LC/MS用脱塩カートリッジにナトリウム付加イオンの生成を抑える効果がある? | 日本一タフな質量分析屋のブログ

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日本で唯一、質量分析に関するコンサルタント、髙橋 豊のブログです。エムエス・ソリューションズ株式会社と株式会社プレッパーズの代表取締役を務めます。質量分析に関する事、趣味の事など、日々考えていることや感じたことを綴っています。

Positive-ESIモードのLC/MSで、ナトリウム付加イオン([M+Na]+)が観測されて困る、プロトン付加分子([M+H]+)のみが観測されると良い、という話をよく聞きます。

 

私は未知試料を測定することが多いので、プロトン付加分子([M+H]+)、アンモニウム付加イオン([M+NH4]+)、[M+Na]+が適度なバランスで観測されると、分子質量を判断できるという観点から便利だと思うのですが...

 合成品の確認など、ある程度分析種の目途がたっている場合には[M+H]+のみが観測された方がマススペクトルがシンプルで解析し易いようです。

 

 

分析種が既知でLC/MSを行う場合、特に定量分析においては、同一分子から複数の付加イオンが観測されることは好ましくありません。

 

LC/MSにおける定量分析では、選択イオンモニタリング法(selected ion monitoring, SIM)や選択反応モニタリング法(selected reaction monitoring, SRM)が用いられます。SIMを用いる場合、同一分子から生成する付加イオンが複数になると、個々の付加イオン強度は低下しますので、イオン強度という観点から不利になります。また、SRMを用いる場合も、[M+Na]+[M+H]+よりも低エネルギーCIDにより開裂し難いために、プロダクトイオン強度を稼げないという点において不利になります。

 

[M+Na]+は有機溶媒側の移動相としてメタノールを用いる場合に生成し易いことが知られていますが、アセトニトリルを用いても観測されることはあります。“どのイオン種が生成し易いか”については、分析種の性質に大きく依存し、その他移動相溶媒の種類や環境に依存します。

 

先日、製薬企業の研究員の方から、弊社で開発したLC/MS用オンライン脱塩カートリッジ(ソルナックカートリッジ)を、[M+Na]+の低減に使えないか? というご相談を受けたので、試してみました。

 

ステロイド化合物を水/メタノール移動相を用いて測定し、ソルナックカートリッジの有無でマススペクトルを比較しました。

 

ソルナックカートリッジ無のマススペクトルを図1に示します。

ソルナック_脱Na_カートリッジなし

図1

 

メインピークは[M+H]+m/z 303)ですが、m/z 325[M+Na]+も観測されています。それぞれのm/z値でトレースした抽出イオンクロマトグラム(extracted ion chromatogram, EIC)のピーク強度比([303]/[325])は約10でした。

 

HPLC出口とMSとの間にソルナックカートリッジを接続した場合のマススペクトルを図2に示します。

ソルナック_脱Na_カートリッジあり

図2

 

マススペクトル上のm/z 325イオンは殆ど消失し、EICのピーク強度比([303]/[325])は約500となりました。

 

今回の条件では、元々(ソルナックカートリッジ無)の条件でのに[M+Na]+強度が低かったために、ソルナックカートリッジ使用によるマススペクトル上での顕著な違いは見られませんでしたが、ソルナックカートリッジに[M+Na]+生成を抑える効果がある(ナトリウムイオンがソルナックカートリッジに吸着された)ことが示差されました。

 

この効果については、引き続き検証を行う予定です。

 

ソルナックカートリッジおよびデモ測定8月末までのキャンペーン価格にて販売中です。

 

 

 

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