2008山陰9 植田正治写真美術館 | 楢丁(YOUTEI) 旅の話

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趣味で書きためた旅日記が、膨大な量になりました。2020秋に脳出血、2023には食道癌を発症と、様々なことが起こりますが、克服してまた旅に出たいという気持ちは変わりません。
お付き合い頂けたらありがたいです。どうぞよろしく。

2008山陰9

植田正治写真美術館

 

8/13(水)④ 

 毎度のことだが、車から降りるたびに、炎天下の暑さには辟易させられるが、しかしこれは幸いというものだろう。旅に出てからというもの、ここまでは天候には恵まれ、ずっと晴れが続いている。


 さて、このあたりの観光地、といえばなんといっても「大山」は外せない。章子はごく最近、友人の喜多村さんと登って、やせ尾根が怖かったと感想を漏らしていた。ともかく、大山寺へは行ってみることにした。


 麓で、石仏や石塔が一カ所に集められ、土で盛られた墓共々、供花が沢山手向けられている一画に出会った。廃寺の可能性もあろう。

 

                   凄い数の石塔や石仏


 大山の中腹に境内を持つ「大山寺」は、境内の太い杉がその由緒を物語る。残された写真を見ると、鬱蒼とした林の中に立つ立派な山門、唐破風を持つ大きな社殿や、境内には凝った造りの屋根を持つ下山神社など、相当の規模を持つ寺だ。かつては、大山をご神体に持つ神社とお寺の神仏習合の状態にあったのだろう。

 

                    大山寺山門前にて


 しかし、それ以上に思い出せることが乏しく、これを書くにあたって往生した。章子のメモには「社殿に入り、御神酒を頂いた。国宝の天井絵を見る。涼しくて昼寝をしたくなった」とある。

 

                    巨大な大山寺


 車に戻る寸前にザッと雨に降られた。山を下り、行ってみたかった「植田正治写真美術館」へ。


 植田正治のシュールな写真は、土門拳の迫真の作風と好一対、徹底した演出によって、この人独特の、静謐な世界が作り出されるが、この美術館の意匠にもその作風が生かされている。方形の直線を多用した建築、とりわけ縦に細長く仕切られたウインドウからは、正面に聳える大山が望めるが、これをバックにして写真に収めると、どことなくシュールレアリズムの作品という趣になる。そんなわけで、ここでカメラを構える人は多い。

 

             植田正治写真美術館でみんなアーティスト


 「植田正治写真美術館」のHPをみると、過去の展覧会の記録をたどることができる。それによればこの時の企画展は「わたしの風景」だ。鳥取砂丘に取材した、一連の家族の写真は大変印象的で、もちろん鮮明に脳裏にある。しかし、どういうわけか、最も印象に強かったのが木村伊兵衛の代表作「秋田おばこ」。これを確かにここで見た記憶があるのだ。もしかすると、企画展とは違う展示で、この作品が飾られていた可能性もある。これなど、植田正治の作風とは正反対のものだ。


 この美術館で(メモには美術館脇のトイレで、とあるが)たまたま手に入れたのが、皆生温泉の「湯めぐり帳」、今となってはおぼろな記憶だが、単に忘れ物を拾った、ということだったろうか。もしかして、どなたかに頂いたという可能性もなくはないが、まあいい。


 ともかく、これを利用しない手はなかろうと、テン場を物色した後で、我々は米子の皆生温泉へ向かった。手頃な値段で利用できる日帰り湯は、もの凄い人でごった返している。一旦駐車場にまで入ったが、その様子を見てやめた。


 湯めぐり帳に、「皆生グランドホテル天水」があった。行ってはみたが、どうも建物の外観から察せられる雰囲気が気に入らず、それならいっそ同系列の高級旅館でゆっくりしようと「華水亭」へ。こちらはロビーも高級な造作で気分がよく、人も少ないせいでゆっくり。大変気分のいいお湯を堪能した。

 

                  華水亭(華水亭HPより転載)


 この当時、すでに全国に出店していた、巨大なイオンのショッピングモールで買い物、メモには「ウナギ、アゴのちくわ、天ぷら、フライセット、納豆…、昼に買った濁り酒がおいしい!」とある。テン場はメモに残された情報からあれこれ調べてみると、「本宮展望駐車場」の隅に取ったのだと思う。ここからは遠くに町(米子だろう)の夜景が望め、眼下に咲く打ち上げ花火を見ながら酒を飲んだ。

 

 「アスファルトの上にテントを張ったせいで残った熱がこもり、寝苦しかった」とメモに記述がある。これ以降、夏場はアスファルトの上にテントを張るなどという選択は決してしないようになった。

 


              アスファルトの上をテン場にしたのは失敗!

 

 

2008山陰10につづく