動学的な理解 | グレッグのブログ

グレッグのブログ

ブログの説明を入力します。

現代の経済学は動学的な考察が重要視されている。

その根拠はふたつの経済政策的成功が元になっている。

ひとつは「金融政策のレジーム転換」もうひとつは「インフレターゲット」である。


動学的な考察とはなんだろうか?

つまり、ある政策を施行した場合に、企業や家計がその政策によってどういう行動を取るか?という視点である。

例えば日本が恐慌時に世界に先駆けて不況を脱出した原因は、高橋是清が国債の日銀引き受けによって財政金融政策を行ったからである、と言われている。

しかし、これは正確ではない。

事実、是清は日銀の国債引き受けを行った後、短期間に90%の国債を市中に売り戻している。

つまり、直接的には通貨供給量が増えたわけではないのである。

では、なぜ日本は世界に先駆けて驚くべき短期間に景気回復を成し遂げることができたのか?

それは、是清が金本位制をいち早く破棄して日銀の国債引き受けという荒療治を行い、市場にインフレを強く意識させたからである。事実、実際のオペレーションが施行される遥か前に株価は暴騰し円安になっている。

つまり政策当局者が強い市場へのコミットメント(約束)を打ち出すことで、市場はそのコミットメントを織り込むのである。レジームというのは「枠組み」という意味である。その枠組みを転換させることで、市場は投資や消費などの総需要を膨らませるわけである。その方が市場が儲けられるからである。何のことはない。市場はいつも儲けることしか考えていない。もしくは大きな傷がつかないように政策当局者の行動に細心の注意を払っているからなのだ。


インフレターゲットもそうである。

例えば政策当局者が2-4%のインフレにターゲットしているとコミットメントすれば2%以下のインフレになれば金融緩和、4%以上のインフレになれば利上げという政策の透明性があるので市場はそれを織り込みやすいのである。だから、インフレターゲット採用国のターゲット遵守率は90%以上なのである。このように、市場の期待を政策当局者がコントロールすることができている。


日本はどうだろう?

日本は白川総裁が0-1%のインフレにすると宣言しているが、在任中の達成率は18%でしかない。

これは構造デフレなどというものではない。

それは日銀が暗黙のうちにゼロ%以上のインフレでは金融引き締めすると市場が織り込んでいるからだ。

言いかえれば日本はー1~0%のデフレに政策担当者がコミットしていると言っていい。

実際2000年と2006年にはゼロインフレで利上げをしている。

これでは、市場や企業や家計が総需要を膨らませることなどできるわけがない。


今の日本に必要なのは明確な金融政策のレジーム転換とインフレターゲット作成なのである。

市場は政策担当者のコミットメントに沿って行動することが利益を最大化できるからである。

今の金融政策のレジームでは家計は消費を控え貯蓄をした方が得だし、企業は設備投資などせずに内部留保した方が得なのである。

動学的な理解があれば、市場を感情や倫理観で動かそうと思っても無理であることがご理解いただけると思う。