貨幣数量理論をもう一度解説したい。
MV=PT
今の状況はどうだろう。
まず、Pは下がり続けている。インフレ率はマイナス。
そして生産量Tは横ばい~微増、かわいそうなくらい微増。実質GDPは微増ですね。
そして今回の震災による負の供給ショックでTは下がるだろう。
だが日銀は0.6%の微増と予想している。
Mは正確を期すためにマネーストックとしよう。
Mはマネタリーベースx信用乗数である。
上記の式を書きなおすと
マネタリーベースx信用乗数x貨幣の流通速度=物価x生産量(インフレ率x実質GDP=名目GDP)となる。
現状、なんとしても生産量を上げたいのである。
これを上げることが国民の実質所得を高めることになる。
PTは国民の名目所得と同義である。
普通の国の政府や中央銀行であれば、左辺の値を上げて何とか右辺を上げることを目指すだろう。
そして政府にできることは、マネタリーベースを上げることだけだ。
具体的には国債を中央銀行がおカネを刷って市中から買い入れることだ。
しかし、ここで困ったことがある。
マネタリーベースを増やしても左辺が大きくならないんだ。なぜか?
今、ほぼ短期金利はゼロである。
つまり、貨幣で持っていても短期国債で持っていても金利がつかないから、ほぼ同じなわけ。
難しく言えば貨幣を持つことの機会費用が減るっていうんだけど、貨幣を持つことは利子をあきらめるってことだから利子がゼロなら貨幣を保持するコストはほぼゼロに近い。だから貨幣が流通しなくなる。それは貨幣の流通速度を下げる効果を併せ持ってしまう。だからマネタリーベースの上昇は貨幣の流通速度の減少と相殺され左辺は増えない。日銀はマネタリーベースを増やす量的緩和に効果はないから、これ以上やっても無駄っていう主張なんだよ。でもこれっておかしくない??