万国共通の定義、ドーマー条件を考えます。
名目GDP成長率と国債残高の膨張率の大小が問題。決して国債残高を一定にしたり減らしたりする議論ではありません。ここに誤解が多いので、ドーマーは日本では当てはまらないとかの妄言が出てきます。
名目GDP成長率っていうのは、国の収入つまり税収とパラレルなんです。
名目GDPっていうのは国内で創造した付加価値が生産され消費され分配された総体なわけです。
つまり大雑把に言うと国民所得とパラレルです。物価の増減は考えません、あくまでも名目です。
つまり名目GDPが1.5倍になれば我々の所得の総体も1.5倍になると考えていいわけです。
所得が伸びれば税収もパラレルに伸びます。つまり、名目GDP成長率っていうのは政府の収入の伸びを表現している。
一方、国債残高っていうのは文字通り政府の借金です。政府の負債の伸びを考える。
つまり、ドーマー条件っていうのは政府の収入と借金の伸びを比べてみましょうってことです。
つまり、収入の伸び>借金の伸びであれば、財政は持続的であると判断しましょうってことです。
ではこの条件をクリアするにはどうしたら良いでしょうか?二つの条件が必要です。
①名目GDP成長率>名目金利にすること
②国債償還費や利払い費を除いた基礎的財政収支を黒字にすること
①は収入の伸びより借金の利子を低くすれば収入の伸び>借金の伸びになりそうですね。わかりやすいです。
問題は②です。つまり国債関係費を除いた支出をすべて税収で賄わなければなりません。そうじゃないと借金の総体が増えてしまいますから。新規国債発行は借換債のみにトドメテおけば借金の総体は増えません。
この辺が少し難しいところではあります。
ドーマー条件は端的に言えば、新規国債の発行を借換債だけに限定し、それ以外の支出は税収の範囲でやること、そして名目成長率を高めなければなりません、という理論なんです。
では世界先進各国はどうでしょうか?
アメリカ、イタリア、フランス、スウェーデン、オーストラリアなどは①②を同時に満たそうとしています。
事実、これらの国は名目成長率>名目金利です。
ドイツは名目GDP成長率<名目金利なので、プライマリーバランスを黒字にして金利分を補填しています。
名目成長率>名目金利がカギです。その境界は名目成長率が4-5%を上回れるかどうかに依存しています。
各国の名目成長率と名目金利をプロットすると名目成長率が4-5%を超えれば名目成長率>名目金利となっています。どうしてでしょうか?
名目成長率が5%を超えれば、債権の利回りがインフレ期待の亢進によって不確定になります。というか、それだけ好景気だと、不景気になり貸し倒れが起きる懸念が生じます。ですから、少々利回りは低くても安定的な国債の需要が返って高まるのです。ですから、国債が買い支えられ金利は成長率まで上昇しないのです。これは理論ではありません。実際に世界各国で起きている現象です。
日本の現状はドーマー条件に照らし合わせると悲惨です。
現在はドーマーどころではありませんが、いずれ意識しなければなりません。
今、日本はデフレです、長期のデフレで名目成長率<名目金利です。当たり前ですね。名目成長率はデフレでマイナスですが、金利はマイナスにはなりえません。ですから債務残高のGDP比は年々悪化しているのです。もう一度言いますが、債務残高の絶対額が増えることは問題ありません。問題なのは名目GDPが10年来マイナスであることです。これでは税収も増えませんし、不景気ですからPBも黒字化しません。債務残高のGDP比は悪化の一途です。我々に必要なのは名目GDPを伸ばし、税収を伸ばすこと。そして名目GDP成長率を4-5%以上にして成長率>名目金利にすることです。デフレなのに増税してはますます名目成長率は落ち込みます。
不況のときに増税を唱える奴は間違いなくアホです。不況の時に財政規律云々言う奴もアホです。
日本の財政を持続的にするためにはインフレ好景気にするのが一番近道であることがおわかりいただけたと思います。