2019夏の会津1 序章~まるごと西郷館 | 楢丁(YOUTEI) 旅の話

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趣味で書きためた旅日記が、膨大な量になりました。2020秋に脳出血、2023には食道癌を発症と、様々なことが起こりますが、克服してまた旅に出たいという気持ちは変わりません。
お付き合い頂けたらありがたいです。どうぞよろしく。

2019夏の旅 8/13(火)~18(日) 
白河市・西郷村・会津(下郷村・昭和町・会津田島町・金山町・西会津町・柳津町・会津坂下町・会津美里町)・天栄村・須賀川市・矢吹町

 今年は出品者として参加している書のグループ展「鵬圖舍書展」の会期が8/12まで、したがって旅の出発は13日にせざるを得なかった。19日には仕事が控えているので、18日までと期限が切られてもいる。例年なら8/8~9には旅立ち、計10日以上は旅を続けているはずだ。夏の旅としては異例に期間が短いせいもあり、比較的近場をというのと、台風の進路との兼ね合いもあって直前まで目的地をどこにするのか決めることが出来なかった。

 

鵬圖舎Facebook


 台風10号は超大型の猛烈な、と形容されるものだったが、西日本を直撃して北上、その後進路を変え、日本海上を北東に進むという予報、関東までは影響を受け、大雨になるということだったから、富山など北陸は対象から外れ、当初は福島から山形、状況によって太平洋側に逃げることも視野に入れていた。

8/13(火)
 昨日までの鵬圖舍書展で疲れが溜まっているはずだったが、やはり旅の出発となると気がせくのか5時半頃目が覚め、荷物を積み込んで出発。このところ、自転車を積まずに出ることが多くなっているが、旅程が短いこともあり、今回もこれを割愛。車内のスペースはずいぶん楽になる。


 昨日、既に墓の掃除は済ませておいたが、やっぱり線香ぐらい上げてから、と思い立ち、高倉寺経由で狭山ICへ向かう。


 帰省の皆さんの大半は既に故郷におられるようで、圏央道の渋滞は鶴ヶ島ジャンクション手前で若干速度が遅くなる程度で済んでしまった。東北道に入ると、通常に比べ車が多い印象はあるが、渋滞に出会うことなく埼玉を抜けられたのは、お盆まっただ中のこの時期としては驚異に感じられた。


 いつだったかのニュースで、羽生PAを地域の防災拠点とする報道があり、どんな工夫があるのか確認してみようと思ったが、PA入り口に車の行列が見え、とたんにその気を失った。途中のPA、SAで2度ばかり休憩したが、いずれも警備員が配置され、駐車場の整理に当たっていたのはこの時期の混雑への対策だろう。


 当初、那須ICで降り、塩原を抜けて会津田島に入るルートを考えていたが、那須の下道での渋滞が頭に浮かび、それを諦めて白河ICで降りることにした。もっとも、那須IC出口で降りる車は思ったより少なく、あの分ではこちらから行っても問題はなさそうだった。


 白河ICで高速を降り、甲子高原方面に進路を取る。もう20年ほども前になるが、新甲子温泉に泊まったことがあった。冬場のことだったから、夏の盛りの今と様子はまるで違うが、宿から少し奥へ行くと、すぐに冬季閉鎖のゲートがあったのを思い出す。その時のこと、名物と喧伝されていた白河ラーメンを食べに街へと降りていったが、出されたラーメンがあまりにまずいもので、しかしその店が大繁盛していたのに驚いた記憶がある。しかしもう今なら、あんな店は淘汰されているだろう、という推測はさて、当たっているや否や。

 

農産物直売所「まるごと西郷館」


 しばらく走ると、農産物直売所「まるごと西郷館」の看板が目に入る。産直と聞くと、この季節の果物が店頭に並ぶ様が浮かび、通り過ぎるわけにはいかない。「まるごと西郷館」はいかにも新しく、オープンしたのはごく最近のことと思われた。まだ早い時刻にもかかわらず、繁盛しているのはまことにめでたい。入るなり、いきなり桃がずらりと何種類も並んでいるのが目に入り、うれしくなる。

