読書感想228 護られなかった者たちへ(ミステリー・小説) | フリスビーの読書感想

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「護られなかった者たちへ」

(中山七里著 宝島社文庫)

 

 

本書はタイトルだけでは内容は分からなかったのですが、気になる著者ということで読んでみました。

そういった軽い気持ちでのスタートでしたが、内容は非常に奥深かったです。

 

 

物語の序盤、福祉保険事務所勤務の人間の遺体が発見されます。

死因は餓死で、体を拘束されていました。

回り近所にはほとんど人の気配がない、とある一室でのことでした。

この人は回りからは「善人」と思われており、恨みを買う雰囲気の人ではなかったようです、

 

それからしばらくして、今度は県議会議員の遺体が発見されました。

殺され方は1人目とほとんど同じ、やはり人気のないところで拘束され、死因は餓死でした。

この議員は「人格者」として知られており、スキャンダルなどとは無縁の人だったようです。

 

殺され方が特殊ということで共通点を調べた結果、2人とも

 

福祉保険事務所勤務経験あり

 

ということが判明。

その共通点を元に、捜査を進めていくことになります。

 

結果的に犯人は逮捕されて終わるのですが、この作者はやはりビックリさせてくれました。

実は犯人と思っていた人間は犯人ではなく、本当に意外な人間が犯人でした。

僕が

 

もしかしてこの人が犯人?

 

と思ったのは、犯人が発表される十数ページ前でしたから。

物語としては、見事でした。

 

 

ここからは感想。

本書のテーマは

 

社会福祉と生活保護

 

でした。

生活に困窮している人には

「生活保護を受給させる」

などといった対応が必要だと、僕も思います。

 

ところが本書に書いている限りでは、

「予算を減らしている」

ということが記載されていました。

国の命令ですから、それに従うのは仕方がないことかもしれません。

ですが、本当に必要な人に関しては、やはり生活保護は必要だと思います。

物語の中でもそれが原因で、上記のような事件が起こったのですから。

 

この物語はフィクションではありますが、これがもし現実の状態を表現しているとしたら、本当にショックです。

保護の申請に来ている人を、何かと理由をつけて却下することが。

 

物語の中でもお金がなくなり、電気とガスが止められたお婆さんが出てきます。

知人の強い勧めで申請に行ったものの、

 

あなたには弟がいるのだから、そこを頼れ

 

と言われ、却下されました。

なおその弟とは

「大阪に行き、20年以上音信不通」

の状態で、普通なら連絡を取るのは難しそう(このお婆さんは宮城県在住)。

にも関わらず、窓口では

「本気になれば簡単に連絡がつくはず」

と突っぱねました。

これはひどいですよ、本当に。

その結果、このお婆さんは餓死してしまいました…

繰り返しになりますが、本当にショックでした。

 

これが現実ではないこと、それだけを願って本書を読み終えました。

 

 

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