2008山陰10
足立美術館
8/14(木)①
朝になっても一向に涼しくならない。後に、夏の旅でテン場を選ぶ場合、状況が許す限り標高の高い場所を鉄則にしているのは、こんな経験が積み重なった結果といえる。この前の投稿でも触れたが、現在なら、それにもましてアスファルトの上を選ぶようなことはしない。
テン場に取った駐車場の一つ下に位置する広場で朝食にする。ここは「淀江どんぐり村」の一画で、大山の麓に湧く名水「本宮の泉」を引いてあり、早朝から水汲みに来る人たちが絶えない。
ちょっと残念だが米子は飛ばし、松江方面に進路を取る。お盆休みの土日に、メジャーな観光地は避けたいという気持ちが働いたせいだが、この期間、昨日の皆生温泉の様子などからすると、平日も大して変わらないかもしれない。
走りはじめていくらも経たぬうちに、「お菓子の壽城」に出会う。街中に突然現れる、まるで江戸時代の城のような建造物だが、まだ朝も早いのに人でいっぱいだ。ちょっと覗いてみると、お菓子が主力の売り場は試食が充実しているが、これが人気の所以だろう。2階にはカフェもある。
「お菓子の壽城」の外観はお城そのもの(下記サイトより転載)
何気なく米子道のICに入ってしまったが、これが思ったのとは全く違う方向に向かう道だった、不覚!すかさず溝口ICで降り、R181で西に進路を取る。途中のスタンドで給油するが、ハイオク¥186/Lはこれでも安い方だ。近隣のスタンドが軒並み¥190/Lを超えていたから、わざわざ戻ったほど。
このあたりのコンビニは「ポプラ」という店が多い。旅の過程ではコインランドリーが必須、と書いたが、たまったゴミを捨てる場所も重要。ペットボトルなら捨て場はたくさんあるが、総菜類や肉なんかを買うと、すごい量の発泡スチロールで、すぐにゴミ袋がいっぱいになる。もうひとつ困るのがワインや日本酒の瓶。だいたいは買い出しに行ったスーパーマーケットで捨てさせてもらうが、時にコンビニを利用させてもらうこともある。その場合、最低限の仁義として、というよりは罪滅ぼしの気持ちで必ず何か購入することにしているが、ここでは「カフェオレ¥198」の記述が残っていた。ついでに言えば、トイレを利用させてもらう場合も同様である。
足立美術館は海外でも有名らしい。以前、近くを通ったことがあるが、高い入館料にひるんで寄るのをやめた、ということがあった。今回は行ってみようと思い、看板の出ているR9の交差点を、表示に従い左折、しばらく行くと「雲樹寺」が現れる。すぐ道の端だったから、覗いていくことにした。すでにこのあたりは安来、島根県に入っている。
雲樹寺山門にて
山門がいかにも年代を感じさせる立派な建築、薬師堂はさほど古い印象はないものの、堂々としている。それよりも、感心したのは境内にいくつも安置された、比較的小ぶりの石仏だ。最近寄進された?仏様が多いようで、古色という点ではもう一つながら、造りが素晴らしいのに感心した。どれもいい顔をしているし、彫りが精緻だ。どこの石屋で請負っているのだろうか、相当のクオリティーである。こんな仏様が手に入るなら、我が家の庭にも欲しいと本気で思ったほど。
雲樹寺の石仏
後から調べたらこのお寺、方丈裏の枯山水が有名らしい。拝観料¥500とあるが、払った覚えはないので、見てはいない。さすがと思った山門は、重要文化財に指定されていた。
さて、足立美術館だが、まず駐車場が広い。たくさんの人が訪れることは、まずここから想像できる。入館料は¥2200だったように思う。庭園のギャラリートークは10時から始まっていたが、10分ほど遅れて参加、その解説によれば、この庭園はアメリカの日本庭園専門誌で5年連続第1位を獲得している、と誇らしげだ。確かに規模も大きく手入れも素晴らしいとは思うが、いささか人工的に過ぎるという感想を持った。しかし、それが却って欧米の人の嗜好に合致するのかもしれない。
足立美術館庭園
この庭園を素晴らしいと表現するにやぶさかではないが、好みを言わせてもらえば、もう少し陰影のあるほうがいい。ここは些か明るすぎるのだ。皮肉に聞こえるかもしれないが、ゴルフ場のコースを眺めているようでもある。
実にいい山並みを借景に使っているのは、もちろん作庭の構想に入っているはずだが、この地ならではの景観、と言えるだろう。ともあれ、この美術館を代表する展示物は、この庭園にほかならない。
特集の展示は童話の原画、これはちょっと珍しい、というより、この美術館のイメージとかみ合わない感じも受けた。2階に上がるとはじめは美人画、そして大展示室には日本画の屏風絵が続々と現れる。中では、橋本関雪がいいなあ、と思った。横山大観の大きな作品もあった。この人の作品に対する世評の高さは知っているが、どうももう一つ好きになれない。茫洋とした大きさを感じはするが、ピシリとこちらに迫るものが乏しい気がするのだ。俺がへそ曲がりなのかもしれないが、要は好みの問題。
陶芸室には河井寛次郎と北大路魯山人。寛次郎のはすぐにそれと分かる、ちょっと癖のあるものが多い、といって貶すつもりはない。しかし、ここで感心したのは魯山人の方、この人の芸域の広さには舌を巻く。以前、ある程度まとまった数の作品を見たときの、ちょっと品がないかな、なんて感想を、今回は全く持たなかった。
結果として、当初高いと思っていた入館料は、相応だったと思う。
2008山陰11につづく