議論の前提としてバブル景気を振り返ってみたいと思います。
バブル景気は確かに土地神話から来る実際の収益以上の土地の期待収益の高騰から起こり、そしてはじけました。金融機関始め、焦げついた負債を抱え、それが日本人に異常と思えるほどの現金至上主義を植え付けたと思っています。株や不動産に手を出す奴は普通じゃない、コツコツ働いて貯金しろ!・・・僕も親に言われました。バブルは確かに一部不動産投機は異常な水準でしたが、一方消費者物価指数は2-3%のインフレで安定していたのです。つまり、土地の問題は土地対策で完結すればよかったものを・・・ここで登場するのが平成の鬼平こと日銀三重野総裁です。土地と言うミクロの問題をマクロに置き換え、異常なほどの利上げをしました。それは不動産関連だけではなく、他業種の収益をもどん底に突き落としてしまったのです。
リーマンショックの時、FRBバーナンキ議長はどうしたでしょうか?サブプライムローンがはじけたと見るや、一目散に焦げついた不動産担保証券を買いあさり流動性供給を行いました。全く対照的です。アメリカの景気は短期間に回復してきています。大恐慌研究第一人者のバーナンキ教授と東大法学部出身の三重野総裁とでは比べるのも失礼ですが・・・。
確かに日銀はゼロ金利政策、それに引き続き量的緩和政策をしました。
しかし、最大の間違いも犯しました。それも二度です。
一度目は2000年の利上げです。景気は十分回復していなかった。インフレ率はやっとゼロです。
しかし当時の速水日銀総裁は利上げをしてしまった。
市場はこれをどう見るでしょうか?
あー、日銀はゼロインフレでも許容しないんだなと深く確信するでしょう?
そうすれば市場はデフレを織り込みます。デフレに合わせた投資をします。
つまり、インフレで上昇するような銘柄、株や不動産や外貨などには手を出しません。
市場がデフレを織り込んだ行動を取るのですから企業もデフレを織り込みます。
デフレ期には借入は不利です。逆に借金は返済して貨幣で持ってた方が得です。デフレは貨幣が継続的に価値が上がる現象ですから。そういう状態では国民も給与は増えず雇用も改善しませんから当然GDPは落ち込みます。そして政府は財政を出す。しかしインフレ予想はがっちり日銀が抑え込んでいるので、インフレになりようがない。市場も企業も国民も結果的にデフレを前提とした行動を取ってしまう。
そして2006年福井総裁の下で同様のゼロインフレ引き締めが行われました。
完璧にデフレ誘導です。
市場は冷静に合理的判断をします。日銀がゼロインフレでも許容しないと確信すれば、インフレには絶対なりません。
中央銀行がどのように行動するかを予想することが市場ではとても大切なのです。
財政もそうです。国民の消費活動に影響を与えるのは、今現在の状況と将来どういう状況になるかの予想であるということを政策担当者は完全にわかっていない。
今日本に必要なのは確固としたインフレ予想です。
政府日銀があらゆるチャンネルを使っても3-4%のインフレにコミットすると市場が信じなければインフレにはなりません。今換えるべきは金融政策のレジーム転換なのです。