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Deewana (愛は、狂うが如く) 1992年 162分(185分とも)
主演 リシ・カプール & ディヴィヤー・バルティ & シャー・ルク・カーン
監督 ラージ・カンワル
"これが、愛の力"

挿入歌 Payaliya (足環よ)

 

 

 人気歌手ラヴィは、今日も母ラクシュミー・デヴィに見送られて公演旅行に出発する。その裏で、叔父ディレンドラ・プラタープとその息子ナレンドラが、屋敷の全財産を狙って画策している事も知らずに…。

 高原地帯の公演中、特別な練習場を提供してくれた大家の義理の娘カージャルと仲良くなったラヴィは、そのまま恋に落ち帰路に着く前に正式に結婚する。これを知って喜ぶラクシュミーとは反対に、プラタープ父子は突然の計画破綻に怒り、なんとかラヴィとカージャルを亡き者にしようと警察まで借り出して2人を襲撃。ついにラヴィは、ナレンドラと刺し違えながら滝壺へと投げ出されてしまう…!!
 悲しみにくれるラクシュミーとカージャルは、ラヴィの死を忘れようとムンバイに引っ越していくが、そこで慎ましく暮らす寡婦カージャルを一目見て、恋に落ちたと迫る青年が現れる…!!

 

 

挿入歌 Sochenge Tumhe Pyar ([僕の目は君から離れない] 君を愛していようといまいとに関わらず)

 


ニコニコ タイトルは、ヒンディー語(インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。フィジーの公用語の1つでもある。その娯楽映画界は、俗にボリウッドと呼ばれる)で「狂気」とか「情熱」(主に恋愛感情について言う言葉?)。

 本作は、ラージ・カンワルの監督デビュー作であると同時に、後のキング・オブ・ボリウッドとなるシャー・ルク・カーンの映画デビュー作となった作品(シャールクは、この年に本作を含め4本の映画に出演。その中で、本作の公開が一番早かったため。なお、後にシャールクからこの映画の出演料が払われていないと抗議があったと言う)。本作に関しては、その製作時にプロデューサーと対立して急遽出演を止めたアルマーン・コーホリーの代わりに、シャールクが呼ばれたための出演だったとか。

 公開後、タミル語(南インド タミル・ナードゥ州の公用語。スリランカとシンガポールの公用語の1つでもある)吹替版、テルグ語(南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語)吹替版、カンナダ語(南インド カルナータカ州の公用語)吹替版、ベンガル語(北インドの西ベンガル州とトリプラ州、アッサム州、連邦直轄領アンダマン・ニコバル諸島の公用語。バングラデシュの国語でもある)吹替版も公開。
 なんでも本作は、続編の企画があると公言されていたらしい…。

 シャールクの映画デビュー作と言っても、急遽出演が決まった役だって言うしちょい役なんでしょ? …とか思って見てたら、わりとガッツリ後半の主人公格としてシャールクが活躍する主演作でございましたわ。
 劇中の各エピソード群は、そこまで新鮮味のない王道ものなのに、その密度と組み合わせで話が自由自在に膨らむ様は相変わらず器用な語り口。前半の人気歌手ラヴィと田舎の美大生カージャルとの貧富を越えた恋愛劇も、話を書き出せばなんてことないロマンス劇なのに、見てる間はまあ感情が次々揺れ動かされてしまうことよ。後半の、ラヴィの死を嘆く寡婦となったカージャルを一方的に恋して追いかけ回すストーキング・ラヴを貫くシャールク演じる自己犠牲型主人公ラージャの姿はまあなんと言うか「あ、最初からそう言う役が似合ってたのね!」って感じ(もっとも、シャールクは映画以前にはTVドラマで主演を張る人気俳優だったので、似合ってても当然なわけだけど)。

