語映画「Yehi Hai High Society」で映画デビュー。以降CMや広告界で活躍する中で、2006年のタミル語映画「E」からダンサー出演が続いた後、2008年の「Silambattam(突き合い)」で主役級デビューしてITFA(国際タミル映画賞)の新人女優賞を獲得。
 2010年の「Kalyanram Kathi(刃のカールヤンラーム)」でテルグ語映画デビュー、2011年には「Kool...Sakkath Hot Maga(クールで…ホットな野郎)」でカンナダ語映画にも主演デビューする。本作でマラヤーラム語映画デビューとなった後、2018年のWebドラマ「Zindabaad」から、Webシリーズにも出演。
 2020年、SNS上で芸能界からの引退を発表し、そのすぐ後にイスラーム教聖職者と結婚。「Face Spa by Sana Khan」と「Haya By Sana Khan」というベンチャー事業を始め、夫婦で「Hayat Welfare Foundation」という福祉財団を立ち上げている。

 セクシー系映画で映画デビューしているサナ・カーンのキャリアや経験も劇中のスプリヤー物語に対応させてたりすんのかなあ…と深読みできないこともないけれど、有名なシルク・スミターの翻案映画というよりは、単純な女優不倫映画というまとまり方をしてしまってる所が色々と中途半端であると同時に「女優業って、こんだけ男たちの相手をさせられるんだぜ」って出歯亀的な語り口を生んでしまってる。なんの問題もなく大女優にのし上がったスプリヤーのセクシーさ表現も一本調子なのが、より安っぽさを強調してしまっててね…。
 「ダーティー・ピクチャー」的な映画女優の悲哀を描く映画というよりは、「スタア誕生(A Star Is Born)」のような映画界を舞台にしたロマンス映画と見るべきお話だけど、それにしてはお相手となるR.K.のダメダメさが後半ずっと付きまとってきて、ロマンス的盛り上がりがなんもないのが…。「男側の情けなさ」「それでも延々続く恋愛」って点は「スタア誕生」的ではあるけれど。その辺がクライマックスに向けてたいした効果を生んでないように見えるのは、どちらも共通して「なんで恋愛がまだ続いてんねん」ってツッコみたくなるこちら側の問題なのかなあ…。うーむ。

 


挿入歌 Mayangan Kazhiyilla Oru Shalabathiinum

 

 

 

 

(。・ω・)ノ゙ Climax を一言で斬る!
「相変わらず、インド映画内に出て来る映画スターのファンは思い込みが強すぎゼヨ…」


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