 

和来巻ってこんなの。食べかけで申し訳ない

 

 地方の名産の果実、この季節なら桃にブドウ、それに梨などになるが、それらを思う存分に味わうのは、それこそ旅の醍醐味の一つ。ここでは白桃に黄桃、それにネクタリン、トマトなどを購入、外の席で食べようと思い、待ちきれずに、買ったばかりのネクタリンをかじっていたが、章湖は中の小さな食堂「和来亭」で作っている「和来巻」が気になっている様子で、なかなか出てこない。見た目は春巻のようだが、店のおばさんに聞いてみると、中身はおこわ、これを皮でくるんで揚げるという。昼飯にはちと早いが、章湖の手招きに応じて店内の席に移り、もう一つ、気になっていた「西郷バーガー」も買ってみた。こっちは10種類の野菜が入っている上に、コロッケ2つとズッキーニの素揚げが挟まれているといい、マクドナルドに負けてないだろ、とおばちゃんは自信ありげだ。なるほど、ボリュームも十分、和来巻とともに大変おいしく頂いた。

 

西郷バーガー。これ旨い!


 和来巻はすぐに食べ終えてしまい、西郷バーガーを頬張りつつこれからの計画を立てるが、西郷村の観光パンフには遊歩道が2つ紹介されていて、そのうちの阿武隈渓谷沿いのコースがよさそうだ。もう一つのコースはハイライトと思われる滝までの道が、6月現在工事で通行止め、とパンフに記載がある。観光協会に電話して確かめたが、今もその状態に変わりはないとのことだった。

 

こんな感じで


 この先を考えると、どこでいいテン場が見つかるか分からず、小さな集落のよろず屋さんで食料を物色、などという状況に追い込まれるのを避けたい我々は、街の近くにいるうちにスーパーで晩の買い出しをしていこう、と話がまとまった。


 来た道を引き返し、市街地に入っていくと、家々の屋根の向こうには東横インの看板が見え、白河は新幹線も停車する、大きな街であることを再認識させられる。相も変わらずだが、イオンのショッピングモールで食料を仕入れ、再び山を目指す。


 遊歩道は新甲子温泉の「みやま荘」付近からついているというので、とりあえずみやま荘の駐車場に車を入れた。ちょっと厚かましいかな、とは思ったが駐車スペースは十分、咎められることもないだろう、と踏んでのことだ。しかし、どこに遊歩道の入り口があるのか分からず、逡巡する。宿の奥に道が続いているようにも見えたが、林間の急斜面の途中でなんとなく踏み跡はなくなってしまい、その先へ足を踏み入れていたらやばいことになりそうだった。


 しかたなしに、道路に出て2~300メートルばかり引き返してみると、大きな駐車場に観光地図があった。それによると、遊歩道はみやま荘を越えたところからついているように見える。結構歩かされたことになったが、しかしこの行程は無駄にはならず、みやま荘脇の林に大型のキノコが10株ほどあるのを発見、近づいて観察すると、ヤマドリタケモドキだ。

 

ヤマドリタケモドキ発見!


 これは後から収穫することにして、ともかくは遊歩道が先、みやま荘を越えたところにちゃんと看板が出ていた。川床までは標高にして優に7~80メートルはあっただろう、しっかりした足場が造られていたから不安はないが、かつて、冬場に来たときにも川床まで降りてみたという憶えがあり、こんなに下ったのかと我ながら記憶を疑ってしまう。

 

 渓谷沿いの林相は雑木の林がいい感じ、渓相も素晴らしく、岩場の瀬と淵が織りなす阿武隈川源流の流れは大変好ましい。所々にある見所には看板が立ち、道標もしっかりしている。

 