 2人の男の愛に身を捧げることとなるヒロイン カージャルを演じるのは、1974年マハーラーシュトラ州都ボンベイ(現ムンバイ)に生まれた女優ディヴィヤー・バルティ。従妹には、2010年代から活躍する女優カイナート・アローラがいる。
 その美貌が評判になって9年生当時からいろいろな映画への出演オファーを受けていたそうながら、正式採用までなかなか決まらず、ようやく90年のテルグ語映画「Bobbili Raja」に若干16才で映画&主演デビュー。同年には、「Nila Pennae(月の少女)」でタミル語映画にも主演デビューする。92年の「Vishwatma」でヒンディー語映画に主役級デビューし、活躍の舞台をヒンディー語映画界に移し、同年公開の本作でフィルムフェア新人女優賞を受賞。当時の最高額ギャラ女優、次世代のシュリーデーヴィーと話題を呼ぶほどの名声をも獲得する。この頃に、非公開ながら映画監督兼プロデューサーのサジード・ナディアードワーラーと結婚して、実名をサナ・ナディアードワーラーと変えていた(イスラーム教徒との結婚で改宗したため。しかし、この事は彼女の親が難色を示したことと、彼女の人気の継続のために非公開にされていた)。
 その翌1993年、突如ムンバイのアパート5階から転落し救急搬送されたものの、そのまま帰らぬ人となる。享年19才。その死は、様々なメディアで陰謀説が叫ばれたものの、警察の捜査によって事故死と認定されている。
 その衝撃的な死は、後にデーヴ・アーナンド主演&監督作となる11年公開作「Chargesheet(告訴状)」で題材として取り上げられている。

 シュリーデーヴィーと比較されるほどだったと言う美貌と人気を一気に獲得していたディヴィヤー・バルティの美しさは、まさに映画全編の最大の武器になっていて、恋に恋する前半の少女像から、後半の全ての希望を失った寡婦、新たな愛する夫を知った新婦、生きていたラヴィとの再会に揺れる三角関係の中心となる悲劇のヒロイン像と、いろんな顔を見せてくれるのがなんとも麗しい。そりゃあ、あんな美貌を見せつけられたら、全てを投げ打って腕にナイフで「KAJAL」って書きつけたくも! ……いや、やっぱそれはそれでドン引きだな。自分では絶対やりたくない。うん。

 まあ、まだ実年齢10代後半のディヴィヤー演じるヒロインのお相手が、実年齢39歳(本作公開当時)のリシ・カプールってのは、インド映画ではそう珍しくもない組み合わせとはいえ、やっぱ美女と野獣になってる感は拭えず。まだ20代後半だったシャールクと並んだ方が恋人同士に見えるのは、まあ「そう言うもん」としておきましょうか。
 ラストの結末は、映画撮影中も色々と議論されるところだったそうで、画面内でしっかりラヴィとも、ラージとも結婚式をやってる(インド映画的には、「結婚の誓いを神前で行う」=「どんな事があろうと、神が認めた関係として決して破られる事がなくなる」と言う物語的暗示であり伏線となる描写になる)ヒロイン カージャルが最終的にどうなるのかは、最後まで制作陣を悩ませていたらしい(最終的に、ラヴィ役のリシ・カプールが当時の観客の好みを優先するべきと鶴の一声を発して現在の形に落ち着いたそうな)。牧歌的な前半の恋愛劇から、いつも通りのお家騒動とはいえサスペンス的な三角関係劇に突入していく後半の物語のジャンル的変化具合は、毎度のこととはいえホント見事ですわ。

 


挿入歌 Koi Na Koi Chahiye (誰か、僕と恋に落ちよう)

*ハイ、ボリウッド史上に輝くシャールクのスクリーンデビューシーンは、ノーヘルでムンバイを走り回るバイク野郎のミュージカルシーンですぜー!(仲間の1人は、振付師のガネーシュ・アチャーリヤー…に似ているようなそうでないような?)

 


受賞歴
1993 Filmfare Awards 作詞賞(サミール / Teri Umeed Tera Intezar)・男性プレイバックシンガー(クマール・サーヌー/ Sochenge Tumhe Pyar)・音楽監督賞(ナデーム=シュラヴァン)・話題のデビュー賞(ディヴィヤー・バルティ)・デビュー賞(シャー・ルク・カーン)

 

 

(。・ω・)ノ゙ Deewana を一言で斬る!
「前半の、ラヴィとカージャルの結婚が決まった瞬間にカージャルの友達たちが【Chandni(チャンドニー)】の結婚式の時の挿入歌"Mere Haathon Mein Nau Nau(腕輪9つを身につけて)"を踊って騒いでるのがいとおかし(本作と同じリシ・カプール主演で、踊ってたのはかのシュリーデーヴィー!!)」


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