研究会でのLC/MS基礎に関するプレゼンを聴いて | 日本一タフな質量分析屋のブログ

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日本で唯一、質量分析に関するコンサルタント、髙橋 豊のブログです。エムエス・ソリューションズ株式会社と株式会社プレッパーズの代表取締役を務めます。質量分析に関する事、趣味の事など、日々考えていることや感じたことを綴っています。

9/30の投稿で、質量分析関連企業のLC/MS基礎セミナーを聴講した感想を書きました。

 

つい先日、似たようなことがあったので、再度書いておきたいと思います。

 

それは、とある研究会でのこと。

通常、質量分析関連企業の方が研究会等でお話しされる時は、営業の方であれば製品紹介が中心、アプリケーション開発担当の方であれば自社製品を使ったアプリケーションデータの紹介が中心になります。

 

しかしその時、その質量分析関連企業のアプリケーション開発担当の方(私は以前から面識があります)は、LC/MSの基礎的な内容について話されていました。それはそれで、参加者にとってはとても有益だと思うのですが、その内容について幾つか(?)と思うことがあったので、紹介しておきます。

 

1.分子(イオン)を識別することで分子量情報が得られる?

⇒ これについては誤解されている方が多いのですが、通常低分子化合物を測定したマススペクトル上のイオンのm/z 値から得られるのは、“分子量” 情報ではなく“分子の質量”情報です。これについては、バイオマーケットjpの質量分析屋のネタ帳というコラムに書いていますので、参考にしてください。

 

2.マススペクトルの同位体ピーク強度比が正しくない

⇒ ある化合物のマススペクトル(モノアイソトピックピークおよび同位体ピーク付近の拡大)を示されていましたが、同位体ピークのパターンが、その化合物の元素組成から計算されるパターンとかなり異なっていました。特に、13C1つ含む同位体ピークの相対強度は50%程度誤差がありました。また、この化合物は塩素を1つ含むのですが、その酸化体が不純物として観測されていて、その不純物のモノアイソトピックピークおよび同位体ピークのパターンが、塩素を1つ含むには+2の同位体ピークの相対強度が小さすぎました。

この後の説明で、イオンの精密質量から構成元素を推測する時に、同位体ピークのパターンが役に立つという説明をされていただけに、プレゼンに使うデータに気を使っておられなかったことが非常に残念でした。

 

細かい話かも知れませんが、専門家であれば、用語1つあるいはデータ1つにまで拘るという気配りが必要だと思います。

 

 

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引用元:研究会でのLC/MS基礎に関するプレゼンを聴いて