TPP批判が盛り上がっている。
しかし、根拠のないTPP批判はいかがなものだろうか?
まず間違いのひとつは「TPPはデフレを促進する」というもの。
これは完全に間違い。
安い輸入品が入ってきたからデフレに陥るっていうのはまず考えられない。
例えば原油が安くなったら、消費者はどう行動するだろう?
間違いなく支出規模を一定にして、浮いたお金を他の消費に振り向けるはずだ。
消費性向は所得の上昇予想や実質金利が一定なら変化しないのである。
個別価格が安くなれば他の消費財の需要は増えるはずだ。
もうひとつは自由貿易は為替とは無関係ということ。
自由貿易は国内の相対価格が大きければ大きいほど両国にとって有益なのである。
つまり産業構造が違えば違うほど、自由貿易はwin-winになれる。
例えば自動車1台100万円とする。コメ1トン30万円が日本。
一方アメリカが自動車1台1万ドル コメ1トン1000ドルだとしよう。
日本が自動車1台作ってアメリカに輸出したとしよう。
受け取った1万ドルでコメを10トン買ったとする。
そのコメを日本にそのまま持ちかえれば、国内で自動車を3台買える。
この理論に為替の入り込む余地はないのである。
生産性の違いに着目すれば明らかに日本は豊かになれる。
TPPは日本米国豪州など産業構造や生産性の違いがあるので、両国にとって有益になる可能性がある。
TPP批判の根拠はセーフティーネット構築への不安だろう。
確かに関税を撤廃する代わりに農家へは所得補償をしなければならない。
日本政府が有効な手立てを考えつくとは思えないし、円高やデフレでさえ、これだけ長期間に渡って放置している国だから、政府への不信は頂点だろう。
既得権益者は自分の利権が損なわれると危惧するし、恩恵に受けてない層もますます悪くなるのでは?と危惧する。
しかし、TPPへの参加拒否は日本が機会損失を受ける可能性が高いし、参加すれば消費者全体の効用は間違いなく上がるはずである。
日本がこのまま硬直的な産業構造、利権温存では成長できないことは明らかである。
生産者余剰ばかりが焦点となり、消費者余剰の向上に論点を当てないのはいかがなものか?
TPP批判をすることは図らずも、既得権益者の保護ばかりを訴え消費者全体の効用を棄損する結果になっていると個人的には思う。