2019春の富山11 砺波市立美術館 | 楢丁(YOUTEI) 旅の話

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趣味で書きためた旅日記が、膨大な量になりました。2020秋に脳出血、2023には食道癌を発症と、様々なことが起こりますが、克服してまた旅に出たいという気持ちは変わりません。
お付き合い頂けたらありがたいです。どうぞよろしく。

2019.4/1~6 春の富山 その11
砺波市立美術館

4/4(木)①
 今日は高岡の街歩きに出ようと方針を決める。予報では晴れるということだが、朝方は雨がぱらつき、風も冷たい。まだ時刻も早いので、まずは砺波の市立美術館へ向かう。

 

  ホテルから車で10分少々、市民会館やチューリップ会館?など、大きな公共施設が集まっている地域に、この美術館も建っていた。外壁が石造の、存在感のある建物だ。館の前が大きく空いているが、駐車場と明示されているわけでもないので、停めるのにちょっと躊躇した。


                          思ったより立派な市立美術館

 入ってみると、人が誰もいない。1階展示室の、大きな引き戸は簡単に開いたので、とりあえず入って見始めた。市の美術協会の展覧会だが、安城市美術協会との交流展と銘打ってある。地元の作家さんの作品に混じって、それを示す札とともに安城市からの作品が展示されていたが、それはおおむね水準が高いようで、それなりにセレクトされたものが送られてきているのだろうと想像がついた。


                            ここは工芸作品の展示ブース

 ここを出たときに、カウンターにいた女性二人の驚いた顔を見て、すべてを了解した。ポスターで後から確認したが、公開は10時からで、我々はその20分前くらいから展示室に入っていたのだ。まだ誰もいないはずの部屋から二人も出てくるなど想像もしていなかったのだろう、この時点でもまだ公開までには5分ほどあったが、目を見開いて息をのんだその顔は、驚きの大きさを十二分に表していた。

 この展示室は絵画と書、2階に工芸が展示されているが、どちらかといえば工芸の方に感心する作品があった。

 2階にはまた、各種講座の開けるレクチャールームもあって、「書と篆刻の会」の看板が出された部屋には、すでに何人か来ていたようだ。

 奥に有料の展示室がある。絵画の清原啓一、写真の秋山庄太郎、それに館蔵の工芸作品展だが、¥210のところJAFの割引で¥160と、このくらいなら、たとえハズレでも損した気分にはなりようがない。

 清原の絵は鶏がモチーフ、芸術院会員だったというが、生涯鶏を追い続けた人なのだろうか。90年代のものは色合いが渋く、造形も簡素な表現で好ましい。これが2000年代になると、カラフルだが、むしろ平凡な具象に移行していき、我々の好みとしては前者だな、と意見が一致した。


                       清原啓一の作品。これは晩年のもの

 秋山庄太郎のはすべてチューリップの写真。毎年この市で開催するチューリップのお祭りに、この写真家を呼んで撮影してもらっていたということだが、昔、何かのコマーシャルに出ていたのを記憶している。この人は女性の写真が得意だったという印象があるのだが。


                         写真家 秋山庄太郎の花の作品

 そういえば、安城にはどこかヨーロッパの国の名前がついた公園があったように思い出した。あるいはチューリップの縁で、姉妹都市提携でも結んでいるのかもしれない。かつて安城を歩いたときに、手島右卿の高弟だった戸田堤山が、公共施設の門標を書いているのを発見し、ここの出身だったことを知ったのだが、街自体はトヨタの企業城下町のようで、大して面白みがないという印象しかない。もっとも、ごく一部を見て回ったというだけの話、すでに10年ほど前のことだ。

 2階の一番奥にあった館蔵の工芸品展は、なかなかの力作揃い。しかし工芸ばかりではなく、前衛書家として有名な表立雲の掛け物、これは書というより絵画といった方が通りがよさそうだが、そんなものもあった。この展示室は一画に座敷があり、ちょっと変化のある展示に対応できる。

 最上階の3階に上ってみると、階下を見下ろすことの出来るウインドーとカウンターを備えた喫茶スペース、開業当初は喫茶の営業をしていたのかもしれない。アップライトピアノも設置され、活用されてもよさそうだが、現状では結局無駄になってしまっている。

 カウンター裏手に回ると、横に長いウインドーのある、いわゆるウナギの寝床のような部屋だが、3階とはいえ、地上からの高さは通常の5階以上に匹敵する。したがって見晴らしは大変よいが、立山連峰の写真パネルがあるところを見ると、よく晴れた日にはここから写真の通りの景色が見られるのだろう。残念なことに、この時はすっかり空は雲に覆われていたが、是非こんな光景を見てみたいものだ。


                           こんな光景が見られるらしい

2019.4/1~6 春の富山 その12 高岡城公園~クラフタンにつづく