遊歩道のつく渓谷はこんな感じ。阿武隈川源流だ


 時に流入する沢を越える橋も架かり、かなりのアップダウンを繰り返しながら遊歩道は続く。はじめは終点まで行って引き返してこようかなどと話していたが、これがために途中から、帰りは車道に出ようと考えるようになっていた。さっきのヤマドリタケモドキが頭に浮かび、こっちにもキノコが出ているかも、と期待は膨らんだが、これが案外に少ない。どちらかといえば斜面の北側、その影響もあろう。多分シメジの仲間の、ちょっと赤みがかったキノコは立派な姿をしていたが、同定には至らず。今回キノコ図鑑を一冊も持ってきていないのが悔やまれた。

 

群生していたイワタバコ

 

同定できずに終わったきのこ


 遊歩道は終盤を迎えると、比較的平坦な地形となり、終いには子供のはしゃぐ声が聞こえてきた。川との落差もなくなり、レジャーシートを広げ、家族連れが何組か川遊びに来ているのが確認できる。車で近くまで入れるのだな、という予想は当たり、川からいくらも離れていない所で駐車場に出た。「禁漁」の看板がいくつか設置してあったが、ここから上流、という意味だろうか。遊歩道沿いの流れはイワナ釣りには絶好のポイントが多く、もし今度来ることがあったなら竿でも忍ばせて、という考えがよぎったが、禁漁の定めがあるようなら諦めるしかない。

 

 ここから遊歩道終点の剣桂まではすぐ。小さな社の後ろに根元から数本、束ねたように聳えた桂の木には、剣の形をした供え物がいくつもあった。なるほど、と思わせる巨木である。ここで撮った写真を後から見てびっくり。桂を背景に写した写真には、赤い玉のような光が、多いもので四つ写っている。しかも光はぴったり四角に配置されていて、これは一体何だろう、と訝るほど不思議な光景だ。逆光の条件で起こる何らかの現象だろうが、どことなく神秘を感じさせられる。

 

剣桂を背景に撮ったら赤い玉が


 おおよそ1時間半ほどの歩きだったが、結構足に来た感じがする。駐車場からの車道は大きく蛇行して高度を上げ、トンネル手前で本線に合流、そこに古さびた冬季閉鎖用ゲートが設置されていた。かつて新甲子温泉に泊まったことがあると書いたが、その時に見たのはこれだったろう。ここからすぐにあるホテル2軒はもろともに廃業して久しい様子、かつて泊まったのはこのうちのどちらかに違いなかった。


 本道に出て歩き始めると、容赦ない直射日光に襲われることになった。加えてアスファルトの照り返しもあるからだが、林間を歩くのとでは大違いである。これを避けて日陰の出来る山側に渡ると、林の中に遊歩道が見える。観光マップで確認すると「キビタキの森」とあり、地図上に遊歩道は示されていないものの、車道を歩くよりずっといいと判断、途中から林に分け入った。道の大半は木材のチップが敷かれ、歩きやすい。後から調べたら、クロスカントリー競技の練習に人気のあるコースということだ。

 

 行きに発見したヤマドリタケモドキのうち、しっかりしたものを4本だけ選んで収穫、車に戻ると、そろそろ宿泊客がチェックインし始める頃合いだ。

 

ヤマドリタケモドキを4本収穫
 

 みやま荘の敷地には「足湯無料」の看板がある。これはありがたいとばかりに探せば、ありました、足湯。トレッキングシューズを脱ぐと、とたんに解放された気分になる。両側に4~5人ずつ座れるほどの小さいものだが、足を浸ける前に、手で温度を確かめてみると、これがびっくりするほど熱い。表面近くが特に熱く、そうだなあ、表面の湯温は48℃くらいあるかもしれない。恐る恐る足を浸けると、湯はふくらはぎの真ん中くらいまで来るが、せいぜい2分が限界、これだと足を入れられずに諦める人もいるのではないだろうか。傍らにあった板で湯もみすると足を入れやすくはなるが、湧出量が多く、いくらも経たないうちに表面近くの温度が上がってくる。飛んできたアブがシャツに止まり、指ではじいたら湯に入った。しばらくはもがいていたが、じきにその動きが止まり、排水口に吸い込まれていった。

 

とっても熱い足湯!

 

 


2019夏の旅 会津 8/13後編につづく