心から
希望を持って、やっと掴んだ妊娠・・・
結果、残念ながら流産・死産という状況にある方々、やむをえない事情にて中絶をされることになった方々・・・
今、私と同じくして辛く・悲しい立場にある方々へ。
”千と千尋の神隠し”・・・千尋が、豚にされた親に会いに行った後、
おにぎりを食べながら泣く、あのシ-ン。
バックに流れる”いのちの名前”のサビに、
未来の前にすくむ心が
いつか名前を思い出す
叫びたいほど いとおしいのは
ひとつのいのち 帰り着く場所
わたしの指に 消えない夏の日
前日まで、私は、この曲と共に涙に沈み暮れた。
・・・手術の朝、前処置をした後、生理痛がはしった。
天は、私の気持ちを鏡に映すだすかのように、外は猛烈な
・・・思えば今から4年前、
私は、こので第二子を産んだ。
あの頃とスタッフも病院の様子も何の変哲も無い。
ただ、変わったのは私の方だけだった。
2階の手術室は、分娩室の隣にある。
その横手には、陣痛室・・・今の痛みより、ずっと痛かったはずなのに・・・
分娩台で、あともう少しだから、頑張れ~~ハイ、元気な男の子です。おめでとうございます
・・・スタッフみんなの祝福を受けた
分娩室を横手に見た瞬間
あの頃のことがとても懐かしく、私の脳裏に一瞬だけ思い浮かんだ。
・・・しかし今回、私が案内された部屋は、右手に分娩室をかすめた、手術部屋だった。
見ると、そこは、分娩室の革張りのシ-トとは違う、簡素な手術台。
下においてある器具と金ザルを見た瞬間・・・目を背けた自分がそこにいた。
看護師さんと二人、子供の野球チ-ムの話をしているうちに、しばらくして院長の姿・・・
点滴が麻酔に変わり・・・一緒に数えましょう・・・1、2、3、4、5・・・・・・・・
だんだんと意識が遠のき、視点が外れ、ふわ~と体が軽くなった自分がいた。
あ~いい心地、麻酔ってのは、こんなにパラダイスな気分になる媚薬だったんだ・・・
と、次の瞬間自分の体の中を、ドブネズミのようなものが素早く入ってきて、Uタ-ンしては出て行った。
ハイ、処置が終わりましたよ。・・・お願いです、どうか麻酔よ・・・このまま・・・
辛い事、苦しい事、何もかも全てが飛び・・・ふと我を忘れた時に起こった、わずか一瞬の隙の出来事だった。
麻酔が切れてしまうと、辛い過去と痛みに引き戻される現実のワタシが待っている。
もしや、失ったモノが、命が、ちゃんと宿った魂だったりしたら・・・
このまま、麻酔よ、もっとたくさん私の中に・・・この状態で自分が昇天できたら、どんなにか楽になるのだろう・・・
そんな気持ちになりそうな、いつにない自分に豹変する心境を想像する。
繁華街で、ちょっと世代の違う自分が、家出して不純異性交遊。
「アタシさ~、アイツの子、中絶しちゃった。今、バリ辛くて、痛くてさ~ヤク(麻薬)欲しいんだけど、ある」
そんなマフィアで、ヤンキ-な自分と紙一重・・・ただ子供がお腹の中で、生きてるか死んでるかだけの違い・・・
しかし、よく言えば、厳重な警備と、レ-スがかかった高級車に乗って・・当時、日本中が話題を呼んだ、アノお方と同じなんだよ、私・・
そういう今、話題の麻薬と麻酔も紙一重・・・人間って、本当は、ちっぽけな生き物なんだナ・・・・
私のそばに、そんな魔の手はありえないけれど・・・いつもの自分では信じられない魔の手も、ちょっとしたことで自分の手と摩り替わる・・・そんなことだって無いとは言い切れない・・・
今、私におかれた境遇だと、そんな状況もイ-ジ-に入り込んでくる・・・
それだけに今の自分が本当に辛くて、参っていて、弱くなっているんだぁ・・・
今もなお残る・・・心身の傷、そして痛み・・・
いつになったら本当の自分に蘇るのだろう・・・。
いつになったら、平然と他人に語れる過去の自分になっていくのだろう・・・。